★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

映画「Get Back」〜「One After 909」を掘り起こした!(353)

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 「Quarrymen Original」の意味

前回の記事で「Two Of Us」の手書きの歌詞の最後に「Quarrymen Original」と書いてあったのはどういう意味だろうと疑問を投げかけました。海外のビートルズのファングループでこれについて投稿したところ、ある人が「Two Of Usはジョンとポール、そして彼らの過去・人生・友情についての曲で、1969年には彼らがある種の終わりに近づいていたことは明らかだった。だから、ポールがこれをクオリーメンに捧げたのだろう。」という意見が返ってきました。

確かに、この曲は、実際にはポールとリンダのことについて書かれた曲ですが、最後の言葉を踏まえて見方を変えてみると、ポールがジョンに対して「クオリーメンの頃に帰ろう」と投げかけたメッセージとも取れます。そう考えると奥が深いですね。もっとも、本当のことはポールに聞かないと分かりません(^_^;)

それにしても、リンゼイ=ホッグがよくこんな小さな走り書きを見つけて、カメラマンにアップで撮らせましたね。やはり、プロは、目の付け所が違うんでしょうか。この何気ない走り書きに何らかの意味があると考えたのでしょう。

 

2 「One After 909」を掘り起こした!

(1)10代の頃に作った曲を探し

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ライヴをやるために新曲が必要だったのですが、作りかけの未完成の曲ばかりで曲数が足りないため、初期の頃の曲をもう一度掘り起こして演奏することも検討されました。ポールは、リンゼイ=ホッグに、学校をサボって自分の家でジョンと一緒に数多くの曲を作り、使えなくてボツにした曲が100曲くらいあると語っています。

彼らほどの天才でも、常に上手くいくとは限らないんですね。こういうところは、やっぱり、ビートルズも人間なんだなあと思いました。ジャクソン監督が「私は、彼らを人間として考えている」と語ったのはこういったところを指しているのかもしれません。

そこで、ポールがピアノを弾きながら「Just Fun」というその頃制作した曲を演奏し始めました。それにしても、10年以上も前の曲でボツにしたにもかかわらず、よく覚えていましたね(^_^;)普通だったらとっくに忘れてますよ。

しかし、当然のことながらボツにした曲ですから、やはり使えませんでした。ポールも苦笑いして「相変わらずダメだ」とあきらめました。それからも次々とその頃に作った曲を演奏していますが、どれも使えませんでした。

(2)「One After 909」は使える!

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One After 909を演奏するビートルズ(マルが何かを書き留めている)

あれもこれも試してみましたが、どれもボツにした曲ですから使えそうにありませんでした。そこで、彼らは、やっとルーフトップコンサートで演奏することになる「One After 909」にたどり着いたのです。ビートルズは、この曲を通して演奏しました。演奏し終わるとジョージが破顔一笑して「やろう」と言いました。メンバーも、やっとライヴで演奏できる曲を見つけてホッとしたようです。

ジョンは「15歳頃に書いたが、歌詞が気に入らなくて」と語りました。でも、ジョージは、いい歌詞だと言ってました。キャヴァーンクラブの下積み時代から演奏している曲ですが、元々ミドルテンポであった元の曲をアップテンポにアレンジし直してノリのいい仕上がりになりました。

 

(3)なぜオールディーズをセットリストに入れたのか?

私が長年疑問に思っていたのは、「なぜ、こんな10年も前のオールディーズをルーフトップで演奏したのか?」ということでした。「Get Back」を始め、この頃のビートルズらしい新曲がズラッと並んだセットリストの中でも異色の存在です。

今回の映画で、ビートルズは、ライヴをやるために新曲が必要だったが、本番までに間に合ったのは数曲しかなかったので、やむを得ず昔作った曲の中から使えそうなものを引っ張り出してきたという事情が映像で確認できました。

多くの音楽ファンが真相を目の当たりにして喜んでいると思うんですが、同時に「こんな貴重な映像があるんだったら、もっと早く公開してくれればよかったのに。」と思ったファンも多いでしょう。権利関係を巡って色々と複雑な事情があったのは理解できますが、それにしてもあまりにも時間がかかりすぎました。

50年以上経ってしまっているので、多くの人々がこの映像を目にすることなく天国に旅立ってしまったのです( ノД`)そのことを思うと、何だか切なくなりますね。逆に、私は、生きている間にこれを見ることができて幸運だと思います。

(4)吸いかけのタバコ

面白かったのは、ジョンがギター弦の余りの先に吸いかけのタバコをチョコっと刺したところです。昔のミュージシャンは、こんなことをやってたんですね。ギターを弾きながらでもタバコを吸いたいが、火のついたタバコをずっとくわえているとヴォーカルができませんし、煙が目にしみます。こうしておけば、いつでも吸いたいときに吸えるというわけです。

そういえば、ローリングストーンズのキース・リチャーズも吸いかけのタバコをギターのヘッドのところに刺したりしていました。時代が変わった今では、公共の場所でタバコを吸うこと自体が禁止されています。ですから、この映画の冒頭でもタバコを吸うシーンが登場するという注意書きが登場します。

 

3 再び「I’ve Got A Feeling」に取り掛かった

(1)ジョンがハモる

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ポールのヴォーカルにハモりを入れるジョン

ここでビートルズは、制作途中で終わっていた「I’ve Got A Feeling」の完成に向けて再び取り掛かりました。ポールがサビのところのヴォーカルがうまくいかないと言うと、ジョンがキーがBであることを確認した上で、ハモってみるかと提案します。するとポールは、下を歌ってみてくれと応えました。

ジョンがポールに合わせてハモろうと何回かトライしますが、僕には高いと話しました。実際、ジョンが苦しそうな表情でしたね(^_^;)もう18歳じゃないんだとも語りました。何度かトライしましたが、ダメだという感じでイスの背もたれにもたれかかって身体の力を抜きました。

(2)歌詞を変えた

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ビートルズにつきっきりだったマル

ここでポールが、歌詞の一部を手直しするという重大な決断を下しました。彼は、歌詞を手直ししようとしましたが、手元にペンがなかったので、ローディーのマルにペンを持ってくるよう頼みました。

彼は、このセッションの間中ずっとメンバーの側につきっきりで、レコーディングの間中ずっとペンとメモ用紙を持っていました。メンバーが何かアイデアを思いつくたびに、一生懸命言われたことをメモしていたのです。

マルは、ローディーとして楽器の運搬やセッティングなどを主にやっていましたが、こういった秘書的なこともやっていたんですね。地味ですが、とても大切な仕事です。ビートルズがいくらいいアイデアを思いついても、その場でそれを書き留めておかなければ消えてなくなってしまいますから。

現在のようにICレコーダーなど存在しない時代でしたからね。こういう何気ないけれども、貴重な映像を観られるのもこの映画の嬉しいところです。

(3)ジョンが歌詞を口述した

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マルがジョンに歌詞を口頭で伝えるように言うと、ジョンが「Everybody」と言いかけ、僕が書こうかと話しましたが、考えを変えて君が書けと命じました。その方が手っ取り早いと判断したのでしょう。

そして、彼は、虚空を見つめながら思いついた歌詞を口述してマルに筆記させます。まるでマントラを唱えるグルのように、次々と歌詞が彼の口からあふれ出てきます。ジョンのパートの歌詞がみるみるうちにできあがっていくのです!いや、もうこのシーンを見ているだけで鳥肌がたちます。

我々は、曲の完成形を知っているので、このシーンを観ても何ら違和感は感じません。しかし、考えてみると、この曲は本来、ポールがメインヴォーカルで、ジョンは、ヴォーカルではハーモニーを担当しているだけです。ですから、ジョンが歌詞を作るのはおかしいですよね。

ところが、ここではジョンが歌詞を作っているんです。しかもコード進行はポールのパートと同じですが、口ずさんでいるメロディーは全く違います。そして、出来上がってみたら、それを含めて一つの曲として完成しています。ポールと打ち合わせていたとはいえ、もはや神業ですね。

4 再び「Don’t Let Me Down」に取り組んだ

ここでビートルズは、再び「Don't Let Me Down」に取り掛かりました。このようにこのセッションでは、一つの曲を完成するまでやり切るのではなく、途中で何度も中断して色々な曲を並行して作っていました。彼らは、昔に比べると結束力が弱まっていたことが分かります。

ジョンは、「毎回、Don ' t Let Me Downをやるのはキツい」と思わずホンネを漏らしました。元々シャウトするのが得意だった彼ですが、「Twist & Shout」を歌った頃のように若くはありませんでしたから、リハーサルのたびに何度もシャウトするのはキツかったのでしょう。

ジョンに命じられて、マルがストップウォッチで曲の時間を測っていました。いやはや、ローディーも楽じゃありませんね(^_^;)

(続く)

 

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