★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズが制作したもののリリースしなかった楽曲(409)

1 If You've Got Trouble

(1)「Help!」に収録する予定だった

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今回は、ビートルズがレコーディングしたものの、出来が悪いと判断してアルバムに採用しなかった曲をご紹介します。「 ビートルズに捨て曲なし」…まるでことわざのようですが、これは公式213曲の中に駄作がないということを端的に表現した言葉です。しかし、正確に言うと「駄作は制作したが収録しなかった」ということです。

ビートルズがレコーディングした曲のほとんどが最終的に日の目を見ました。しかし、収録に値しないと捨てた曲もあったのです。彼らは、1965年2月18日にレコーディングした「If You've Got Trouble」が大嫌いで、アルバム「Help!」の最終ミックスから外し、代わりにリンゴがバック・オーウェンズの「Act Naturally」をカヴァーしました。この音源は、ジョージ・マーティンがEMIスタジオの保管庫で見つけ、最終的には「Anthology2」で日の目を見ることになりました。

(2)収録しなかった

「If You've Got Trouble」は、ビートルズのアイドル時代によくあった、リンゴをいじられキャラとして描いた作品です。ダイヤモンドの指輪、お金と物といったありきたりな歌詞が続き、インスピレーションに欠ける曲調など、2人のソングライターが同じ作業を繰り返したという不幸な特徴があります。

彼らほどの天才でも、どうやってもうまくいかない曲もあったんです。ただ、彼らのすごいところは、アルバムにふさわしくないと思った曲を収録しなかったことです。彼らは、レコーディングに間に合うギリギリのタイミングまで粘って、アルバムにふさわしい曲を収録しました。並みのミュージシャンなら出来が悪いと分かっていても、締め切りに間に合わせるために妥協していたでしょう。 

「今、改めてこの曲を聴いてみると、最高に奇妙な曲だね。レコーディングしたことも覚えていない。バカな歌詞で、最高に下らない曲だ。アルバムに収録されなかったのも不思議じゃないね。」(ジョージ・ハリスン/アンソロジー

ジョージがこの作品をこき下ろしてますね。確かに改めて聴いてみると、単調なフレーズの繰り返しで「これ、本当にレノン=マッカートニーが作ったの?」と思ってしまうほど平凡な曲です。この作品は、レノン=マッカートニーの他の2曲、「You've Got To Hide Your Love Away」と「Tell Me What You See」の間に1テイクで録音されました。確かに、この2曲と比べるとその完成度の差は歴然としています。

 

 

2 12-Bar Original

(1)珍しいインストゥルメンタル

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「Help!」では、「12-Bar Original」というタイトルのインストゥルメンタル曲もカットされました。R&B/ソウル・レコーディングの試みであるこの作品は、ビートルズが1962年にEMIと契約して以来、初めてレコーディングしたインストゥルメンタルです。ヴォーカルやコーラスを得意とする彼らには珍しい作品ですね。1965年にレコーディングされましたが、1996年に「Anthology2」に編集版が収録されるまでリリースされませんでした。ノーカット版は6分以上の長さがあります。

「12-Bar」とは「12小節」という意味で、ブルースでよく使われるコード進行です。ですからブルースのことを別名「12-Bar」と呼んだりします。これまた珍しくビートルズ全員による作曲で、一見即興のように見える作品ですが、「Rubber Soul」のセッションでレコーディングされました。アルバムに必要な14曲が揃わない場合に備えてレコーディングされた可能性があります。

ジョージ・マーティンハーモニウムというオルガンに似た楽器でレコーディングに参加した12小節のブルースで、ビートルズがブッカー・T&ザ・MG'sの1962年のヒット曲「Green Onions」をベースにしたブルースに挑戦した曲です。ちなみに「Green Onions」は、1962年にリリースされたR&B、ソウルの歴史的名曲です。

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(2)うまくいかなかった

しかし、この曲は盛り上がらず長時間に渡って退屈なままで、ビートルズのキャリアにおいて、リリースが真剣に検討されることはなかったようです。彼らは、レコーディングした曲は、一応どれもリリースすることを検討したようなのですが、この作品だけはそれすらしませんでした。よほど出来が悪いと思ったんでしょうね。どうも彼らは、インストゥルメンタルは得意ではなかったようです。

ビートルズは、ヤードバーズやアニマルズのような60年代半ばのグループにブルースやソウルが影響を与えていることに気づいていました。「プラスティック・ソウル」は、1965年6月の「I'm Down」のセッションでポールが何度も口にしたフレーズです。彼は、他のメンバーに、ブラック・ミュージシャンがミック・ジャガーを表現するために使った言葉だと説明しました。彼らは、当時、白人のミュージシャンがブルースを演奏すると「ブルースは、オレたちの音楽だ。白人の連中にブルースなんか演奏できるわけがない」と認めなかったのです。

 

 

(3)「Rubber Soul」のタイトル曲になったかもしれない

アルバム「Rubber Soul」がビートルズがそれまで持っていた音楽スタイルへの挑戦だとすれば、「12-Bar Original」は、それを実現しようとした試みの一つといえるでしょう。実際、ビートルズ解散後、このアルバムは、元々インストゥルメンタル曲のタイトル曲にすることを予定していたと噂されており、「12-Bar Original」がその曲だった可能性は十分にあります。

ジョンとリンゴは、この曲について公にコメントしたビートルです。ジョンは、アメリカのラジオのインタヴューで、ビートルズの未発表音源はないかと聞かれ、「お粗末な12小節」を思い出したと答えています。リンゴは、ジャーナリストに対し、「この曲はみんなで作ったもので、僕は、そのうちの一つのヴァージョンのアセテートを持っている」と語っています。

 

 

3 That Means a Lot

(1)ジョンもポールも気に入らなかった

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「That Means A Lot」は「Anthology 2」に収録されるまで未発表のままでした。この作品は、リード・ヴォーカルを務めるポールがメインで作曲しました。「Ticket To Ride」に似たドラムパターンと、テープエコーとヴィブラートを多用したアレンジで、ビートルズとしては初めての試みで、それまでレコーディングしたことのない音の壁のようなアレンジに仕上げました。

「この曲は、ポールと僕が映画のために書いたバラードなんだけど、どうしても歌えないことが分かった。だから、うまく歌える人に歌わせた方がいいと思ったんだ」(ジョン・レノン/ニュー・ミュージカル・エクスプレス誌、1965年)ジョンはこう語っていますが、出来が悪くてビートルズとしてはリリースできないので、他のミュージシャンにプレゼントしたんですね。

「That Means A Lot」は、1964年4月のTVスペシャル「アラウンド・ザ・ビートルズ」に参加してグループと親しくなったアメリカ人の歌手であるP.J.プロビーに提供されました。1965年9月にリリースされたプロビーのヴァージョンは、ビートルズのものよりややスローなテンポで、ジョージ・マーティンが作曲・指揮したストリングス・アレンジが施され、イギリスのシングル・チャートで30位を記録しています。まあ、そこそこ売れたということですね。下がプロビーによるカヴァーです。

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(2)ポールは出したくなかった

ポールは、こう語っています。「普通は、こういう曲はお蔵入りさせて出さないようにするんだけど、みんなからのプレッシャーがすごくて、『何かありませんか』って言われて、『あるけど、そんなもの見たくないだろ?』って言ったんだ。そうしたら、『見たいですよ!私を信じてください。私は、それをいい作品にできると思います。それにあなたの名前があれば、さらに良くなるでしょう』って言うんだ。」

「それで、ジャック・グッドのテレビ番組『アラウンド・ザ・ビートルズ』で知り合った友人のP.J.プロビーがやりたいって言うから、彼に渡したんだよ。彼は、この曲でマイナーヒットを飛ばした」(ポール・マッカートニー/「メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」バリー・マイルズ)そりゃ、誰だって失敗作だと分かっているものを世に出したくないですよ。

 

 

(3)レコーディング

ビートルズは、2回にわたって「That Means A Lot」のレコーディングに取り組みました。1回目は、1965年2月20日でレノン=マッカートニーの別の曲「If You've Got Trouble」を捨て曲にしたわずか2日後でした。

捨て曲をレコーディングした直後に、また別の捨て曲をレコーディングする羽目になるとは、彼らも予想しなかったでしょう。さすがのレノン=マッカートニーも、この頃は、アイドルからアーティストへの転換期で方向性が定まっておらず、ちょっとしたスランプに陥っていたのかもしれません。それでも、捨て曲でシングル向けの曲ではないにもかかわらず、30位にランクされたのはスゴいですね。

(参照文献)ファー・アウト、ザ・ビートルズ・バイブル

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