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「ロスト・ベース・プロジェクト」~ポールの盗まれたベースを取り戻せ!(465)

ポールの代名詞ともいえるヘフナー500/1ヴァイオリン・ベース

1 ベースが盗まれた

(1)ポールが愛用したベース

下積み時代から愛用していたヘフナー500/1

ポール・マッカートニーのオリジナル・ベース・ギターは、伝説のミュージシャンがザ・ビートルズの初期に使用していたもので、50年以上前に盗まれた後、発見され本人に返却されました。81歳のシンガーソングライターは、製造元とジャーナリストの夫婦チームが2018年に行方不明の楽器の捜索に乗り出し、後に「ロスト・ベース・プロジェクト」と呼ばれるクラウドソーシング・キャンペーンとなった後、左利き用のヘフナー500/1ヴァイオリン・ベースと再会したのです。

2024年2月15日にポールのウェブサイトで発表された声明では、ベースが発見され、元の持ち主に返されたことが確認されました。「昨年のロスト・ベース・プロジェクトの立ち上げに続き、1972年に盗まれたポールの1961年製のヘフナー500/1ヴァイオリン・ベースが返却された。このベースはヘフナーによって認証され、ポールの公式ウェブサイトで、「ポールは、関係者全員に大変感謝している」の声明が発表されました。AP通信によると、このギターは、1961年にポールが30ポンドで購入したもので、現在では1,260万ドルの価値があると推定されています。

(2)ポールがヘフナーを選んだ理由

このベースは、ビートルズがドイツのハンブルグのクラブで活動を始めた当初、ポールの主要な楽器でした。彼は、ビートルズの最初の2枚のアルバムでこの楽器を演奏し、「Love Me Do」「Twist and Shout」「She Loves You」といったヒット曲で使用していました。

「僕は左利きだったから、左右対称で、あまりダサく見えなかったんだ」とポールは、かつて語っていました。*1「私は、それに夢中になった。買ってから、そのベースに惚れ込んでしまったんだ」他のベースに比べて安く、軽くて使いやすいこともこれを選択した理由です。多くのギターやベースは右利き用に作られているので、左利きのギタリストやベーシストは苦労します。特にベースは、ギターに比べて種類が少ないので大変です。

 

 

2 ロスト・ベース・プロジェクトが始動

(1)ポールから直接依頼されたスコット・ジョーンズ

「Let It Be」セッションでヘフナーを使うポール

このギターは当初、1969年のバンドの最後のアルバム「Let It Be」のレコーディング・セッション中に盗まれたと考えられていました。ポールは、ビートルマニアを宇宙全体に広めるきっかけとなったこのベースを探し出すのを支援してくれとヘフナー社に依頼しました。

同社の重役であるニック・ワスと組んでこの楽器を探し出したジャーナリスト、スコット・ジョーンズはこう語りました。「ポールは、僕に言ったんだ。『君は、ヘフナーの出身なんだから、僕のベースを探すのを手伝ってくれないか?』そして、それがこの素晴らしい捜索のきっかけとなった。その場に座り、ポールにとって失われたベースが何を意味するのかを目の当たりにし、私は、その謎を解き明かそうと決心した」

(2)メディアの注目を集めて急展開した

ジョーンズは、持ち主のポールから直接依頼され、俄然やる気になったんでしょうね。確かに、半世紀も前に盗まれた楽器、それもポールが使用していたベースを見つけるなんて「ミッション・インポッシブル」的な大変に困難な課題ではありますが、救いなのは絶対どこかにあるはずだということです。楽器ですから盗んだ人間が廃棄してしまうとは考えにくいんですよ。必ずどこかに保管してあるはずなんです。もっとも、存在していてもそこにたどり着くまでが大変なんですが。

「ロスト・ベース・プロジェクト」は当初2018年に発足しましたが、その後の調査は行き詰まりました。しかし、2022年、ジョーンズと妻のナオミはワスとチームを組み、この捜索がメディアの注目を集めて一般の人々の協力を得られるようにしたのです。地味な創作活動から派手な作戦に変更したことが彼らを成功に導きました。

 

 

3 有力な情報がもたらされた

(1)ベースを管理していた二人の男

1972年当時のポール

2023年秋にこのプロジェクトが再始動した後、グループには48時間以内に600通のメールが届き、その中には「私たちを今日に導いた小さな宝石」が含まれていたと、ジョーンズはAP通信に語りました。ビートルズ解散後ポールが率いていたバンドのウイングスで仕事をしていたサウンド・エンジニアのイアン・ホーンは、ロスト・ベース・プロジェクトに連絡し、ベースが1972年10月にロンドンのノッティング・ヒル地区で彼のバンの荷台から盗まれたことを明らかにしました。

「盗まれたのがポールのオリジナルのヘフナー・ベースであることは知っていたし、それが彼にとって何を意味するのかも知っていた」と、ホーンはメールに書いています。ポールがメジャーデビューする前からずっと愛用していた思い出深いベースですからね。それがいかに貴重なものであるかは、ホーンももちろんわかっていました。

(2)ポールは許してくれた

ポールは、ビートルズの初期のレコーディングでヘフナー・ベースを弾いていました。それを運搬していた車から盗まれたんですね。「トレヴァー(当時、ポールのもう一人のサウンド・エンジニアだったジョーンズ)と私は、それを見つけるために全力を尽くしたが見つからなかった。結局、私たちは、キャベンディッシュ・アヴェニューにあるポールの家に行って、トラックの荷台から機材が盗まれたことを伝えなければならなかった。部屋に入ってポールにそのことを伝えた。彼は心配するなと言ってくれて、私たちは仕事を続けられた。彼はいい人だよ。ベースがなくなってから6年間、彼の下で働いた。でも、その間、ずっと罪悪感を背負ってきたんだ」

その時の二人の心境は、正に地獄に突き落とされたようなものだったでしょう。もっと厳重に管理しておくべきだったと後悔してもしき切れなかったと思います。でも、ポールは、そんな彼らを決して責めず、解雇もしませんでした。彼らしい優しさですね。しかし、もちろん、ポールは、口にこそ出さなかったものの、最愛の息子を失ったような気持だったでしょう。

 

 

4 保管していた人物の家族から連絡が来た

(1)ポールのベースと知らずに盗んだ

ロスト・ベース・プロジェクトが、ウェブサイトで捜索の最新情報を公開したところ、父親がベースを盗んだと明かす個人からメールを受け取りました。その男は、最初からポールの楽器を盗もうとしたわけではなく、盗んだ後で自分が持っているものに気づいてパニックになったとジョーンズは語っています。その人物は、誰のものかも知らずに盗み、後にポールのものだと知って真っ青になったのです。

名前は明かされませんでしたが、その男はその後、アドミラル・ブレイク・パブの家主であるロン・ゲストに、数ポンドとビール数本と引き換えにベースを売りました。こんなものをいつまでも持っていたら大変なことになるから、早いうちに誰かに引き渡そうと考えたのかもしれません。

(2)家族から連絡が来た

ヘフナーを手にするキャシー・ゲストの息子のルアイドリ・ゲスト

ゲストの家族はこの捜索を知り、義理の娘のキャシー・ゲストがポールのスタジオに連絡したのです。彼女によると、何年も屋根裏部屋に保管されていた楽器が、ポールの失われたベースに似ているとのことです。

ポールのベースは、ロン・ゲストから交通事故で亡くなった長男、そしてキャシーと結婚して2020年に亡くなった次男のハイドン・ゲストに渡っていました。そして、2023年12月にポールに返却され、約2か月後に鑑定されて本物であることが確定しました。コレクターの手に渡っていなかったことが幸運でしたね。もし、そうなっていたらその人物が手放すか、死にでもしない限り世に出てくることはありませんから。

 

 

5 本来あるべき場所に帰ってきた

Paul McCartney Reunited With His Stolen Bass Guitar 50 Years Later

この楽器の推定価値は、カート・コバーンが「MTVアンプラグド」で弾いたギブソンアコースティック・ギターが600万ドルで落札された事実に基づいているとジョーンズは語っています。しかし、過去半世紀の間、その価値はほとんどありませんでした。存在しないものに価値はつけようがありませんから。

「盗んだ男は、売ることができなかった。明らかに、ゲスト一家は売ろうとしなかった。名乗り出た途端、誰かが『ポール・マッカートニーのギターだ』と言い出すだろうから。それはとても危険な行為だ」家族も大規模な捜索が公開されたのをきっかけに、ようやく申し出る気持ちになったのでしょう。

「それはおそらく、史上最も象徴的な失われた楽器である。今、それはずっと前にそれを買った男の元に戻ってきた」ロスト・ベース・プロジェクトはこう綴っています。「もう二度と見ることはできないと思っていた。しかし、私たちは手に入れたのだ!」と彼らは付け加えました。

ワスはロイターに対し、ベースはネックにひび割れがあり、ブリッジが破損していて交換が必要でピックアップはもう動作しないと語りました。「しかし、それらを整理し、ネックを修理し、再び演奏できるようにすることは可能だ」と彼は語りました。ちゃんと修理すればまた弾けるということですね。

何はともあれ、「Get Back」の歌詞の一節のように、それが本来あった場所に帰って本当に良かったと思います。修理が終わればポールは、次のツアーからそれを使うかもしれません。

(参照文献)フォックス・ニュース、ザ・グローブ・アンド・メール

(続く)

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