★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その123)ビートルズのDNA、チャック・ベリーについて(その2)

(その114)でチャック・ベリーについて記事を書いてから、ポールの来日公演に合わせて特集記事を組んだので、随分と間が空いてしまいすいません(^_^;)もう一度、チャックのお話に戻ります。(その114)と合わせて読んで下さい。「chuck berry」の画像検索結果

1 ビートルズによるカヴァー

ビートルズは、メジャー・デビューする前の下積み時代から、チャック・ベリーの「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」「ロック・アンド・ロールミュージック」をカヴァーし、それ以外にも多くの作品をライヴ・レパートリーにしていました。公式にリリースされた213曲の中には2曲だけが入っていますが、BBCのラジオ放送などでは他の曲もカヴァーしています。

 

2 ロール・オーヴァー・ベートーヴェン

(1)ベートーベンをぶっ飛ばせ?

ビートルズは、当初ジョン・レノンのリード・ヴォーカルでこの曲をカヴァーしましたが、後にジョージ・ハリスンと交代しました。

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なお、日本語のタイトルでは「ベートーベンをぶっ飛ばせ」となっていますが、これは誤解を招く意訳です。って私も誤解してたんですが(^_^;)もしこの通りだとしたら、ちょっと失礼ですよね。ベートーヴェンのファンのみならずクラシックファン全体を敵に回してしまったかもれません。

(2)寝返りを打つという意味

「ロール・オーヴァー」というのは、「寝返りを打つ」という意味で、「ぶっ飛ばす」という意味はありません。つまり、チャックは、「ベートーベンをぶっ飛ばせ」などと歌っているわけではなく、「寝返りを打って(聴きなよ)、ベートーヴェン、(これがロックンロールだぜ!)」という風に、墓の中で眠っているベートーヴェンに対し、これが今流行しているロックンロールだよと教えている感じです。

動画サイトを検索すると、テレビ番組でチャックがライヴ演奏するシーンが見つかります。彼が演奏を始める前に、roll over and lithenと話しながら、右手をひっくり返すような仕草をしているのが分かると思います。これはヴェートーベンに対し、寝返りを打って聴きなよと言っていることを示しています。「ベートーヴェンさんに失礼なことを歌っちゃって、謝罪したいと思います。」と謝っているところが可愛いですね(笑)

 

つまり、ベートーヴェンに呼び掛けているんです。それは、続くTell Tchaikovsky the newsという歌詞を見ても分かります。「今はロックンロールが流行りだぜ、そのことをチャイコフスキーにも教えてやりなよ」と言っているわけです。

他の歌詞の中にもroll it overというのが出てきますが、ここではロックンロールで回って踊れという意味ですから、「ぶっ飛ばす」という意味では使われていません。そういえば、ビートルズのジャケット写真もベートーヴェンが寝返りを打っているようにみえます。

「beatles roll over beethoven」の画像検索結果

ただ、意訳し過ぎと決めつけるのもちょっとためらわれますね(^_^;)というのもほかに適当な表現が見当たらないからです。また、原題のままだと意味が分かりませんし、これはこれで良かったのかもしれません。

3 ロック・アンド・ロール・ミュージック

(1)チャックのオリジナル

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オリジナルを聴くとゆったりしたテンポなので、あれ?こんなんだったんだと違和感を覚えてしまいますね。それ程ビートルズ・ヴァージョンを聴きなれてしまっているせいでしょう。

(2)ビートルズによるアレンジ

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オリジナルは、ゆったりとしたスイングビートですが、ビートルズは、アップテンポなアレンジに変えて、よりインパクトの強い作品に仕上げました。これまた本家を食ってしまっていますね(^_^;)

また、ビートルズは、テンポアップしただけではなく、オリジナルのややフラットな感じのするキーであるEをジョンの出せる限界のAまで上げたのです。高いキーで歌い続けたため、流石のジョンもラストはヴォーカルに疲れが見え始め、トーンが下がり気味でしたが、何とか最後まで歌い切りました。ジョン、頑張れ〜って声援を送りたくなりますね(笑)

 

この曲は、歌詞が緊張感を保ったまま次から次へと畳み掛けられて行くので、ソロを入れる必要がありませんでした。また、イントロも極端に短く、ギターでチャチャチャチャとリズムを取って、さあ、これから演奏を始めるよというキューを出したような感じです。

(3)ピアノを弾いているのは誰だ?

演奏にはピアノが入っていますが、このピアノを誰が弾いているのかについてはちょっとした論争があります。この曲が収録されたアルバム「ビートルズ・フォー・セール」のライナーノーツを書いたデレク・テイラーは、ジョンとポールとマーティンの3人が同時にピアノを演奏したとしています。ただ、流石にこれはちょっと無理があるのではないかと指摘されています。

ビートルズ研究家のマーク・ルーイスンは、プロデューサーのジョージ・マーティンとしています。従来はこれが通説とされていました。確かに、彼はピアノがかなり上手いですから、自然な考えではあるんですけどね。

というのも、前期の頃のポールは、ライヴはもちろん、レコーディングでもベースに専念していたので、ピアノを演奏する場合は、名手のマーティンが弾くことが殆どだったからです。マネーなんかが典型的ですね。

それに前期はオーヴァーダブをやらずに、演奏をそのままレコーディングすることが殆どでしたから、なおさら自分がいつも担当する楽器以外の楽器を演奏することはなかったんです。

 

しかし、レコーディング・エンジニアのジェフ・エメリックは、ポールがピアノに移動して演奏したと証言しています。現場にいた彼の証言が最も信ぴょう性があるのではないかと思います。

この「ポール=ピアノ説」には、他にも裏付けがあります。ベースラインがシンプルなんですよ。ポールだったら、もっとメロディアスなベースラインにしたはずです。

どうやら、ポールがピアノを弾いている間、ベースはジョージが弾いたようです。エメリックは、彼がポールのヘフナーをそのまま使ったと証言しています。しかし、ポールのヘフナーは左利き用で弦が上下逆になってますから、ジョージも弾きづらかったため、シンプルなベースラインにしたんじゃないでしょうか?

ポールのピアノも素晴らしいです。グリッサンドや早い三連符など相当弾き込んでいるなと感じさせます。キャヴァーン・クラブ時代にも良くピアノを弾いていたので、その経験が生かされたのでしょう。鍵盤を思いっきり叩きつけるような激しい弾き方でも全く乱れていません。

ただ、どうも、最後のサビの辺りで弾きそびれたのではないかと思えるんです。ピアノのサウンドがフッと消えているんですよ。全編を通じてピアノが演奏されているのに、ここだけないのは不自然なので、恐らくミスではないかと思います。名手のマーティンならこんなミスはやらなかったでしょうから、これもポールがピアノを弾いたという説の裏付けになると思います。

ジョージがベースを担当したため、いつもなら2本のギターもジョンだけになっています。これもポールがピアノを弾いた裏付けになりますね。そして、この曲も「一発撮り」でレコーディングされました。

ジョンのリズムギターが秀逸ですね。イントロがE7で、1弦のEを開放弦にして2弦は5フレットのE、3弦は7フレットのDを弾いています。EとDだけのコードです。この曲のグルーヴ感を良く引き出しています。彼は、リズムギタリストであることを誇りに思っていると常々語っていましたが、これもその自信作の一つでしょう。

不思議なのは、なぜこの時もそれまでと同じスタイルでやらなかったのかなということです。ポールがピアノを弾けば、必然的にベースが不在になりますから、ジョンかジョージが弾かないといけない。ジョンはリードヴォーカルだし、ベースは不慣れなのでジョージがやるということになり、その結果リードギターはなしということになります。

確かに、イントロも短いし、ギターソロもないので、リードギターがなくても良いとはいえますが、ちょっと物足りないんですよね。アレンジも演奏も素晴らしいんですが、何となく物足りなさを感じるのは気のせいでしょうか?

FAB4+マーティンで良かったんじゃないかと思うんですが、なぜそうしなかったのかは分かりません。この時は、国内ツアーの合間にレコーディングした上、締め切りが迫っていて時間に追われていたという事情がありました。マーティンがやるとなると真面目な性格なので、スコアを書いたりして時間が掛かると思い、ポールが急いで即興でやったのかもしれませんが、その辺りは想像するしかありません。

っていうか、みんながああだこうだ議論するより、ポールが一言「私が弾いた」って言えば済むじゃないですか!ねえ、ポール、何で黙ってるの?

(参照文献)THE BEATLES MUSIC HISTORYTHE BEATLES RECORDING SESSIONS、真実のビートルズ・サウンド「完全版」

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