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★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その33)6番目のシングル「キャント・バイ・ミー・ラヴ」の制作

ビートルズ ポップス 洋楽

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アメリカで大成功を収めてイギリスへと凱旋した彼らでしたが、早速、新しい楽曲の制作とレコーディングが待ち受けていました。しかも、初の主演映画「A Hard Days Night(ア・ハード・デイズ・ナイト)」の制作も控えていたのです。この映画についてはまた改めて書きますが、その公開に合わせてサウンドトラック盤もリリースすることになっていました。しかも、その収録曲は全曲オリジナルですから、当然、ビートルズ自身が作り、レコーディングもしないといけません。しかも、寝る暇も無いほどの忙しさを縫って。しかし、天才の彼らにそんなものは障碍でもなんでもありませんでした。

 
 
少し時間を遡りますが、ビートルズは、渡米する直前の1964年1月29日に6番目のシングルとなる「Can't Buy Me Love (キャント・バイ・ミー・ラヴ)」の制作に取り掛かりました。この曲は、ビートルズがパリのオリンピア劇場で19日間公演している間に作られました。ポールは、こう語っています。「個人的に思うのは、この歌詞は、どんな風にでも解釈できるということだよ。でもさ、誰かがこれは売春婦を描いた曲だなんて言ってるけど、そりゃいくら何でも極論だよ。」
 
 
ビートルズは、パリのジョルジュ・サンク・ホテルのスイート・ルームの片隅にアップライト・ピアノを持ち込んで、近づきつつある彼らの初主演映画の公開に向けて、この曲を書いたとされています。この曲は、ポールによって書かれましたが、グループとしては初めてヴォーカルが一人だけの曲となりました。
 
 
ジョンは、この曲でポールの才能に脅威を感じ、彼のビートルズのリーダーとしての地位が脅かされると思ったのか、この曲がシングルとしてリリースされた後、彼は、アルバム収録曲の13曲中10曲を書きました。ジョンとポールは、メンバーでもあり、良きライヴァルでもあったのです。
 
 
ところで、この曲のタイトルと歌詞についてはちょっとした論争があるんです。タイトルを日本語に文字通り翻訳すると、「君は、僕に愛を買うことはできない=お金で僕の愛を買うことなんてできない」となりますよね?(主語のYouは省略してるとして)「キャント・バイ・『ミー』・ラヴ」ですから。
 
 
でも、そうすると歌詞と何だかチグハグな感じになるんです。歌詞の大まかな意味は、「君が喜ぶなら、ダイヤモンドの指輪でも何でも買ってあげる。でも、愛はお金じゃ買えない。お金で買えない物が欲しいって言ってくれ。君がそう言ってくれたら僕は満足さ。」っていう感じです。
 
 
つまり、これは愛する彼女に対し、金では買えない物を自分に求めて欲しいと訴えているわけです。この二つを比べてみて、あれ、何か変だなって思いません?タイトルは、僕は、君にいくらお金を積まれてもそれにつられて付き合うような軽い男じゃないよ、というような意味です。
 
 
タイトルが僕の愛はお金では買えない、と言いつつ歌詞では僕は君の愛をお金で買おうとは思わないと言ってるんです。前者はいわば自分が愛を求められる側の立場、後者は愛を求める側の立場で語っていて、まるっきり入れ替わっています。
 
 
で、この矛盾(?)を解き明かす説として、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」は、本当は「キャント・バイ・『マイ』・ラヴ」のことなんだという解釈があります。なぜ、こう解釈するかというと、ビートルズリヴァプール出身で、ヴォーカルにスカウス(リヴァプール訛り)が入っていることは良く知られているんですが、リヴァプールでは「my」を「me」と発音します。確かに、彼らのスカウスは、ヴォーカル中にも所々現れていたことは事実です。
 
 
そして、スカウスで「my」を「me」と発音するのも事実です。例えば、共通語で「It is my book」と発音すべきところをスカウスでは「It is me book」と発音します。ただし、「自分の」ということを強調する場合は、スカウスでもちゃんと「my」と発音します。
 
 
しかし、とっくにリヴァプールを卒業し、全米も制覇して世界でトップの地位に上り詰めたバンドが、いまさら正式なタイトルに方言をまんま使いますかね?それに発音だけなら聴き逃すかもしれませんが、スペルだったらモロに分かっちゃうじゃないですか?それに歌詞の中には他にも「my」を使っている箇所があり、そこはちゃんと表記してますから、どう考えてもこの解釈には無理があると思います。高名なビートルズ評論家の中にもこの説を唱える方がおられるんですが、ちょっと疑問です。
 
 
それに、そもそもイギリス人の英語とアメリカ人の英語とでは、発音が違うところが色々あります。例えば、「can't 」をイギリス人は「カーント」と発音しますが、アメリカ人は「キャント」と発音します。ですから、もし、ビートルズが相変わらずリヴァプール訛りでこの曲を歌ったとしたら、「カーント」バイ・ミー・ラヴという風に発音したはずです。でも、ポールは、「キャント」とはっきり発音しています。
 
 
ロックは、元々アメリカ発祥の音楽ですから、アメリカ風に発音したほうがノリがいいし、歌い易い訳です。ですから、ビートルズがデビューする前も、たくさんのイギリスのバンドがアメリカのロックをコピーしていましたが、その時の発音は、できるだけアメリカ英語でやるようにするのが暗黙の了解でした。彼らが影響を受けたエルヴィス・プレスリーチャック・ベリーもアメリカ人ですから。やっぱり、ロックはアメリカ英語じゃなきゃ、イギリス英語ではしっくりこないんですよ。ここから考えても、ビートルズがイギリス英語、ましてやスカウスを使っていたとは考えにくいです。
 
 
じゃあ、ビートルズのヴォーカルに全くスカウスが無かったかというとそんなことは無くて、前期の曲の中に所々に出てきます。例えば、アルバム「A Hard Days Night」中の「If I Fell」というジョンがリード・ヴォーカルを取っている曲があります。この曲の中でジョンは、「before」を「ビフォ(正しくはビフォア)」、「more」を「モ(正しくはモア)」と発音しています。これは、メロディーとの関係で敢えてそう発音したというよりは、思わず出ちゃったんでしょうね(笑)同じ「before」の発音でも、ポールは、映画「Help」中の「The Night Before」でリード・ヴォーカルをやってますが、正しく「ビフォア」と発音しています。
 
 
地元の人に言わせると、ビートルズの中ではジョンが典型的なスカウス使いで、その次がジョージだそうです。でも、ジョージの方が訛りが強いという人もいます。私もそう思います。彼のインタビューを聞いてると、かなり鼻にかかったような独特の発音ですね。それから、リンゴもスカウスが強いと。これも反対の意見の人もありますけど。ただ、ポールは、元々あまりスカウスが無かったという点では皆一致しています。子どもの頃から母親に言葉使いをうるさく注意されていましたから。
 
 
ディープなスカウスは、英語圏の人でもなかなか聞き取れませんf^_^;日本の方言だと、青森弁とか鹿児島弁ぐらい、ネイティヴが話すとかなりディープです。ビートルズがデビューした頃、多くの大人が彼らのスカウスが聞き取れないと言っていました。確かに、インタビューではスカウスが出てきてますが、曲の中ではそれほど目立つとは思えないんですがね。彼らは、あくまでアメリカのロックをお手本にしてましたから。まあ、彼らのおかげでスカウスが世界的に有名になったことは間違いありません。
 
 
あ、そうそう、典型的なスカウスを聴きたければ、アルバム「Abbey Road」の中の「Polythene Pam」を聴いてください。これはジョンがワザとスカウスを使って歌っています。例えば、「girl」と言う単語は、「ガール」ではなく「ゲアル」と発音しています。それから、アルバム「Let It Be」中の「Maggie Mae」もスカウスで歌っています。これはリヴァプールの船員の間で古くから歌われていた曲だとか。今でもリヴァプールの若い人は、普通にスカウスで話すらしいですね。
 
 
また話が脱線しました(^_^;)こんな風に歌詞の解釈が分かれるややこしいことになっちゃってますが、それでも「愛はお金じゃ買えないんだ」って重要なメッセージがちゃんと伝わってるんですから、それでいいでしょう。ポール自身もどんな風にでも解釈できると言ってますし。
 
  
ジョンは、こう語っています。「この曲は、完全にポールの作品だ。僕は、多分、コーラス位はやったかもしれないけど、覚えてないんだ。僕は、ずっと彼の曲だと思ってるよ。」この曲は、映画の中で2回挿入されています。最初は、彼らがマネージャーの監視の目を逃れて、テレビ・スタジオから飛び出して広場ではしゃぎ回る場面と、もう一つは、激しく彼らを追跡する警官から逃げる場面です。
 
 
プロデューサーのジョージ・マーティンはこう語っています。「これは、僕が音楽を書いた最初の映画だった。僕がミュージシャンでしかもディレクターであったことが有利に働いたね。我々は、いつも曲を収録する時と同じように映画の中の曲を収録した。そして、レスター監督は、我々がすでに収録した多くの曲を使った。例えば、『キャント・バイ・ミー・ラヴ』は2回使われたよ。」映画ではジョン、ポール、ジョージの3人が思いっきり飛び跳ねてるのに、リンゴだけがちょこんと飛んでるのがユーモラスですね(笑)

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このビートルズが楽しそうに飛び跳ねているシーンは、今でも彼らのトリビュートバンドの宣伝用のスチールに盛んに使われています。
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これはロンドンで偶々見つけた看板です。やはり、この映画の一シーンが使われてますね。こういうトリビュートバンドって沢山あるんですが、日本にも良く来てますし、私も何度か観に行きました。まあ、顔から声から良く似てますね〜f^_^;
 
 
ポールが右利きなのが、ちょっと気になりますが(笑)でも、私はまだ観たことがないんですが、フェイスブックのグループに所属するビートルズ・ファンの方に聞くと、ちゃんと左利きのポールも結構いるんだそうです。しかも、元々右利きなのに、わざわざ左手にベースを持ち替えて演奏してるんですと。いやはや、プロとは大したもんです。初期の頃から解散に至る寸前まで、衣装を変えながら辿っていくんです。ジョンがちょっとガニ股で、右肘を張ってギターを抱えて、アゴを少し上げ気味に歌っている姿なんか良くマネてますね。もちろん、歌も良くマネてます。
 
 
この頃から「ヘルプ」辺りまでのビートルのメンバーは、本当に仲が良くて楽しそうですね。これがずっといつまでも続けばよかったんですが、残念ながらその時期はそんなに長くは続きませんでした。やがて、彼らはそれぞれの道を歩み始めます。
(参照文献)
THE BEATLES BIBLE, CDANDLP.COM, PHOTOBUCKET, feelnumb, George Harrison Tribute, Moïcani - L'Odéonie, The Beatles
(続く)