★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(211)リメークされる映画「LET IT BE」は、今までのイメージを一新するかもしれない

Beatles

1 リミックスをあなどってはいけない!

(1)オリジナルとは異なる作品になるだろう

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前回の記事で映画「LET IT BE」が、新たに編集されて公開されるというプロジェクトが開始されたとご紹介しました。

もちろん、映画の詳しい内容は現時点では分かりません。しかし、今回メガホンを取るピーター・ジャクソン監督の言葉や、彼のこれまでの実績から浮かび上がるものは、この新しいドキュメンタリー映画が、「解散前のバラバラになったビートルズを描いた暗い作品」といった、これまでのネガティヴなイメージを一新するものになるかもしれないというお話です。

(2)リミックスによる革命

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ビートルズは、かつて1960年代の反体制的な文化の旗頭となっていましたが、それらは、21世紀に入るとリミックスという形式で、再び脚光を浴びることになりました。リミックスとは「複数のトラックに録音されたオリジナルの楽曲の音源を素材にして再構成したり、様々な加工を加えたりすることによって、その楽曲の新たなヴァージョンを制作すること」と定義されています。

デジタル技術を駆使したリミックスにより、オリジナルが生まれ変わり、新たな魅力を見つけることができるようになりました。そして、そのテクニックは、その後何度も繰り返されることになったのです。

もちろん、コマーシャルベースが根底にあることは否定できません。しかし、たとえそうであったとしても、それまで耳に馴染んできたオリジナルとはまた異なるサウンドを味わえる喜びに変わりはありません。

考えてみてみれば、初期のビートルズも盛んに他のアーティストの楽曲をカヴァーしていましたが、それはある意味、手作業によるアナログのリミックスだったともいえます。彼らは、目立たないオリジナルの楽曲を見つけ、彼ら独特の天才的な感性でそれらを宝石に変えていったのです。

 

2 解散後のアルバム

(1)コンピレーションアルバム

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アップルは、解散後の1970年代初頭からコンピレーションアルバムをリリースし始めました。1973年にリリースされたいわゆる「赤盤」「青盤」がその皮切りです。これらがもたらしたインパクトは大きく、ビートルズの現役時代を知らない世代をも虜にしました。

その後も定期的にコンピレーションアルバムをリリースして世界の音楽シーンを賑わせ、それは、1990年代半ばのアンソロジープロジェクトで絶頂期を迎えました。アップルの商魂逞しさも大したものですが、ビートルズというコンテンツがいかに優れたものであるかがよくわかります。

(2)リミックスの進歩

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21世紀に入るとリミックスは、デジタル技術の進歩により新たなページをめくることになりました。ビートルズに関していえば、その先導役となったのは、メガベストセラーとなったコンピレーションアルバム「ビートルズ1」(2000)と「Let It Be ... Naked」(2003)です。

ジャイルズ・マーティンは、卓越したプロデュース能力により「Love」(2006)でビートルズサウンドのクオリティーはいの高さを新たに引き出しました。彼は、輝かしくかつ革新的な技術で、オリジナルのサウンドをさらに創造力の高いものに変えたのです。

3 ドキュメンタリーの難しさ

(1)歴史を再構築する難しさ

しかし、近年になると、ビートルズのアルバムのリリースには大変な手間がかかり、同じ作業を何度も繰り返さないといけないという壁にぶつかりました。歴史を再構築することは、とてつもない苦労の連続だったのです。

それはあたかも、何重にも絡まったコードを解きほぐして、正しく機器類に接続し直すような根気のいる仕事です。オリジナルを新たに作るわけにはいかないので、とても面倒な作業であろうことは想像がつきます。

(2)ロン・ハワードの成功

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ロン・ハワード監督のドキュメンタリー映画「Eight Days a Week」(2016)を例にとってみましょう。ビートルズが全盛期にライヴで演奏するのを観るのは楽しい経験でした。

しかし、ポールは回想で、映画の中でキャンドルスティックパークへ囚人の護送車のような車で連れて行かれる間に、メンバー同士でもうツアーはやめようと話し合ったことを語っていました。そしてライヴを中止した頃から、メンバーは、次第に距離を開けるようになっていったのです。

古い映像や音源は、最新の技術でリマスターされ、まるで目の前にビートルズがいるかのような新鮮な感覚が味わえました。何万人ものファンの絶叫でかき消されていたサウンドもクリアに引き出されました。

ロン・ハワードは、過去の映像に加えて、現在の関係者のインタヴューなどを織り交ぜ、見事にドキュメンタリー映画を完成させました。

(3)ホワイト・アルバムもリミックスでイメージが変わった

2018年にやはり、ジャイルズによって「ホワイト・アルバム」が広範囲にわたってリミックスされリリースされました。その結果、その当時のビートルズの関係は、ジョージがかつてビートルズの「不満の冬」と表現していた期間中でも、何もかもが悪かったわけではないことを示唆していました。

少なくとも「イーシャー・デモ」を制作した時は、とても和やかな雰囲気だったということが分かりました。それは、ファンにとっても新鮮な発見でした。

 

4 ジャクソンの手腕に期待が高まる

(1)「Get Back」は最悪の時期に制作された

But when John Lennon married Yoko Ono in 1969, the couple took a different approach â deciding to use the publicity around their marriage to promote world peace. Taking a cue from the sit ins, they arranged for two "Bed-Ins for Peace". After their first Bed-in in Amsterdam, John and Yoko wanted to move to New York, but because of John's 1968 marijuana conviction, they moved to Montreal instead, where they spent a week in bed under signs that said "Hair Peace" and "Bed Peace".

1969年1月の「Get Back」プロジェクトで数多く収録された映像と音源により作成された、オリジナルの映画「Let It Be」では彼らの確執が浮き彫りにされていました。メンバーの記憶を含むほぼすべての関係者の証言により、グループが解散の危機に瀕していたことがうかがえます。

当時、ジョンとヨーコは、重度のヘロイン中毒に苦しんでいました。また、プロデューサーのジョージ・マーティンは、ほとんど傍観者としてしか関わっていませんでした。そして、さらに悪いことに、1月10日にはポールとの口論をキッカケにジョージがビートルズを一時的に脱退し、それをなだめなけれはプロジェクトが完成しないという問題も起こりました。

他にもビジネス上の問題でポールと他の3人が対立するなど、ありとあらゆるトラブルの渦中に彼らはいたのです。

(2)ジャクソンには実績がある

ジャクソンは、「Let It Be」を新たに生まれ変わらせる構想を練っています。しかし、いかに未発表の映像や音源が豊富にあるとはいえ、新たに撮影することは不可能なだけに制約は大きいものがあります。過去の歴史を題材にしたドキュメンタリーの難しさですよね。

ただ、朗報があります。ジャクソンは、第一次世界大戦を題材として制作したドキュメンタリー「They Shall Not Grow Old」(2018年)を発表しましたが、これは、戦争当時の模様を撮影した記録映像を巧みに修復し再生させたもので批評家から高く評価され、BAFTA最優秀ドキュメンタリー賞にノミネートされました。

これは、その予告編映像です。100年以上も前の出来事が、まるで昨日のことのように鮮明に映し出されています。

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ですから、彼のドキュメンタリー監督としてのスキルは、確かなものがあると考えて間違いありません。

ビートルズの場合、現存する約55時間の映像と140時間もの音源は彼にとって強力な武器となるでしょう。これらの素材は、彼に新たな啓示を与えてくれるかもしれません。楽観的な見方かもしれませんが、そう遠くない時期に「Let It Be」の新しいヴァージョンが公開されるでしょう。

 

(3)見方が180度変わるかもしれない

John and Paul during the filming of The Beatles' Final Film: 'Let It Be', 1969

ジャクソンは、この作品の制作にあたり、こう語っています。「私は、現実が神話とは非常に異なることを発見して安心した。解散する18か月前にマイケル・リンゼイ・ホッグが撮影した映像と音声をすべて確認したが、それらは、正に素晴らしい歴史的な宝庫だった。」

ドラマチックな瞬間があることは間違いないが、このプロジェクトが、メンバー同士の確執を象徴していたという形跡はなかった。

これは、驚くべき発言です。オリジナルは、メンバー間の確執が露わになっていて、ファンとしては観るのも辛かったのですが、そんな形跡がなかったとは。

「4人が一緒に仕事をして、今やポピュラー界のクラシックとなった曲を一から作り上げていく模様を観るのは魅力的なだけではない。彼らは、楽しくて気分が高揚し、そして驚くほど親密だったのだ。

「私は、この素晴らしい映像を信頼されたことに感激し、光栄に思う。この映画を制作することは、私にとって大いなる喜びとなるだろう。」

俄(にわ)かに信じがたい言葉ですが、私は、固定観念に取り憑かれていたのかもしれません。ホワイトアルバムに対しても、メンバーがギスギスした関係の中で制作されたアルバムという印象をずっと抱いていました。しかし、2018年のリマスター版によってそれが必ずしも真実でないことがわかりました。

(4)これが本当に解散寸前のバンドだったのか?

The Beatles in Apple Studios, February 1969

ビートルズの「Get Back / Let It Be」の頃について、後世に語り継がれるべき素晴らしい物語が存在したことは事実ではありますが、それが1969年1月に存在したメンバーの確執を拭い去ってしまうわけではありません。ただ、そのハードルがどれほど高いものであっても、今回のプロジェクトで映し出されるストーリーの驚くべき側面は、ビートルズが持つとてつもないパワーを見せつけるでしょう。

ジョージがビートルズに復帰してから、彼らは、「Get Back」「Let It Be」、そして「The Long and Winding Road」とナンバーワンシングルとなった3曲をレコーディングし、伝説のルーフトップ・コンサートを行いました。

解散の危機に瀕したバンドが、こんな離れ業をやってのけたのは、決してメンバーが本当にバラバラになっていたのではないことを証明しています。ホッグの作品は、今回のプロジェクトによって大きく塗り替えられるかもしれません。

5 ビートルズは最後まで偉大であり続けた

(1)Living in the world agree

Haribol , George!!

ビートルズがどれほど偉大なバンドであったか、それは、彼らの関係が混乱している最中であっても、素晴らしい作品を制作したことが正にそれを示しています。彼らは、「Let It Be」のほんの数か月後にアルバム「アビイ・ロード」(1969年)を完成させようと取り組んだのです。

そして、その後の歴史が示すように、そのプロジェクトでさえも破綻していた彼らの関係を修復することはできませんでした。しかし、彼らは、彼ら自身のラストを飾る作品をレコーディングし、音楽史上に残る傑作を生み出したのです。それは、メンバー同士の絆が決して失われていなかったことを示しています。

(2)There wil be an answer

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ビートルズのローディーだったニール・アスピノールは、メジャーデビュー前のビートルズの時代からずっと彼らを見守ってきましたが、「ビートルズは、スタジオで彼らの芸術性を放棄することは決してなかった。」と語りました。彼らは超一流のプロであり、日頃はバラバラのビートルであっても、一歩スタジオに足を踏み入れた瞬間、ビートルズになったのです。

ジャクソンは、アスピノールが語った言葉の意味をよくかみしめています。彼は、時を超えて新しい「Let It Be」を作ろうとしているのです。

結局のところ、ビートルズのコンテンツはその欠点も含め、それ自体がとてつもなく強力で興味深いものです。それが彼らの純粋な喜びの瞬間であったり、または最も鋭く対立したの日々の間に生まれたものであったとしても、彼らの音楽は、依然としてポピュラー音楽の中で燦然(さんぜん)と輝き続けています。

ジャクソンの手腕に期待したいと思います。

 

(参照文献)salon

(続く)

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