★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ポールにファルセットを伝授したリトル・リチャード(270)

Little Richard RIP | The Beatles

1 ロックン・ロールの原型を作った

(1)エルトン・ジョンはピアノで影響を受けた

「リトル・リチャードとジェリー・リー・ルイスを聴いたら、それだけで十分だった。」とエルトン・ジョンは、1973年にローリング・ストーン誌に語っています。「僕は、他の誰にもなりたいとは思わなかった。僕は、ジェリー・リー・ルイスよりもリトル・リチャードのスタイルだと思う。ジェリー・リーは、非常に手の込んだピアノ弾きでとても上手いけど、リトル・リチャードは、どちらかというとパウンダー(鍵盤を自動で叩く機械~鍵盤を叩きつけるように弾く人の意味)だよ。」 

ちなみにパウンダーというのはこれです。

Piano Pounder: Exclusive Wessell, Nickel & Gross Tool

「 彼のロックンロール・レコードは、そのサウンドを聴けば分かるように、これまでに作られたロックンロール・レコードの中で最高のものだと思う。」

また、リチャードが亡くなって2日後の5月10日のツイッターではこう語っています。

「間違いなく、音楽的にも、ヴォーカル的にも、視覚的にも、彼は、私にとって最大の影響力を持っている。10代の頃に彼のライヴを観たことは、その時の私の人生の中で最もエキサイティングな出来事だった。鳥肌が立ち、電気が走り、体の隅々から喜びが湧き上がってきた。」

 

(2)これがロックン・ロールだ!


Little Richard - Long Tall Sally - 1956

1958年以降、彼は、再びトップ10入りを果たすことはありませんでしたが、リトル・リチャードの影響力は絶大でした。ビートルズは、「Long Tall Sally」を含む彼の曲をいくつかカヴァーし、これらの曲でのポールのヴォーカルがさく裂したのです。ビートルズ自身のオリジナル曲である「I'm Down」は、いきなりハイトーンのシャウトから始まる「Long Tall Sally」をオマージュした、リトル・リチャードに敬意を表した作品です。


The Beatles - I'm Down (Live At Shea Stadium)

彼の曲は、ロックンロールの原型となり、エヴァリー・ブラザース、キンクス、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルからエルヴィス・コステロスコーピオンズらのアーティストたちに、何十年にもわたってカヴァーされてきました。「エルヴィスは、ロックンロールを普及させた。」とスティーヴン・ヴァン・ザントは、訃報が流れた後にツイートしました。「チャック・ベリーストーリーテラーだった。リチャードは原型だった。」

「ロックンロールの派手さが好きなら、リトル・リチャードに感謝するしかない。」と、ブラック・キーズのダン・アウアーバッハは語っています。「彼が最初だったんだ。当時、自由奔放になるためには、多くのことをしないといけなかった。」

(3)ビジュアルも重要だった

レインボーアイル on Twitter: "12/5は、リトルリチャード (Little ...

ド派手なヘアスタイルと衣装でステージに上がることは、とても勇気が必要だったと思います。何しろ、まだ1950年代ですからね(^_^;)「お前はゲイか?」と激しいヤジを浴びせられることを覚悟しないといけなかったんです。しかし、リチャードは、それをものともしませんでした。

リトル・リチャードのステージ上の代名詞ともいえる髪を高く盛り上げたポンパドール、女性的な衣装、ガラスビーズを散りばめたシャツもまた、ロックンロールのショーマンシップの基準となりました。「プリンスは、彼の時代のリトル・リチャードだ。」とリチャードは、1989年に語りました。「彼が着る前から、僕は紫を着ていたんだよ!」

チャック・ベリーのギター・パフォーマンスも派手でしたが、おそらく、テレビの登場の影響が大きかったと思います。音楽ライヴが家庭のテレビで観られるようになり、音楽は聴くだけではなく、見せるエンターテイメントになったのです。ド派手な衣装で登場したリチャードは、後のデヴィッド・ボウイ、T‐レックスに代表されるグラムロックの先導者となり、彼がゲイであることは、エルトン・ジョンフレディ・マーキュリーらをコンプレックスから解放させたのです。

 

2 若きビートルたちが初めて聴いた時の衝撃

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「リトル・リチャードは、偉人の一人だった」とジョン・レノンは語っています。「僕が初めて彼の曲を聴いたのは、僕の友人がオランダに行って片面に『Long Tall Sally』もう片面に『Slippin' And Slidin』が収録された78回転のレコードを持って帰ってきた時だった。あんな風に歌う人を聴いたことがなかったし、サックスが狂ったように演奏しているのを聴いたときは、頭が真っ白になったよ。」

ポール・マッカートニーもジョンの気持ちに同意しました。「当時の僕らの気持ちを想像すると、ジョンがバディ・ホリー派で、僕はリトル・リチャード派だった。誰でも何かを始める時は、誰かの影響を受けているものさ。」ポールがリチャードを崇拝していたのは、「I Saw Her Standing There」で彼が「woooo」とファルセットを出しているのを聴けば分かります。

ジョンとポールが初めて出会った時、当時15歳だったポールは、16歳だったジョン・レノンの「オーディション」を受けました。「Twenty Flight Rock」を熱唱した後、リトル・リチャードの曲をメドレーで演奏しました。

ポールのヴォーカルのスキルの高さに、疑い深いジョンも唸るほど感心しました。すでにポールは、リチャードのハイトーンヴォイスを完璧に出せたのです。ティーンエイジャーはもちろんのこと、リチャードのように泣き叫ぶことができる人はプロでもそう多くはなかったからです。

 

3 アーリー・ビートルズ時代から盛んにカヴァーした

(1)多くの曲をカヴァーした


Lucille (Live At The BBC For "Saturday Club" / 5th October, 1963)

60年代初頭、クオリーメンは、ジョージ・ハリスンとピート・ベストをメンバーに加えてビートルズとバンド名を改めていました。当時マネージャーだったアラン・ウィリアムズは、彼らをドイツのハンブルグのクラブに巡業させ、そこで彼らは、毎夜8時間もの間、騒々しいサウンドを出してドイツ人の観客を楽しませました。

このようなクラブで、彼らは、アメリカのロックンロールの名曲、中でもリトル・リチャードの曲の演奏に磨きをかけていきました。ポールの絶叫するリード・ヴォーカルで、彼らは、「Good Golly Miss Molly」「Tutti-Frutti」「Lucille」などのヒット曲を演奏し、自分たちのものにしたのです。

ビートルズは、リチャードのトレードマークであるオクターブを跳ね上げるような高揚感のある「Woooo!」というファルセットを盛んに用いました。ポールは、彼が初めて人前で歌った曲は、後にビートルズとしてレコーディングした「Long Tall Sally」だったと語っています。

(2)ポールにファルセットを伝授した

リチャードは、「ポールは、信じられないほど素晴らしかった。彼なら自分で曲を作れると感じた。」して、リチャードは、グループを助けるために何かしたいと思い、1962年の後半にドイツのハンブルクにあるスター・クラブでのコンサートのオープニング・アクトとして彼らを招待しました。

そのツアーの間、リチャードは、楽屋でポールに「Tutti-Frutti」などの曲の中から「Woooo!」というファルセットの出し方を教え、ポールを指導しました。リチャードは、彼が習得できるまで、ピアノの前に座ってファルセットを歌っていたそうです。もう完全にパーソナル・ヴォイストレーナーですね(^_^;)

その時のことをリチャードがCBSのインタヴューで応えています。これがビートルズにとって大きなターニングポイントになりました。その時に、ビリー・プレストンがリチャードのキーボーディストとして同行しており、これがきっかけで後にゲット・バックセッションでギグに参加することになったのです。

www.cbsnews.com

このファルセットは、リチャードの代名詞として広く知られていますが、実は、彼もゴスペル歌手のマリアン・ウィリアムズからヒントを得ていたことは、それほど知られていないのではないでしょうか?う~む、どの世界にも先人はいるんですね。それでは、彼女の見事なファルセットをお聴きください。脱帽です、参りましたm(__)m


Marion Williams - Packin' Up

 

(参照文献)RollinGstone, If You Like the Beatles...: Here Are Over 200 Bands, Films, Records and , Pat DiCesare, GRIN, CIvilized

(続く)

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