★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ジョンが一度しか弾かなかったリッケンバッカー325(343)

1 ジョン・レノンといえばリッケンバッカー325

(1)愛用のリッケンバッカー325

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いつもリッケンバッカーは頼もしき相棒だった

今回は、ジョン・レノンが愛用していた彼の代名詞ともいえるリッケンバッカー325にまつわるエピソードについてお話しします。1960年にビートルズがドイツのハンブルグを仕事で訪れた際、ジョンは最初の1本を購入しました。彼は、バンドの初期からリッケンバッカー325を何本か弾いていましたが、ほぼ唯一のギターとして使い続けていました。彼は、当時のインタヴューで「最も美しいギター 」と語っていました。

1964年のクリスマスの頃は、ビートルマニアが熱狂していました。ビートルズは、クリスマスイヴから年明けの数週間にかけて、ウェストロンドンの劇場でショーを行いました。ポールは、ヘフナーのベース、リンゴは、ルートヴィヒのドラム、ジョージは、リッケンバッカーの12弦、グレッチのカントリージェントルマン、テネシアンを持ち替え、ジョンは、リッケンバッカー325を弾いていました。

(2)ギターを落とした💦

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(1964年、エドサリヴァン・ショー)

ところが、あろうことか、ジョンは、興奮のあまり、愛用のリッケンバッカーをハマースミス・オデオンのステージから落としてしまったのです!

ビートルズは、全期間を通してジミ・ヘンドリクスみたいにギターを床に叩きつけて壊したり、燃やしたりするパフォーマンスをするようなアーティストではありませんでした。彼らは、基本的に楽器を大切に扱っていたので、ストラップが外れでもしない限り、落とすようなことはありません。

あるいは、演奏が終わってから、ちょっとアクロバティックなパフォーマンスをしてみたのかもしれません。いずれにせよ、それ以上の詳しい情報がないので、彼がどういう状況で落としたのかは分かりません。実物は、日本のジョン・レノンミュージアムで展示されたのが最後の公開とされていますが、マシンヘッド付近にひどいヒビが入っていたことが確認されています。

2 リッケンバッカー社がプレゼント

(1)社長がプレゼントしてくれた

ハンブルクの下積み時代からずっと愛用してきたリッケンバッカーでしたが、酷使してきたため、1964年も後半になるとさすがにボロボロになっていました。買い換えようと思っていたところにリッケンバッカー社がプレゼントしてくれてジョンは大いに喜んだのです。ところがその喜びも束の間、彼は、ステージからそれを落として壊してしまうというとんでもないミスを犯してしまたのです。

リッケンバッカーの社長であるF.C.ホールは、エドサリヴァンショーでデビューする前のビートルズと会うためにニューヨークに到着しました。1963リッケンバッカー325ジェットグロ、シリアルナンバーDB-122は、ジョンに使ってもらおうとデザインされたのですが、その時にはまだ完成していませんでした。

ホールは、ビートルズが自分の会社のギターを使っていることを聞きつけ、マネージャーのブライアン・エプスタインを探し出し、プライベートな会合をセッティングしたのです。ブライアンは、ジョンがドイツのハンブルグで購入した325がもうボロボロになっていたので、そろそろ新しいギターに買い替えた方が良いと考えていたようで、ホールからのプレゼントの申し出を渡りに船とありがたく承諾しました。

(2)ジョージには12弦をプレゼント

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12弦ギターを弾くジョージ

ホールは、エレキギターの12弦も持ってきていましたが、これは、体調不良で入院していたジョージにプレゼントするためでした。ジョンの新しい325は、追加のファインチューン・ノブ、二重構造のピックガード、改良されたビブラート、スリムなボディを備えており、2回目のエドサリヴァン・ショーのリハーサルに間に合うように、マイアミ・ビーチのドービル・ホテルに宿泊していたジョンの下に届けられました。しかし、彼は、せっかくプレゼントされたばかりの大事なギターを落として壊してしまったのです(^_^;)

3 深刻なダメージを受けた

(1)サウンドが狂う💦

驚いたジョンは、急いでギターをあちこち見回し、触って一通り確認し、何とか大丈夫だろうと安心しました。しかし、翌日の公演でそのギターを弾いてみると、弾けば弾くほどサウンドが狂っていくのが分かったのです😱

それで、曲と曲の合間に改めてよく見てみると、なんと、ナットからヘッドストックの後ろに向かって亀裂が入っていました!彼は、どうしようと頭を抱え込んでしまいました。何しろコンサートの真っ最中ですから、今さらどうしようもありません。この様子からすると、どうやらサブのギターも用意していなかったようです。彼はギタリストですが、職人ではありませんし、機械オンチで不器用でしたから、自分では修復できませんでした。

(2)マルが代用品を受取りに行った

ジョンのパニックを収拾する仕事を任されたのが、ビートルズの信頼できるローディであるマル・エヴァンズでした。多分、そうなったんだろうなと誰もが思いますよね(笑)翌日のハマースミスでの演奏に備えて、ロンドン北西部にあるローズ・モーリス社の本社にリッケンバッカーの代用品を取りに行かなければなりませんでした。休日の混雑した道路をタクシーで片道1時間かけて移動しました。いやはや、ローディーも大変ですね(^_^;)

ローズ・モーリス社は、1996モデルのショートスケールの325を提供してくれました。ジョンが好んだ黒ではなく、リッケンバッカーのファイヤーグロ・レッド・サンバーストで仕上げられていました。

しかし、ジョンは、モーリス社の1996モデルのリッケンバッカーで我慢し続ける必要はありませんでした。彼は、すぐにいつもの325を演奏可能な状態に戻し、1965年のアビイ・ロード・スタジオでのバンドの最初のセッションに備えたのです。どうやらマルが修理したようなのですが、そうだとしたら大した腕ですね。だって、相当なダメージを受けていたんですから。

4 ローズ・モーリス社がライセンス生産

(1)独自のモデルを生産

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ローズ・モリス社の広告

一方、イギリスの楽器販売メーカーであるローズ・モーリス社は、リッケンバッカーのイギリス代理店を引き受け、6種類のモデルの製作を任されていました。同社の製品は、アメリカのオリジナルモデルと異なり、音の出ない穴やスラッシュホールではなく、伝統的なFホールを備えているものもありました。また、モーリス社は、難解なナンバリングシステムに基づいて、これらのモデルに独自のモデル名を付けていました。

例えば、リッケンバッカー330-12のイギリスヴァージョンは、モーリス社の販売資料では1993となっており、325は1996モデルとなっていましたが、どちらもボディにFホールがありました。Fホールとは、ギターのボディに付けられた音楽記号のフォルテのようなデザインの穴のことです。

(2)ビートルズをPRに使っていた

ローズ・モーリス社は、自社ブランドにとって絶好のプロモーション・チャンスを掴みました。ジョンが325を、ジョージが360/12の12弦を愛用しているという事実を強調して、リッケンバッカービートルズの関係をすでにPRに利用していたのです。

モーリス社の広告には、「『ビートルズ』のジョンとジョージを聴け......あれは偉大なるリッケンバッカーサウンドだ」というものがありました。そりゃ、ビートルズが使ってるんですからね。これをPRに使わないメーカーなんてあるはずないですよ。

(3)アクシデントを早速利用

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「the Beatle Backer」と銘打ったローズ・モーリス社の広告

こんな風に既にビートルズをPRに使っていたローズ・モーリス社でしたが、ハマースミスでのアクシデントの後、同社がどう動くかはもうはっきりしていました。ミュージシャン向けの雑誌「Beat Instrumental Monthly」に、ジョンが1996モデルとすぐに出会ったという内容の広告を大急ぎで作ったのです。「Rickenbacker The Beatle Backer 」と題した新しい広告では、ジョンのオシャレなポートレートと、Fホールのリッケンバッカーの大きな写真が掲載されていました。

そして、ローズモーリス社は、次のようにアピールしました。「これは、ビートルズジョン・レノンが使用していた有名なリッケンバッカー・ギターのモデル1996です。昔からジョンとリッケンバッカーは切っても切れない関係ですから、お近くの楽器店で試してみてはいかがでしょうか。」と誇らしげにアピールしています。アクシデントを早速PRに使うとは商売上手ですね。

(4)こっそり持ち帰った

確かに、ジョンは、ローズ・モーリス社のギターを1~2時間ほど使っていました。そして、クリスマス・ショーの後、ジョンは、その1996モデルを自宅に持ち帰り、人目につかないように隅に隠してきました。あれ、ちょっと待って下さい。これって代用品を借りただけですよね?返さなきゃいけなかったんじゃないですか?

最終的にジョンは、このギターを1968年頃にリンゴにプレゼントしたようです。2015年、リンゴは、自宅の大掃除をして、リッケンバッカーを含む多くのものをオークションに出品しました。

5 定価と付加価値

(1)定価

もし、ローズ・モーリス社がジョンに渡したギターの代金を請求していたとしたら、定価は159ギニーだったと思われます。イギリスの高級品には、1ギニー=1ポンド1シリングのような値段がついていました。つまり、ローズ・モーリス社製のリッケンバッカーは、166ポンド19シリングで、当時の価格で約465ドル、2021年現在のお金に換算すると約3,700ドル(約42万円)に相当します。もっとも、同社は、ジョンのおかげで相当儲けさせてもらったはずですから、ギターの1本位どうってことありませんね(笑)

(2)オークションで落札された価格

しかし、このような計算は、2015年に行われたリンゴのオークションの結果になると、まったく意味をなさなくなってしまいます。ジョンが使ったリッケンバッカーは、91万ドル(約1億円)で落札されました。

彼は、たった1〜2時間しか使ってないのに、こんな高額になるとはねえ〜(^_^;)まるで、ギリシャ神話に登場する小アジアフリギアのミダス王のように、触れた物が全て黄金に変わる手を持っていたみたいですね。

(参照文献)リヴァーブ、グランディミュージック

(続く)

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