★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ついにルーフトップ・コンサートが始まった!(378)

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 準備は整った

(1)不安を抱えながら

最後の29日のセッションもダラけた感じで終わりました。こんな状態で翌日のライヴに臨むなんて、普通だったらとても無理だと思うでしょう。しかし、ポールは、とりあえずは翌日の決められた時間に来るつもりでした。

幸いだったのは会場がビルの屋上であるため、演奏するビートルズの目の前に観客がいないことでした。リハーサルと同じようにリラックスした気持ちで演奏できるという点で、ここを会場に選んだのは正解でしょう。

撮影21日目の30日、木曜日、いよいよ本番です。ロンドン中心部のサヴィル・ロウは、ビジネス街でおまけに平日ですから、大勢の人と車が行き交っていました。あともう少しでとんでもない騒音がビルの屋上から降ってくるとは誰も予想していませんでした。

(2)10台のカメラを設置

撮影スタッフを指揮するホッグ

ホッグは、カメラ10台の位置を指示しました。カメラ5台は屋上に、1台代は向かいのビルに、3台は通りに設置しました。彼がこれだけたくさんのカメラを設置してくれたおかげで、演奏中のビートルズをありとあらゆる方向から撮影できました。

打合せの時は9台と言っていたのに1台増えています。この1台は、受付のカウンターの中に隠しカメラとして設置されました。撮影までの間にホッグが思いついたのでしょう。これが後で大活躍することになります。

 

 

2 隠しカメラを設置した

隠しカメラは受付のカウンターの中に仕掛けられた

普通にライヴの模様を撮影するのであれば、表のカメラだけで十分だったはずです。隠しカメラを設置したのは、ライヴを始めた途端に、警官が駆けつけて来ることをホッグが予想していたとしか考えられません。もちろん、彼らが撮影されていることに気がつけば、即刻撮影を中止させたでしょう。

そういえば、打合せの時に「カメラを回せば何かが起こる」とハプニングを期待するような発言をしていました。この頃は、ヌーヴェルヴァーグという即興の演出を手法にした映画が流行していましたが、その影響も考えられます。

この仕掛けは、後に「警官によるライヴ中止はヤラセだった」という噂を生むことにもなりました。警官が来るのが分かっていたから、ビルの内部で撮影できたというわけです。しかし、やらせではなく、ホッグは、ビートルズがロンドンのど真ん中で爆音で演奏を始めれば、すぐに警官が駆けつけることを想定してたのです。

警官が対処に困って途方に暮れる様子こそ、彼が求めていた「撮れ高」の一つだったのです。これは、隠しカメラでなければ絶対に撮影できなかったのですから、彼の仕掛けは、十分に効果を発揮したといえるでしょう

3 マーティンとジョンズは地下にスタンバイ

隠しカメラに気づいたマーティン

アップルに最初にやってきたのはマーティンでした。彼は、ドアを開けて中に入ると、受付の女性が上に行きますかと尋ねました。マーティンは、それには応えず、ジッとカメラ目線で立っています。どうやら、隠しカメラがそこに仕掛けられていることにすぐに気付いたようですね。

いやはや鋭いですね。受付には白いカウンターがあり、立った人の膝ぐらいの高さに黒っぽいガラスのような飾りがつけられていました。隠しカメラは、その裏側に設置されていたのです。

彼は、何も言わずニヤリと笑って顔を背けました。内心では(そうか、慌てて駆けつけてくる警官の様子を撮影しようというわけだな)とでも思ったのでしょう。そのまま何も言わず上の階に上がって行きました。

撮影クルーが屋上で着々と機材を設置していきます。ビルの屋上ですから、誰にも邪魔されません。マーティンとジョンズは、地下で演奏を録音するためにスタンバイしています。彼らは、屋上の様子を有線カメラで見ることになります。機材のセッティングが終わりました。後は、ビートルズの登場を待つだけです。

 

 

4 撮影開始

ビルの屋上に昇った野次馬に笑顔で手を振るポール

(1)意を決して屋上へ

ビートルズの4人は、既に下の階の部屋に集まっていました。彼らは、この期に及んでもまだ演奏をためらっていたのですが、とうとう意を決して屋上へ上り始めました。最初にドアを開けて現れたのはポールです。一番ライヴの開催に反対していた彼ですが、もうやるしかないと腹をくくったのでしょう。

ホッグは、全ての機材のセッティングが終わったことを確認すると、大声で「テイク1!」と叫びました。いよいよカメラが回り始めました。2人目はリンゴです。その後にビリー・プレストンが続きました。

(2)早くも野次馬が集まりだした

屋上によじ登った野次馬

少し離れたビルの屋上には、早くも数人の野次馬が集まっていました。彼らは、もちろんこれからビートルズがコンサートをやることなど知りませんでしたが、アップルビルの屋上で何か只ならぬことが起きていることには気づいたようで、何が始まるのかと興味津々でよじ登ってきたのでしょう。彼らに気付いたポールは笑顔で手を振りました。

リンゴは、ドラムキットの配置を確認していましたが、マルを呼んで配置が違う、直せとクレームをつけました。彼は、キットのセッティングなどについては神経質で、少しでも配置が違うと気に入りませんでした。そしてジョンとジョージが最後に上がってきました。3人は、ギターとベースをチューニングし、軽く弾いてサウンドを確かめます。

「Get Back」でサウンドチェックを始めました。アップルビルの屋上から突然バンドの騒音が降り注いできたため、大勢の通行人が驚いて空を見上げました。通りに設置したカメラで、そのシーンもバッチリ撮影できています。

 

 

5 1曲目は「Get Back」

(1)ついにライヴを開始した

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ビートルズは、ついに1曲目の「Get Back」を演奏し始めました。ライヴに反対していたポールですが、いざステージに立つと一番生き生きしていたように見えます。元々ライヴが大好きな彼ですから、久しぶりのライヴに心が踊ったのでしょう。リハーサルでダラけていたのが信じられない位、ライヴとしては上々の仕上がりです。

このシーンは、彼らが演奏している映像と通行人やビルの屋上に昇った野次馬の映像を、同じ画面でいくつかに分けて同時進行させるという編集スタイルをとっています。これならどのタイミングで何が起きたかがよく分かります。この辺りの演出もなかなか上手いですね。さすがはピーター・ジャクソンです。

ジョンは、事前の打合せでは久しぶりのギターソロに自信がないため、1回目と2回目で同じソロをやると言っていましたが、本番ではちゃんと違うソロを弾きました。この頃になると周囲のビルのあちらこちらに、何とかビートルズを見ようと人が集まってきました。

(2)概ね好意的だった通行人

ゲリラライヴに好意的だった女性

通りではインタヴュアーが通行人にインタヴューしています。誰だと思いますかと尋ねられた若い女性は「ビートルズでしょ」と即答しました。もちろん、彼女は、この曲を聴いたことがありませんが、聴かなくてもすぐにわかりますよね。でも「意図が分からない」とも応えていました。そりゃそうです、いきなり都会のど真ん中で騒音をまき散らしたんですから。

白髪の高齢の女性も「素敵よ。1日の最後に見られて感激」と応えていました。このことからも、彼らがもはや若者だけのアイドルではなく、年配の人からも支持されていたことが窺えます。

ビートルズは、もう一度「Get Back」を演奏しました。高齢の男性が「街に活気を与えている。彼らの音楽は好きだ」と応えていたのは意外でした。高齢者なら「こんなところで騒音をまき散らすなんてけしからん」と眉をひそめるかと思いましたが、意外に好意的ですね。もちろん、不快に思った人も後で登場しました。

 

 

6 3曲目は「Don’t Let Me Down」

(1)「Don’t Let Me Down」を演奏

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続いてビートルズは、「Don’t Let Me Down」を演奏しました。この頃になると、大勢の通行人が立ち止まって演奏に聴き入っていました。久々のビートルズのライヴですからね。

一人の中年男性が「彼らの音楽はいいが問題が。何よりうるさすぎる。仕事の妨害だ」と訴えていました。そりゃ、平日の昼間のビジネス街のド真ん中で、こんな騒音を出されたら仕事どころではありません。でも、途中で仕事を放り出して慌てて駆けつけたファンも大勢いたでしょう。

(2)警官が駆けつけた

通報を受けて駆け付けたレイ・ダッグ巡査

この演奏の途中で近所の住人からの苦情が警察署に殺到し、2人の警官が駆けつけてきました。その様子も通りのカメラでしっかりと撮影されています。編集で同時進行されているので、警官がやってきたタイミングがこの曲の演奏の途中であることがよく分かります。

1人の高齢の男性が警官に向かって何事か強い口調で話しかけています。音は拾われていませんが、うるさいから早く止めさせろと文句を言っていたのでしょう。

1人の警官は、レイ・ダッグ巡査でまだ19歳でした。年齢からして高校を卒業して警官になったばかりの新入りだったのではないでしょうか?それがいきなりこんな事件に巻き込まれたのはちょっと気の毒な気もします。その時の彼にとっては、まだ19年という短い人生経験の中で最大の厄介な出来事だったかもしれません。

彼は、大騒動に遭遇し、事態を収拾できず困惑する新人の警官らしい初々しさが現れていました。ベテランの警官だったら、こんな画は撮れなかったかもしれません。

後に振り返ってみると、彼は、とてもラッキーな人間だったといえるでしょう。何しろ、飛び入りのエキストラとして、この素晴らしい映画でビートルズと共演できたのですから。

(続く)

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