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ビートルズに愛されたローディー〜マル・エヴァンズ(452)

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1 世界一有名なローディー

(1)誰からも愛された

マル・エヴァンズ…ビートルズファンでこの人物の名前を知らない人はいないでしょう。彼は、メンバーではなく、しかも、ジョージ・マーティンのように音楽制作にかかわることもない裏方です。そういう意味では前回までご紹介したフリーダ・ケリーと同じですが、彼女よりもずっと有名でした。

というのも、彼がローディー(ロード・マネージャー)という仕事をしていたため、ビートルズが仕事で行くところにはどこへでも付き添っていたからです。ローディーというのは、バンドの楽器などの機材を運搬したり、セッティングしたりすることを主な仕事にしているスタッフのことです。当然のことながら、マルは、常にビートルズのコンサートやツアーに同行しましたから、ビートルズと一緒にファンに目撃されたり、写真や映像に写ったりすることも多かったのです。

それに、太っちょでメガネをかけていて、まるでテディ・ベアのような愛嬌のある容姿だったので、ビートルズのメンバーはもちろん、ファンからも愛されていました。おそらく、世界一有名なローディーではないでしょうか。

(2)伝記が出版された

今回、彼のことについて書こうと思い立ったのは、最近、彼の伝記が出版されたからです。本のタイトルは「Living the Beatles Legend: The Untold Story of Mal Evans」(ビートルズの伝説を生きる:マル・エヴァンズ秘話:筆者約)で、2023年11月14日に出版されました。この本が出版されるに至った経緯は後述しますが、ビートルズの間近で彼らの一挙手一投足を目の当たりにしてきた人物の伝記ですから、それは期待できますよね。実際、出版されてからまだ間がないのにかなり高い評価を得ています。私は、入手していないのでレヴューは書けませんが、これまで語られてきたマルの人となりについて触れてみたいと思います。

 

 

2 Amazonの紹介文

(1)簡潔に内容を紹介

2023年11月に出版されたマルの伝記

Amazonのこの本の紹介文が簡潔に彼の生涯を紹介しているので、それをそのまま引用します。

ビートルズの最愛の友人であり、親友であり、ローディであったマルコム・エヴァンズの初の長編伝記」

ビートルズの長年のローディであり、個人的なアシスタントであり、献身的な友人であったマルコム・エヴァンズは、バンドの側近としてかけがえのない存在であった。ホーン・リムの眼鏡をかけ、ビートルズを語る上で大きな存在感を放ったエヴァンズは、時にはパフォーマーとして、時には作詞家として貢献しながら、愛する『少年たち』を守ろうと奮闘した。シェイ・スタジアムの勝利から、『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の時代を超越したカバーアートの制作、そして有名な屋上コンサート『Let It Be』まで」

「この駆け出しバンドのローディーを務めるために、電気通信エンジニアという安定した仕事を辞めたマルは、当初から見れば変わり者で、ビートルズより歳も取っていて結婚して子どももおり、音楽ビジネスの経験もなかった。それでも彼は彼らの世界に身を投じ、世界中を飛び回り、なくてはならない存在となった」

ビートルズ解散後の数年間、ビッグ・マルはビートルズに雇われ続け、それぞれがソロ活動を始めた。1974年までには、ソングライター、レコード・プロデューサーとして名を上げる決意を固め、ロサンゼルスでの新しい生活に向けて旅立ち、そこで回顧録を執筆した。しかし、1976年1月、この本を世に送り出そうとしていたエヴァンズの物語は、ロス市警との抗争の最中に悲劇的な結末を迎えた」

ビートルズに傾倒する人々にとって、マルの人生と早すぎる死は常に謎に包まれてきた。何十年もの間、彼の日記や原稿、膨大な思い出の品々は行方不明となり、永遠に失われてしまったかのように思われていた」

ビートルズ研究家であり作家でもあるケネス・ウォマックは、マルの未発表アーカイヴに完全にアクセスし、何百回もの新たなインタヴューを行った。マルのアーカイヴから未公開の写真やエピソードをふんだんに盛り込んだこの本は、ファブ・フォーの驚くべき物語に欠けているパズルのピースである」*1

(2)出版が切望されていた

この紹介文を読んだだけで、期待がいやが上にも高まりますよね。何しろビートルズの一番近くで彼らとともに働いていた人物の伝記ですから。ここに記載されているように、実は、マル自身がこれを出版するつもりだったのですが、彼を襲った突然の悲劇のためにそれは叶いませんでした。しかも、伝記の原稿すら行方不明になってしまったのです。もはや、伝記が公開されることは永遠にないだろうと人々は絶望していました。

しかし、「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を経てそれが発見され、日の目を見ることになったのです。ビートルズの研究家をはじめファンにとっても待望の一冊だと思います。おそらく誰もがまだ知らない、数多くのエピソードがそこには紹介されているのでしょう。何が書かれているのか、とても興味があります。今回は、この本ではなくこれまで語られてきたマルの人生を紹介します。

 

 

3 ビートルズとの出会い

(1)リヴァプール生まれ

マル・エヴァンズは、1935年5月27日、リヴァプールでマルコム・エヴァンズとして生まれました。1961年、マージーサイド州ニュー・ブライトンの遊園地で知り合ったリヴァプールの女性リリーと結婚し、その年の暮れに最初の子どもであるゲイリーが生まれました。

モスリー・ヒルヒルサイド・ロードに住み、郵便局の電話技師として働いていたマル・エヴァンズは、ビートルズを初めて見ました。熱烈なエルヴィス・ファンであったにもかかわらず、エヴァンズはすぐに彼らの虜になりました。彼は、こう語っています。「マシュー・ストリートという小さな通りを歩いていくと、キャヴァーン・クラブに着いた。クラブに入ったことはなかったけど、エルヴィスのような音楽が聴こえてきたんだ。それで1シリング払って中に入って......」

マルがたまたまキャヴァーンクラブの近くを歩いていたら、彼の大好きなエルヴィスに似たロックンロールが聴こえてきて、誘われるように店内へ入って行ったのです。

(2)ドアマンとしてスカウトされた

1960年当時のキャヴァーン・クラブ

ジョージは、ビートルズの中で最初にマルと友人になりました。キャヴァーンのオーナーであるレイ・マクフォールにエヴァンズをドアマンとして雇うことを提案しました。当時27歳だった長身で体格の良いエヴァンズはクラブに受け入れられ、ビートルズ・ファンの熱狂が次第にヒステリーに変わっていく中で貴重な戦力となりました。

おそらくジョージは、マルの立派な体格を見てこの男ならただのドアマンだけではなく、自分たちを守ってくれるボディガードにもなると思ったのでしょう。彼らがハンブルクで巡業していた頃も、クラブにはドイツ人の屈強なドアマンがいて、毎晩のように喧嘩する酔客を叩きのめしていました。ジョージの期待通り、マルは、ビートルズのローディーだけでなくボディガードにもなったのです。

 

 

4 正式に雇用された

(1)立派な体格でボディガードに

リンゴは、彼についてこう語っています。

「マルは、1963年に正式に僕らの仲間になった。彼は、我々のボディーガードだったが、誰にも危害を加えないという点で素晴らしかった。彼は、体格が良かったから『すみません、ビートルズを通してください』と言うだけでよかった。彼は、とても強かった。ベースアンプを一人で持ち上げることができた。彼は、サーカスに入るべきだったんだよ。」*2

マルは、「気は優しくて力持ち」だったんですね。そりゃ、あの大男に立ち向かおうなんてヤツはいないでしょう。

(2)パートタイマーから本職に

ドラムキットをセットするマル

やがてマルは、ビートルズと固い絆で結ばれ、キャヴァーンでの仕事を始めてから3か月後、ブライアン・エプスタインからビートルズのローディーとして運転手のニール・アスピナルとともに働くよう依頼されました。

ジョージは、こう語っています。「ある時、ニールが病気でロンドンまで送ってくれる人が必要だったので、マルに頼んだんだ。彼はいい奴で、その頃には僕らは彼とよく話すようになっていた。彼は、そのために数日仕事を休まなければならなかった。それから、ライヴがどんどん増えていくにつれて、バンの運転手を誰か他の人に頼んで、ニールには僕らとスーツやその他もろもろの面倒を見てもらう必要があることに気づいたんだ。それは全員一致の考えだった。だからマルは仕事を辞めて、僕らのために働いてくれたんだ。」*3

マルは、初めのうちは会社で勤務しながらパートタイムでローディーを引き受けていました。やがてビートルズが売れ始めると、常勤のローディーが必要となり彼を雇用したのです。しかし、安定した会社員を辞めて身分が不安定なバンドのローディーをやるなんて、マルもよく決断しましたね。奥さんもよく同意したものです。

マルは、グループの非公式なローディ兼ボディガードとなり、アスピナルとともに信頼できる側近の一員として、機材のセッティングやチェック、会場から会場への運搬などを行いました。

(参照文献)ビートルズ・バイブル

(続く)

 

 

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*2:アンソロジー

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