★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

「Egg Man」はオレだ!(483)

1 同世代のアーティストの影響を受けた作品

アニマルズがビートルズ に続いて全米チャート1位を獲得したことは前回ご紹介しました。 そして、アニマルズ、中でもエリック・バードンが特にビートルズを尊敬していたこともお伝えしました。となると、当然のことながら、彼らは、ビートルズの影響を強く受けていたということになります。それは間違いありませんが、逆に、ビートルズがアニマルズから影響を受けて楽曲を制作したこともあります。今回はこの点についてご紹介します

ビートルズは、 様々なアーティストたちから強いインスピレーションを受けていたことは 広く知られています。チャック・ベリーからロイ・オービソンまで、ロックンロールの最高峰のサウンドの名残は、彼らの初期の曲のほとんどすべてで聴くことができます。これらのアーティストはビートルズより前の世代ですが、同時代のアーティストからインスピレーションを得ることもありました。

2 「Sgt. Pepper’s」の頃になっても

(1)あの名曲も

バンドが「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」という、間違いなくそれまでで最も創造的で革新的なアルバムの制作に取り組んだ頃になっても、彼らは、自分たちの創作を支えるために他のバンドの作品や姿勢を好んで研究していました。そのような曲の一つが、アルバムに収録される予定でありながらカットされた素晴らしい「Penny Lane」で、ビートルズはアニマルズに感謝していました。

「Strawberry Fields Forever」との両A面としてリリースされたこの曲は、彼らの故郷の礎の上に築かれた彼らの過去に深く根ざした曲でした。ビートルズがそれまでにやってきたことと同様に、「Penny Lane」はバンド自身の体験から構成されています。レノン=マッカートニーとクレジットされてはいますが、この曲は、主にポールが書いたものでリヴァプールの牧歌的なイメージを描いています。

(2)子供の頃の思い出を曲にした

「Penny Laneは、我々がとても懐かしんでいたリヴァプールの場所だった」とポールは、かつてビルボードに語っていました。「ジョンと私がお互いの家に行くためにバスに乗ったターミナルだった。そして、この歌に出てくることはすべて真実なんだ。床屋も銀行もあった。消防署もあった」

「ジョンと私は、いつもペニー・レーンで会っていた。そこは、毎年イギリスの在郷軍人会のポピーの日になると、誰かが立ってポピーを売ってくれる場所だった。私がこの曲を書こうとしたとき、ジョンがやってきて、よくあるように3番目の歌詞を手伝ってくれた」

「私たちは、子供の頃の思い出を書いていたんだけど、8年か10年前の最近になって薄れてきた思い出だったから、私たち二人にとっては比較的最近のノスタルジーであり楽しい思い出だった。すべてのものがまだそこにあって、我々は、それをはっきりと覚えていたから、その先に進むことができたんだ」

 

 

3 曲の発想

(1)バッハのブランデンブルク協奏曲

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この曲は、バンドがギターを使うことなく制作した曲の一つでもあり、実はポップミュージックというより18世紀のクラシック音楽にルーツがあります。ポールは、こう語っています。「バッハのブランデンブルク協奏曲を聴いて、ジョージ・マーティンに高音のトランペットは何かと尋ねたんだ。彼が『ピッコロ・トランペットだよ』と言ったので、街で最高のピッコロ・トランペット奏者を雇い、レコーディング・セッションで彼のために曲を書いた。私はとてもクリーンなレコードを作りたかった。本当にすべてが魔法のようだった」

(2)エリック・バードンから影響を受けた

バッハだけでなく、アニマルズもこのレコードに大きな影響を与えました。1966年、シングルがリリースされる前、そして、おそらくこの曲が作曲される前に、アニマルズのシンガーでありリーダーであったエリック・バードンは、そのユニークな曲作りでポールにインスピレーションを与えました。

ポールは、そのことについてこう語っています。「例えば、エリック・バードンがヒット曲のB面にあるニューカッスルの場所について書いた曲なんかがそうだね。自分が育ったリヴァプールという街についての曲を今でも書きたいと思うよ。マージーサイドの港湾労働者が仕事に行くときに通る長いトンネルであるザ・ドッカーズ・アンブレラや、昔の家の近くのペニー・レインのような場所さ」

 

 

4 生まれ故郷について書いた曲

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ポールが言及している曲は、間違いなくアニマルズの「Gonna Send You Back To Walker」という曲です。これは、アメリカ国内では102位にとどまった「Baby Let Me Take You Home」のB面曲として57位にランキングされました。ウォーカーは、イギリスのニューカッスル・アポン・タインの中心部のすぐ東にある住宅街です。つまり、アニマルズの生まれ故郷ですね。彼らは、自分たちの出身地をテーマに曲を制作したのです。

「The Quotable John Lennon」の記述によると、1965年、ジョンは、マネージャーのブライアン・エプスタインがエリック・バードンとアニマルズのヒット曲「Gonna Send You Back To Walker」を賞賛するのを聞きました。そのストーリー性とシンプルなアレンジに触発されたポールは、「Penny Lane」でその音楽的要素を取り入れました。彼は、このインスピレーションについて「Gonna Send You Back To Walker」を引き合いに出して説明し、さらに「あれがキッカケになって、僕たちはいろいろ書いていたんだ」と語っています。しかし、これは「Penny Lane」のメロディや特定のコードが「Gonna Send You Back To Walker」から生まれたということを意味するものではなく、むしろこの曲に存在するムード、歌詞、スタイルが、ポールの言うように「Penny Lane」の創作の一部にポジティヴな影響を与えたと思われます。

 

 

5 「Strawberry Fields Forever」にも影響を与えた

アラン・リヴィングストンは著書「Recordmakers」の中で、ポールが「Penny Lane」の作曲について言及したことがあると回想しています。ポールは、「そのことがちょっとしたキッカケになって、その週は4つの素晴らしいアイデアが浮かんだ」と主張し、その中には「Strawberry Fields」や「Penny Lane」も含まれていました。

その後、ジョン・F・ケネディ・ジュニア(ケネディ大統領の息子)とのホワイトハウスでのやり取りの中で、「エリック・バードンが解釈した『Gonna Send You Back To Walker』は、まさに『Strawberry Field』が想起させるムードとイメージを作り出しているようだ」と言われたポールは、「Strawberry Fields Forever」に影響を与えたかもしれない」とジョンに語りました。さらに、「ジョンも同じ意見だ。(この曲は)もしかしたら『Penny Lane』に影響を与えたかもしれない。ジョンは、エリックの『映画物語』的な曲作りが好きだったんだ」と彼は語っています。

バードンが生まれ故郷について描いた曲にジョンとポールがインスパイアされ、それぞれが故郷への郷愁を綴った名曲を誕生させたのです。

 

 

6 「Egg Man」はオレだ!

ドゥント・レット・ミー・ミスアンダーストッドの表紙

サイケデリックでシュールな名曲「I Am The Warlus」に「Egg Man」が登場します。ジョンお得意の言葉遊びが散りばめられた歌詞ですが、この「Egg Man」にはモデルがありそれがエリック・バードンなのです。

「私は『エッグマン』だった」とバードンは、自身の回想録である「ドゥント・レット・ミー・ビー・ミスアンダーストッド」に書いています。「あるいは、何人かの友人が呼んだように『エッグス』だった。そのあだ名は、当時ジャマイカ人のガールフレンドであるシルビアと経験したワイルドな体験にちなんで付けられた。ある朝早く起きて、靴下以外は裸で朝食を作っていたとき、彼女が私のそばに滑り込み、薬物のカプセルを私の鼻の下に滑り込ませた。その煙で脳が燃え上がり、私が台所の床に滑り落ちると、彼女はカウンターに手を伸ばして卵をつかみ、私のみぞおちに割り込んだ。」

バードンは、この話を忘れていましたが、ある夜、ジョンの家で開かれたホームパーティで、彼はこのことをジョンに話しました。「ある夜、メイフェアのアパートで、数人の女の子がいたパーティでジョンにこの話をした。『さあ、やってみろ、エッグマン』とレノンは、鉤鼻の先に小さな丸い眼鏡をかけ、私たちが、あまりにも積極的に女の子たちを相手にしようとしているときに笑った。」

その名前は定着し、ジョンの心の中では革命的な時代精神の象徴として神話化されました。グレイトフル・デッドですらこれまで聴いた中で最もサイケデリックだと呼んだ曲「I Am The Walrus」では、バードンの奇妙な存在が肉欲の虐殺の象徴のように織り込まれ、カウンターカルチャーの英雄を永遠に称えるために歴史に残る唯一の行為となっています。

(参照文献)ファーアウト、ビートルズ・ミュージック・ヒストリー、ラウドサウンド

(続く)

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