
- 1 学生の記者会見を受けることになった
- 2 記者会見に出席しようとした少女
- 3 ビートルズに一歩近づいた
- 4 いよいよビートルズに会いに
- 5 いよいよ記者会見場へ
- 6 インタヴューはできなかったが記者会見場には入れた
1 学生の記者会見を受けることになった
ビートルズに対する記者会見は、主にマスコミ関係者が行っていました。しかし、1965年のアメリカでアマチュアの学生が記者会見を行う機会に恵まれたのです。ビートルズのメンバーは、様々な「学生記者」コンテストで優勝した多くの10代の若者のために、個別に記者会見を開くことになりました。
しかし、彼らは全く乗り気ではありませんでした。10代の学生に記者と同じプレスパスとビートルズに会う機会を与えるのです。学生の記者会見は、ビートルズがすでにプロの記者から受けている拷問のような尋問に加えて、さらに長時間の尋問に耐えることを意味していました。
メンバーは、若い記者の中には自分たちと直接会うためなら何でもするほどの熱狂的なファンがいることを認めていました。しかし、多くの若いファンは誠実で、素晴らしい記事を渇望する野心的な記者でした。そしてビートルズは、これらの才能ある若者たちに絶好の機会を与えるべきだと考えたのです。
2 記者会見に出席しようとした少女
(1)アメリカ人の少女

1965年のヒューストンで開かれたビートルズの記者会見に出席しようと決意した、幸運にも小さな町に住む10代の少女の実話をご紹介します。彼女の物語は、1965年8月から1966年1月までの出来事を追ったジョン・レノン・シリーズの近刊「Some Forever」に掲載されています。
15歳のキャサリン・ペインは、ルイジアナ州北西部の石油ブームで栄えた村、ションガルー出身でした。1964年と1965年には、ションガルーの人口150人のうち約15%がビートルズ熱に沸いていました。キャサリンと二人の友人、アリーン・ベイカー(16歳)とジョアン・マウザー(14歳)は、典型的なビートルズファンでした。彼女たちは皆、毎日一人で、ルイジアナ州シュリーブポートの主要ロックンロール局であるAMラジオのKEEL-710で、愛すべきラリー・ライアンの番組を聴いていました。
(2)熱心にビートルズについて勉強した
キャサリンはこの4人のイギリス人少年たちに夢中で、ライアンが主催した「ビートルズ・バグ(熱狂的なビートルズファン)」コンテストで優勝したほどでした。彼女は毎日「ビートルズの秘密の言葉」を聞き、ビートルズのノートに一つ一つ忠実に書き留めていたのです。キャサリンは、KEELの誰もが欲しがる賞品を手に入れるため、数週間にわたって毎日小さな学校にトランジスタラジオをこっそり持ち込んでいました。
前年の夏、ビートルズはダラスで公演をしましたが、キャサリンはまだ彼らに関する知識が豊富ではありませんでした。その後彼女は、細部へのこだわり、根性、そして創意工夫の大切さを知りました。今年、アリーンとジョアンとの待ち合わせのため、ションガルー橋に向かって自転車を漕ぎながら、キャサリンはビートルズに会うという夢を叶えると誓いました。
3 ビートルズに一歩近づいた
(1)ボランティア・ファン・スタッフの一員になった

キャサリンは、すでに大きな前進を遂げていました。夕方のラジオ放送で、リトルロックのAMラジオ局のDJがジョージ・ハリスンの姉であるルイーズ・コールドウェルと話しているのを聞いていたのです。以前にもご紹介しましたが、ジョージの姉のルイーズは、自分が住んでいるアメリカでビートルズのPR活動を盛んに行っていました。
その夜、ルイーズはリヴァプール出身の仲間たちを宣伝するために10代のボランティアが必要だと真剣に語りました。実際、ルイーズは協力を希望する人が手紙を書いて登録できる住所を教えてくれました。
その翌日、キャサリンは「親愛なるコールドウェル夫人」に丁寧に手紙を書き、自己紹介して封筒の宛名書き、手紙の配布、その他必要なことは何でもボランティアすると申し出ました。一週間余りで彼女は、ビートルズのボランティア・ファン・スタッフの一員となったのです。
(2)歯車が回り始めた

ある日の午後、ルイーズからのメモに電話番号と「キャサリンに電話して」という依頼が書かれていたので、キャサリンはジョージの姉と話すために地元の公衆電話ボックスへ駆け込みました。興奮した会話の中で、キャサリンは1965年にダラスでビートルズが再びコンサートを開く可能性について尋ねました。残念ながら、ルイーズはビートルズがダラスに戻る予定はないと言いましたが、8月下旬にヒューストンでコンサートを開くという案については検討中だと打ち明けました。
たちまち、幸運の歯車が回り始めました。キャサリンは一生懸命アルバイトをしてお金を稼ぎ、16歳の少女にとってはちょっとした財産を得ました。これでヒューストンへの旅費と食費は調達できました。
4 いよいよビートルズに会いに
(1)父親の承諾を得た
「パパ」と、ある晩、夕食後すぐに彼女は口ごもりながら言いました。「この夏、ヒューストンにビートルズを見に行ってもいい? ベビーシッターをしていたの。それに庭の草刈りもしていたの。だから、もし許してくれるなら、自分のお金で行くわ。アリーンも行くの…お母さんのグレイシーさんも一緒に行くわ。みんなでボージャーシティからバスに乗って…」
意外にも父親は「まあ、いいだろう」とあっさり承諾してくれました。彼女が一生懸命アルバイトで必要な費用を稼いだことと、一人ではなく友達とその母親も一緒だということで安心したのでしょう。
(2)プレスパスを手に入れた!
1965年8月19日木曜日の早朝、キャサリンは予算の許す限り、できるだけビジネスっぽい服装をしました。もちろん、プロの記者らしく見せるためです。数週間前、アリーンとキャサリンはスプリングヒル・プレスに手紙を書いて、ヒューストンでビートルズを観るチケットを持っていること、そしてこの特別なイヴェントを新聞社で取材したいことを伝えていました。手紙には、必要なのは公式のプレスパス2枚だけと書かれていました。
驚いたことに、スプリングヒル・プレスは快く引き受けてくれました。新聞社はすぐに返事をくれて、「ザ・ビートルズ・イン・ヒューストン」の彼女たちのレポートを楽しみにしているとのことでした。そして、分厚い封筒の中には、プレスパスが2枚きちんと入っていました。ファンに公式のプレスパスが与えられることはまずありません。いかにも自由の国であるアメリカらしいですね。
5 いよいよ記者会見場へ
(1)ヒューストンへ到着した

ルイジアナ州ボージャーシティからヒューストンまでグレイハウンドバスに揺られ、キャサリンとアリーンは学生記者として男子生徒の記者会見に出席することになっていました。キャサリンはあらゆることを想像しました。匂いのする混み合った部屋、タバコの煙、質問の叫び声、そして正真正銘の新聞に初めて掲載される記事のために、必死に聞き耳を立てて膨大なメモを取ることなどです。
この素晴らしい機会は、5ドルのコンサートチケットがロビー階の「視界が遮られる」場所にあるという事実をほぼ帳消しにしてくれるとキャサリンは思いました。少女たちは夜の公演ではビートルズをほとんど見られないかもしれませんが、記者会見ではジョン、ポール、ジョージ、リンゴがすぐそばにいるはずです。
ビートルズとその仲間たちは、18階全体を貸切っているとキャサリンは聞いていました。キャサリンとアイリーンは、少年たちが自分たちを見下ろしているかもしれない窓を探して首を伸ばし、厳しい8月の太陽を目を細めて見つめました。
(2)特別枠ではなかった
会場のロビーは人でごった返しており、会議室のドアは固く閉ざされていました。「有名人」たちが、ファブ・フォーが開廷する部屋に押し入ろうとしていました。正規のプレスパスを持っていたにもかかわらず、二人の少女たちは入れてもらえませんでした。彼女たちは、他の記者たちとは別枠で記者会見できるわけではなかったのです。
ベテランジャーナリスト、熱心なフリーランサー、そして写真家のためにドアが開いたり閉まったりする中、キャサリンは部屋の前方にブライアン・エプスタインの姿を見つけました。そして次にドアが勢いよく開くと、メンバーは一段高いステージに座っていました。
6 インタヴューはできなかったが記者会見場には入れた

記者会見のやり取りを書き起こした文書
この日の午後、合同記者会見はキャサリンとアリーンにとって不利に働きました。満員の部屋に招待された人数が多すぎて、10代の若者は一人もいませんでした。どんなに正式なプレスパスを持っていたとしても、二人の少女はエリート層の中には入れてもらえなかったのです。
しかし、最後にもう一度ドアが開いた時、キャサリンはアリーンの手を掴み、引っ張りました。二人は誰にも許可を求めることなく、部屋へと押し入りました。そして、ルイジアナ州ションガルー出身の若い記者たちは、後ろの壁に背中をぴったりとつけて立ち、人生最大のイヴェントに参加しました。
高鳴る心臓と大きく見開いた目で、彼女たちは、1965年のヒューストンにおけるビートルズの記者会見の世界にすっかり浸かっていました。インタヴューこそできなかったものの、彼女たちにとっては一生の思い出となったでしょう。しかし、彼女たちにはティーンエイジャーの代表として特別枠で記者会見できる機会を設けてあげて欲しかったですね。そうすれば、ビートルズにもっとも近いティーンエイジャーならではの質問ができたかもしれません。
(参照文献)カルチャー・ソナー
(続く)
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