★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(193)EMIは、ビートルズ・サウンドの低音の一部をカットし、音量を下げていた!

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1 ベースとドラムに光を当てた

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(13) Twitter

ジェフ・エメリックは、「私は、昔からずっとベースとドラムが好きなんだ。」と語りました。その言葉を裏付けるように、彼がレコードとして世に送り出したドラムとベースのサウンドは、何世代にも渡ってミュージシャンにモチベーションを与えてきました。「縁の下の力持ち」的なこれらの楽器に脚光を浴びさせたのは、ポピュラー音楽界ではおそらく彼が初めてではないでしょうか?

彼の革新的なレコーディング・テクニックとしては、オートマティック・ダブル・トラッキングや、ギター・ソロの逆回転やループ、そして、ジョン独特の深いエコーの掛かったヴォーカルのスピードをリアルタイムで調整したことなどが挙げられます。

 

2 自身最高のパフォーマンス

beatles 1967 - Google Search

ところで、エメリック自身は、ビートルズとの仕事における彼の最高のパフォーマンスは「A Day In The Life」だと語っています。

「オーケストラをあの曲に挿入したあの夜に、モノクロだった世界がカラーに変わった。」それは、世界の音楽史上に残る革命が起きた歴史的な瞬間でした。ビートルズジョージ・マーティンらとともに作り上げ、彼らがドアを開けた瞬間、モノクロの世界が一気に極彩色のカラーに変わったのです。喜びもひとしおだったでしょう。 

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彼は、アルバム「Sgt. Pepper’s〜」や「Abbey Road」を制作した功績によりグラミー賞を獲得しました。

エメリックは、ビートルズの解散後もポール・マッカートニー&ザ・ウィングスのアルバム「Band On The Run」の制作も担当し、バッド・フィンガー、チープ・トリックなどのアーティストのレコーディングも手がけました。

3 エメリックの大抜擢

(1)基本はノーマン・スミスから

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ここでエメリック自身に語ってもらいましょう。これは、2016年3月3日に受けたインタヴューに応えたものです。

「私は、ノーマン・スミスからレコーディング・テクニックの基本を徹底的に教えてもらった。これは、忘れられない貴重な体験だった。」

「私は、彼の助手として働きながら、マスタリングやレコード・カッティングのテクニックを学んだ。あの頃は、それらのテクニックを知らないと、正確にマスター・テープを制作できなかったからだ。」

「もちろん、低音を強調し過ぎたり、レコーディング中にサウンドを段階的に調整できなかったりしたら問題だ。」

(2)大抜擢に本人も周囲も驚愕した

George Martin, Paul McCartney, George Harrison and John Lennon during Sgt. Pepper's album recording sessions, 1967

「あの頃は、40歳を過ぎなければプロデューサーやエンジニアになれなかった。そんなシステムだったんだ。もちろん、ビートルズが活躍し始めると、そういったシステムはどんどん変わっていった。」

「ノーマンは、プロデューサーになりたかったんだ。しかし、同時にエンジニアも続けたいとEMIに申し入れたが拒否された。それで、私にその役目が回ってきた。」

「EMIは、私のビートルズのセッションでのセカンド・エンジニアとしての仕事ぶりを見ていて、もうエンジニアを任せても良いと判断したんだね。それと、ジョージ・マーティンと上手くやっていたことも評価された。」

「私は、まだ20歳の青二才だったから、この大抜擢に周囲は驚愕したよ。あの頃は、セカンド・エンジニアやテープ・オペレーターを若手が担当し、チーフ・エンジニアは、40歳を過ぎた人が担当するというのが常識だったからね。」

「20歳と40歳の世代間のギャップは、マスタリングからレコーディングまで、すべての面で存在した。しかし、EMIは、ノーマンがもうエンジニアを辞めたいと思っているのを知っていたから、彼の後継者を探していたんだ。それで、私が抜擢された。」

 

4 当時のレコーディング・テクニック

(1)サウンドの進歩にシステムが追い付かなかった

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「最初は怖かったよ。あの頃は、マルチトラックさえ、まだ全てのセッションでは使われていなかったんだ。」

「巨大なオーケストラもソロ歌手も、全てステレオに直接レコーディングしなければならなかった。ミキシング・コンソールは、入力側が8個、出力側が4個しかなかった。だから、今、自分が何をやっているか、ちゃんと理解しておかないといけなかった。」

「その当時、将来、オーケストラをスタジオでレコーディングするだろうなんて、誰も予想してなかった。誰かがそんなことをやろうとしない限りはね。責任はとんでもないほど重かった。」

ジョージ・マーティンビートルズに言ったんだ。『ノーマンは去ろうとしている。私は、これからジェフが独り立ちできるよう、サポートをしていく』とね。」

(2)アメリカのサウンドを羨望の眼差しで見ていた

「私のエンジニアとしてのスタートは、マスタリングだった。そして、我々は、いつもアメリカのレコードを聴いて、どうして彼らは、こんなサウンドを出せるんだろうと不思議に思っていた。我々は、EMIの機材しか使わせてもらえず、他の機材を使うなどもってのほかだった。もし、アルテックのコンプレッサーを数台使えていればなと思うよ。」

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エメリックが当時使用していたのは、「フェアチャイルド660」というコンプレッサーですが(写真は670でステレオ用)、これも当時、EMIが導入した最新鋭の機材であり、決してアルテックと比較して見劣りするようなものではなかったはずです。何しろ、彼がこれを自在に使いこなしてビートルズサウンドを作り上げたんですから。しかし、それでも彼としては、不満足だったんでしょうね。

彼が頭に思い描いていたのは、おそらく「アルテック436B」のことだろうと思います。これも名器の誉れが高い機種ですが、確かEMIは、1958年に数台導入していたはずなんですがね。その辺りは、彼の記憶違いなのかどうかはっきりしません。

「タムラ(後のモータウン)のレコードを聴く度に、どうやったらこんなサウンドが出せるのか不思議でしかたなかった。どれもこれも低音が素晴らしかった。音楽を職業としているプロとしては歯がゆかったよ。誰もそんなことを教えてくれないから、その答えは、我々が自分で見つけるしかなかったんだ。」

アメリカのレコードの低音、音量、音圧、ありとあらゆるものが我々を魅了した。確実だったのは、我々は、彼らには到底かなわないということだった。」

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当時、アメリカは、レコーディング・テクニックの面においても最先端を走っていました。やはり、世界的なアーティストが次々と登場すると、それに引っ張られるようにレコーディング・テクニックも向上していったのでしょう。もちろん、機材もそれに合わせて進歩していきました。

 

5 ビートルズサウンドをレコードにし切れていなかった

(1)低音の一部をカットしていた!

「我々の出せる低音には限界があった。初期のビートルズのある特定のシングル・レコードの原盤を作ると音飛びしたんだ。」

「25万枚をプレスしてはやり直すという作業を繰り返した。その後、ビートルズのシングルをイギリスでカットするときは、50サイクル以下の低音は全てカットするよう指示された。」

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これは驚きです。当時のEMIは、設備にもテクニックにも限界があったことは知っていましたが、まさか、ビートルズが出したサウンドを拾い切れず、低音の一部がカットされていたとは。これは大きな損失です。ただ、「イギリスでカットするときは」と言ってますから、アメリカではそういう制約はなかったということになります。

また、ビートルズは、もうその頃からスタジオのレコーディング・テクニックを上回るサウンドを出していたということも分かります。彼らは、ヴェートーベンだけではなく、EMIのスタジオまでぶっ飛ばしていたんですね(笑)

楽曲や演奏がいかに素晴らしくても、ミキシングやマスタリングでそれを拾い切れなければ、宝物を捨てるようなものです。EMIの上層部がもっと早い次期にこの事実に気づいていれば、前期のビートルズサウンドは、さらに素晴らしいものになっていたかもしれません。

それにしても「ある特定のシングル・レコード」とはどれなんでしょう?気になります。

 

(2)音量を下げていた!

我々は、ビートルズのレコーディングでは、他のどんなレコードよりも2〜2.5デシベル程度音量を下げなければならなかった。もちろん、それはばかげたことだが、そんな大量にレコードをプレスするなんてそれまではありえなかったんだ。だから、音飛びを防ぐためにそうせざるを得なかった。」

「私がチーフ・エンジニアになってから、ビートルズ、マネージャー、そして、ジョージ・マーティンと熱い議論を重ね、もっと音量を上げようということになった。」

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これも驚きですね。エメリックがチーフ・エンジニアになるまでは、EMIがビートルズのレコーディングしたサウンドの音量を下げていたとは。

レコーディングの知識をお持ちの方ならお分かりになると思いますが、「2〜2.5デシベル音量を下げる」なんて普通ではあり得ません。現代では、例え0.1デシベルでも音量を変えるだけで、サウンドの印象が大きく変わるといわれるほど繊細な作業です。

いかに50年以上前とはいえ、随分乱暴なことをしたものですが、レコードで音飛びしてしまっては元も子もありませんから、泣く泣くそうせざるを得なかったのです。

さて、エメリックのお話はまだ続きがあるのですが、ここで一旦他の話題に移ります。 

(参照文献)ProSoundWeb

(続く)

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