★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(204)ビートルズが永遠に失ってしまった楽曲

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ビートルズが公式にリリースした作品は213曲で、それら以外は、ビートルズが解散するまではお蔵入りとなっていました。公式にリリースされなかった楽曲は、海賊版で出回ったり、アンソロジー・シリーズなどで解散後にアップルから公式にリリースされたものもありました。また、完成したにもかかわらずレコーディングされなかった作品もありました。今回は主にそれらについてお話しします。

 

1 芸術作品には日の目を見なかったものがたくさんある

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この世の中は、音楽、絵画、文学などの芸術と呼ばれる作品で溢れていますが、すべての作品が公開されているわけではありません。作者が無名だったり、作品としての評価が今一つだったり、作者が何らかの理由であえて公表を避けたものもあります。

例えば、ショパンは、若い頃からすでに天才音楽家として名を馳せていましたが、そんな彼の死後70年も経ってから未発表だった作品が見つかりました。彼は、1834年にある作品を作曲し、友人にプレゼントしました。その後、その譜面は他人の手に渡り、個人が所蔵したまま長い間日の目を見なかったのです。それは、後に「前奏曲変イ長調(遺作)」と呼ばれることとなりました。

また、作者が未完成のままで放置してしまったものもあります。通常未完成なものは、廃棄されてしまったりするのですが、中にはそのまま残されたものもあります。有名なところではシューベルトの「未完成交響曲」があります。

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クラシックの作曲家で未完成の作品を持っている人はたくさんいますが、中でも一番有名なのがシューベルトの「未完成光響曲」です。この作品がなぜ未完成のままになったのかという点については、諸説があってはっきりしません。

ただ、未完成でありながら素晴らしい楽曲なので、今でも多くの人々に愛されています。

2 数十曲が幻と消えた!

(1)曲を録音できなかったための悲劇

The Fab Two.

モーツァルトの場合とは事情がちょっと違いますが、実はビートルズにも失われた楽曲があったのです。

2018年にポール・マッカートニーが、「Evening Standard」に明らかにしたところによると、彼とジョン・レノンは、作品を録音しておかなかったため、しばしば忘れてしまったそうです。彼によれば、ビートルズには、完成していながらも未発表となった曲が数十曲は存在していたとのことです。

1960年代に彼がジョンと共同で制作した曲は、しばしば次の日の朝には忘れられていたことがありました。今なら簡単に録音できますが、その当時は大きなオープンリール式のテープデッキしかありませんでしたから、セットするだけでも大変でした。

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彼は、こう語っています。「あの当時と状況はかなり変わった。今では作曲のプロセスを変えるレコーディング機器を誰もが持っている。ジョンと私が最初に曲を書き始めた時には、そんな便利なものはなかったんだ。」

「そして、せっかく作った曲を忘れてしまうリスクが常にあった。次の日の朝、それを思い出すことができなかったとしたら、それはもう失われたのだ。我々は、作品を覚えていなければならなかった。忘れてしまったら最後、もう二度と思い出すことはできないからだ。このようにして失われた曲が、数十曲はあったはずだ。」

「我々は、テープレコーダーを持っていなかった。今なら、曲を思いついたらそれをすぐ携帯電話に録音できる。そうして曲の形を作り、すべてを完成させ、それをすべて覚えて、かなり早くレコーディングできる。デバイスに曲を記録できるので、私は、レコーディングしたいと思う何百万もの素材を持っている。」

(2)ビートルズは譜面の読み書きができなかった

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以前にもお話ししましたが、ビートルズは、全員譜面の読み書きができませんでした。譜面が書ければ、曲想が思い浮かんだらすぐに五線譜にペンを走らせて書き留めることができましたが、残念なことに彼らはそれができなかったのです。譜面が読めなくても歌詞とコードは書けましたが、流石にメロディーは無理でした。

何とももったいないことをしましたね。せめて、カセットテープとレコーダーがあれば、思いついた曲をすぐに記録しておくことができたでしょう。その失われた数十曲の中には、とんでもない名曲があったかもしれないと思うといかにも残念です。

 

3 ポールの悩み

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話が脱線しますが「自分が作った曲を忘れてしまう」というコンポーザーにとって「あるある」のお話からのスピンオフです。ポールは、ビートルズが非常に難しいコードを持つ曲をあまりにも多く持っていたことを明らかにしました。

60分のインタヴューの中で、彼はこう語っています。「私がライヴをする時は、ビートルズ時代の曲や、ウィングス時代の曲を数多く聴いて、それらの中からどれを演奏すればいいかを決める。そして、それらをもう一度覚え直さなければならないんだ。」

「そう。多すぎるんだよ。歌詞、メロディーがあまりにもたくさんある。それらは、とても難しいんだ。つまり、それらがすべて3コードだけでできているわけじゃないということさ。」

自分で作った曲なのですが、あまりにも多すぎて全部を覚えていられないんですね(^_^;)ビートルズも前期の曲はまだしも、後期になるとますます複雑になりましたし。

3コードというのは、小学校の音楽の授業でも習いますが、音楽は、基本的に三つの和音(コード)から成り立っています。ハ長調なら「ドミソ(C)ドファラ(F)シレソ(G)」ですね。先生がピアノで弾いてくれるあれです。

この3コードだけで出来上がっている楽曲もたくさんあります。ロックンロールなどは多くがそうですね。有名なところでは、プレスリーの「Hound Dog」があります。これは、C、F、Gだけで作られています。

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ギター初心者でもこれさえクリアできれば、右利きの場合、左手で弦を押さえて右手でピックか指でひたすら弦をかき鳴らす「コードストローク」で弾き語りをすることができます。もちろん、他人に聴かせられるレヴェルかどうかは本人の腕次第ですが(笑)

でも、人間の耳は複雑にできていて、他のコードも使わないとリスナーが聴いて満足できる楽曲にはなりません。だから、多くのコンポーザーは、苦労してコードを選択しています。同じCをルート(根音)にしたコードでも種類が沢山あり、その中のどれを使うかによって曲から受ける印象が変わってしまいますから。

 

4 ジョンが恐れていたこと

Beatles Pictures

忘れるといえば、ポールは、ジョンが人々に自分のことが忘れ去られてしまうのではないかと恐れ、それについて彼が語ったことを思い出しました。「彼は、突然奇妙なことを言い出した。『みんなが、僕のことを覚えていてくれるだろうかとても心配なんだ。』」

ビートルズ自身もたとえ自分たちが売れたとしても、そんなに人気は長くは続かないだろうと考えていました。ミュージシャンなんてもてはやされるのは、売れている間だけで、売れなくなってしまえば誰からも見向きもされなくなると思っていたのです。

ポピュラーミュージックには流行があり、すたれてしまえば忘れ去られてしまう悲しい宿命を持っています。それを乗り越えて、長く人々の記憶に残る名曲となると限られてきますね。

それで、ポールは、ジョンにこう言いました。「ジョン、僕の言うことを聞いて、僕を見るんだ。君は、偉大な人々の中の一人として、人々に記憶されようとしているんだよ。」

How the Beatles Created Self-Conscious Stardom

おそらく、ポールが心配するほど、ジョンは、色んなことで悩んで精神的に不安定な状態に陥ったことがあったのでしょう。彼は、強気な言動とは裏腹に、4人の中でも一番ナイーヴな人でしたから。それに彼は、ビートルズのリーダーであり、彼らに対する批判も一手に引き受けていましたから、悩みもそれだけ深かったのだと思います。

逆に、ポールにも同じようなことがあって、ジョンから励まされたかもしれませんけどね。でも、彼は、楽天家ですから、ジョンに比べるとそのような状態になることは少なかったのではないかと思います。こんなことを言うと「それじゃあ、まるで私がバカみたいじゃないか💢」って、ポールに怒られるかもしれませんが(^_^;) 

 

(参照文献)NME, Evening Standard

(続く)

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