★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

名曲のいくつかにはそれぞれ仮題が付けられていた(413)

1  曲名も重要

(1)いい言葉が思いつかない

ビートルズに限らず作詞家なら誰でもそうだと思いますが、ある曲の歌詞が1回で完結することはめったにありません。もしあるとすれば、それは作詞家に神が降臨した瞬間でしょう。

普通は、一つの行あるいは一つの言葉ですら、どうするかものすごく苦しみます。しかも、それがリスナーに幅広く受け入れられるクオリティーを有するものとなるには、才能に加えてかなりの努力が必要です。

そんな時のヒントが2021年に公開された映画「GET BACK」にありました。ジョンは、歌詞が出てこない時は、とりあえずなんでもいいから思いついた言葉を仮に入れておくのです。そうして暫く寝かせておいて、いい言葉が浮かんだら置き換えるというやり方を取っていました。これはこれで合理的なやり方ですね。

(2)曲名を付けるのも難しい

「ピッタリとした言葉が浮かばない」という現象は、歌詞に限らず曲名にもあります。曲名は、曲のイメージを象徴するという意味で非常に重要であり、キャッチーなものであれば聴いてみようという気になります。それに歌詞と違ってあまり長い曲名は、覚えられにくいので好まれません。できるだけ簡潔であることが求められます。

それだけにいい曲名を付けるというのは、ある意味で歌詞を書くのと同じ位難しいかもしれません。なかなかいい曲名を思いつかない時は、もとりあえず仮の曲名(仮題)を付けておくことがよくあります。ビートルズの楽曲の中にも仮の曲名がつけられていた作品がいくつかありますが、今回はそれらをご紹介します。

 

 

2 I Saw Her Standing There

(1)始めは「Seventeen」だった

1963年12月18日、BBCでライヴ・レコーディングするビートルズ

レノン=マッカートニーの初期の傑作である「I Saw Her Standing There」の仮題は「Seventeen」であり、ポールが当時交際していたガールフレンドの年齢を指したものでした。我々は、既にオリジナルの曲名を知ってしまっているので、オリジナルの方が良いと思ってしまいます。

しかし、先入観を排除して改めて考えてみると、仮の曲名でもそう悪くはないことに気づきます。ただ、これでは最終的に決定した曲名を見た瞬間に多くの人が抱くであろう、この曲が持っている恋が芽生える火花が散るようなゾクゾクする瞬間が、頭に思い浮かぶことはなかったでしょう。

(2)曲名に曲の内容を凝縮した

仮題に比べると「I Saw Her Standing There」は、ポールが何を言いたいのか、もう少し深く掘り下げさせるような、よりリスナーの興味をそそる内容になっています。この作品を作曲した当初から、彼は、作品に適切な曲名をつけることがいかに重要であるかを理解していました。

彼は、こう語っています。「正しい曲名でリスナーを惹きつけることができれば、半分は成功したようなものだ。曲名を『I'm Heading Out to Party With You Babe』とすれば人々は納得するだろう。でも、『Eight Days a Week』という曲名であれば、人々はもう少し興味をそそられるだろう」。

ポールがいかに曲名を重視していたかが分かる言葉です。確かに、「Eight Days a Week」は、インパクトのある曲名です。1週間は7日しかないのに、8日もあるなんて常識ではありえません。でも、主人公が1週間が8日もある位、毎日君のことを愛していると歌えばずっと説得力が増します。

 

 

3 Yesterday

(1)始めは「Scrambled Eggs」だった

Paul McCartney conta que “Yesterday” seria música eletrônica dos Beatles

これは有名な話ですね。今では「Yesterday」という曲名が広く定着していますが、ポールは、当初なかなかいい曲名が浮かばず、「Scrambled Eggs」という仮題を付けていました。ポールが目覚めた時にこの曲のアイデアが浮かび、彼は、急いでそれを書き留めました。メロディーもコードもできたのですが、歌詞がすぐには浮かびませんでした。

(2)歌詞が浮かばなかった

「曲があってコードもある。そして、それを記憶に定着させるために、ダミーの言葉で埋めてみた。『スクランブルエッグ、オー・マイ・ベイビー、君の足が好きだ、スクランブルエッグ』とね。ダミーの歌詞を使うことは、めったにないことだったんだ」ジョンは、いい歌詞が思い浮かばない時によくダミーの歌詞を使ったようですが、ポールは、それほどでもなかったみたいですね。

ポールは、曲のイメージにピッタリ当てはまる歌詞が思い浮かぶまで置いておくことにして「スクランブル・エッグ」と仮題を付けて棚上げにしておきました。この曲がなかなか完成しないので、1965年の映画「Help!」でビートルズと一緒に仕事をしていた監督リチャード・レスターやメンバーをしばしば苛立たせたと回顧しています。

「いい曲なんだから早くいい歌詞を作れよ、ポール」と周囲の人々から急かされている姿が目に浮かびますね。この曲は、彼が一人で制作しましたから、彼がいい歌詞を思い付かない限り完成しなかったのです。

(3)ポルトガルで完成した

しかし、ポールは、「Help!」制作の休暇中にポルトガル南部の海岸沿いの街、アルブフェイラへ向かって車で長時間移動している間に、この曲をなんとか完成させたと語っています。「メロディーを残したかったから、それに歌詞を合わせなければいけないと思ったんだ。『スクランブルエッグ』から『ダダダ』って感じで『イエス・ター・デイ』や『サッド・ン・リー』なんて言葉が浮かんできた。

そして、『人は悲しい歌が好きなんだ』と思ったことも『僕だって悲しい歌が好きだ』と思ったことも覚えている。アルブフェイラに着くまでに歌詞は完成していた。」

ポールほどの天才でも、この曲を完成させるのにこれだけ苦労したんですね。しかし、彼が諦めずに頑張って作ってくれたおかげで、歴史に残る名曲が誕生しました。さすがにどんなにメロディーやコードが素晴らしくても、曲名が「スクランブルエッグ」じゃ興ざめですよ。つくづく「イエスタデイ」という言葉を思いついてくれて良かったと思います。

 

 

4 他の名曲の曲名も

(1)Tomorrow Never Knows

これも有名なエピソードですが、リンゴがつぶやいた意味不明な言葉を聞いたジョンが面白がって名づけた曲名です。リンゴは「明日の事は分からない」と言いたかったのですが、主語が「Tomorrow」になっているので、意味が通じない文章になっています。

当初からこの曲名ではなく、「MarkⅠ」という仮題が付けられていました。曲ができた当時、ジョンは、その曲のタイトルを思い付かなかったため、テープボックスにこのラベルが貼られていたのです。つまり、仮題というよりは単にテープを他の曲と区別するためにラベルに仮題が貼られていただけだったのです。

その後、彼は、「The Void」というタイトルを思い付きましたが、それをローディーのニール・アスピナルがグループの月刊ファン誌を通じて世界中に漏らしてしまったので、それを使うことに不安を覚え取りやめにしました。「The Void」は「空間」という意味ですが、これでは曲の神秘的なイメージが伝わりません。「Tomorrow Never Knows」は、まさにこの曲の幻想的でサイケデリックな雰囲気を象徴するいい曲名だと思います。

彼らが作った曲の中には、メンバーの間でのジョークで付けた曲名もありました。「With a Little Help From My Friends」は「Badfinger Boogie」という仮題が付けられていました。これは、ジョンがこの曲の制作中に人差し指を負傷したため、曲のピアノパートを演奏するときに中指に頼らざるを得なくなったことから付けられたのです。後にこの仮題は、ビートルズが設立したアップルコア社からデビューした「Badfinger」のバンド名となりました。

(2)Eleanor Rigby

リヴァプールに作られたエリナー・リグビーの像

ポールは、当初主人公の女性に「Miss Daisy Hawkins」という名前を付けていましたが、今一つしっくりこないと思っていました。フォークシンガーのドノヴァンは、「ポールは、まだ歌詞がうまくできていなかった」と語っています。

ポールは、映画「Help!」で女優のエレノア・ブロンと共演したことから、「Eleanor」という名前を思いついたとずっと記憶していました。しかし、ソングライターのライオネル・バートは、ある日二人が歩いていたウィンブルドン・コモン近くの墓地にあった墓石の墓標からとったのだと確信しています。「その墓石に刻まれていた名前は、『Eleanor Bygraves』だった。彼は、私のオフィスに戻って、私のクラヴィコードでその曲を弾き始めたんだ」ポールの記憶とバートの証言のどちらが正しいのかは分かりません。

ポールが「Rigby」という名前を思い付いたのは、1966年1月、ブリストルで舞台に出演していたガールフレンドであり女優のジェーン・アッシャーを訪ねた時でした。彼は、彼女を待っている間に、キングストリートという道路の反対側の22番地にあった「Rigby & Evens Ltd, Wine & Spirit Shippers」という会社の前を通り過ぎた時に、このました。これで、彼は、やっと探していた姓を手に入れることができたのです。

ポールの手書きの「Eleanor Rigby」の歌詞

(参照文献)ファーアウト、インサイダー、ビートルズ・ソングス・ストーリー

 

 

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