★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

とても面白いビートルズがつけた仮題の世界(414)

1 working title(仮題)とは?

(1)作業のために必要だった

作曲中のジョンとポール

前回は、ビートルズの作品の中で正式な曲名が決まる前に、仮題がつけられていた作品をいくつかご紹介しました。そんな作品は他にも数多くあり、仮題が付けられ、あるいは正式な曲名が決まった経緯などを調べてみるとなかなか面白いので、この機会にそれらもご紹介します。仮題は、英語で「working title」と呼びます。workには「作業」という意味があるので、「working」とは作品を制作中ということになるのでしょう。

ビートルズといえども人間ですから、素晴らしい曲名をすぐに思いついたわけではありません。でも、共同で作曲やレコーディングなどの作業をする時に、何らかの曲名をつけておかないと、作業を開始あるいは再開しようとしても、どの曲について作業するのか、メンバーやレコーディング関係者がわからなくなってしまいます。それを防ぐために、彼らは、好んで仮題をつけました。こうしておけば、たとえ作業を中断してもすぐに作業を開始できますから。

(2)ジョージは曲名作りが苦手だった?

これらの仮題は、最終的に決定した曲名と密接に関連していることもあります。しかし、その中でもいくつかは、仮題が正式な曲名とはかけ離れたものだったことも珍しくありませんでした。中にはその仮題すらない曲もあり、それらは「Untitled(無題)」とされました。特に、ジョージの曲でよく使われました。

このことから察すると、ジョージは、曲名を作るのが苦手だったようですね。いい曲名が思い浮かばない時にこそ仮題を付けるのですが、それすらなかなか思い付かなかったようです。でも、「Untitled」じゃあわからないですよね。どうせ仮題なんだから適当でいいじゃないか、と考えるのは素人の浅はかさでしょうか。

 

 

2 曲名当てクイズ~仮題から正式な曲名を当てる

The iconic photos of Harry Benson, who captured the Beatles like no other

ここでは、ビートルズがスタジオで使用した仮題を、1963年から1969年の間に使用された順番にリストアップしています。さて、このブログでは珍しいことですが、ここでクイズを出題します。

下記の仮題からわかる最終的にリリースされた作品名は何でしょう?知識がなければわからない問題ですが、似ている曲名であれば想像がつくと思います。答えを見る前に少し考えてみてください。前回ご紹介した「Sevente→I Saw Her Standing There」「Scrambled Eggs→Yesterday」「Mark I→Tomorrow Never Knows」「Miss Daisy Hawkins→Eleanor Rigby」は除きます。

こうしてみると、意外に数多くの曲に仮題が付けられていたことがわかります。

 

 

(仮題一覧)

Thank You Little Girl

Get You In The End

Auntie Jin’s Theme

That’s A Nice Hat

This Bird Has Flown

Won’t Be There With You

Granny Smith

You Don’t Get Me

Why Did It Die?

Laxton’s Superb

I Don’t Know

A Good Day’s Sunshine

He Said He Said,Untitled

It’s Not Too Bad

Untitled

In The Life Of…

Not Known

Untitled

Too Much

Aerial Tour Instrumental

Hello Hello

Untitled

Revolution

Ringo’s Tune (Untitled)

This Is Some Friendly

Untitled

Untitled

Happiness Is A Warm Gun In Your Hand

It’s Been A Long Long Long Time

Everyone Had A Hard Year

All I Want Is You

I Want You

Bathroom Window

On Our Way Home

George’s Blues (Because You’re Sweet And Lovely)

The Ballad Of John And Yoko (They’re Gonna Crucify Me)

Oh Darling (I’ll Never Do You No Harm)

Golden Slumbers

Ending’

Here Comes The Sun-King

The Long One/Huge Melody

3 仮題がどのようにして正式な曲名に変わったのか?

(1)Thank You Little Girl

「Thank You Little Girl」とエンジニアがメモしたレコーディング・シート

いかがでしょうか?いくつかは「ああ、あれだな」とわかりましたよね。もし全問正解したとしたら、相当コアなファンですね。比較的仮題から正式な曲名が想像しやすいものもあれば、全くかけ離れたものもあります。全部はとてもムリなので、今回は一部だけご紹介します。

Thank You Little Girl→Thank You Girlは、一つの単語があるかないかの違いだけなので、作品を知っていれば正解できたと思います。この曲のレコーディングを開始した段階では「Thank You Little Girl」という仮題が付けられていたとされることもあります。しかし、「little」という単語は、2番の歌詞の中で1回しか出てきません。

このタイトルが仮題であったとする根拠となる資料は、レコーディングした日にレコーディング・シートにエンジニアが手書きで書き込んだのがこのタイトルだからというものです。でも、そうであるからこそ、かえってこの仮題が実際にグループ内で使用されたものかどうかは疑わしくなります。あくまでもエンジニアが他の曲と区別するために、自分の作業の一環で書き込んだ可能性が高いからです。

この曲の歌詞の中で「thank you girl」というフレーズが9回も繰り返されるのに対し、「little」という単語は1回しか使われていないので、ビートルズが当初からこの仮題を付けていたとは考えにくいのです。これは仮題ではなく、エンジニアがレコーディング・シートに間違えて記録してしまったと考えるのが自然でしょう。

(2)Get You In The End

The Beatles helping themselves to drinks in hospitality #21535368

1963年7月1日、ビートルズは、4枚目のシングルA面となる「She Loves You」をレコーディングしました。その後のセッションで、B面となるこの曲をレコーディングしたのですが、その段階では「Get You In The End」という曲名でした。

1963年7月1日、ビートルズは、4枚目のシングルA面となる「She Loves You」をレコーディングしました。その後のセッションで、B面となるこの曲をレコーディングしたのですが、その段階では「Get You In The End」という曲名でした。その3日後の7月4日、ジョージ・マーティンジェフ・エメリックがモノラル・ミックスを行いましたが、この時点でも曲名はまだそのままでした。

ですから、7月4日から8月23日にイギリスでシングルが発売されるまでの間に、「I'll Get You」に変更したということになります。変更した理由は、ちょっとここでは書きづらいのですが、後年色々と噂されたようにいささか問題のある表現だったからのようです。イタズラ好きの彼らのことですから、このまま出してやろうとしたところ、マーティンかEMIが気づいて止めさせたのではないでしょうか?

(3)Auntie Gin’s Theme

1958年、ジンの息子の結婚披露宴で演奏した3人

これは、ポールの作品です。この曲の作曲時期についてはよくわからないところがあります。というのも、ポールが以前から家族の集まりでこの曲のインストゥルメンタル・ヴァージョン、つまり歌詞のない曲をピアノで演奏していたことが知られていたからです。

当時、彼のおばにあたるジンがこの曲をかなり気に入っていたことから、ポールは、この曲を「アンティ・ジンのテーマ(ジンおばさんのテーマ)」と呼んでいました。彼女の名前は、ポールがウィングス時代の1976年にヒットさせた作品である「Let 'Em In」の中で「アンティ・ジン」として登場したことで一躍有名になりました。この事実は、ジョージ・マーティンも知っていて、アメリカでこの曲名を使ったオーケストラ・ヴァージョンをアルバム「George Martin And His Orchestra Play Help!」として発表しています。

(4)That’s A Nice Hat

www.youtube.com

この作品のオリジナルはジョンのアイデアで、ポールが協力して制作しました。ビートルズは、この曲に「That's A Nice Hat」という課題をつけましたが、これは歌詞とはまったく関係がありませんから、知識がなければ正式な曲名はわかりません。

余談ですが、ジョンは、この曲をとても嫌っていました。彼は、こう語っています。「『It's Only Love』は僕の曲だ。最低の曲だとずっと思っていた。歌詞もひどいものだった。あの曲はずっと嫌いだったんだ。*1

マーティンは、この曲も上記のアルバムに収録しました。結局、アルバムにあえて仮題で収録されたのは「Auntie Gin's Theme」「That's A Nice Hat」「Scrambled Egg」の3曲だけです。他の曲は、正式な曲名をそのまま使っているのに、なぜこれらの曲だけを仮題にしたのかはわかりません。

長くなるのでこの続きは次回で。

(参照文献)ビデオミュージック.EUビートルズ・ミュージック・ヒストリー

 

 

 

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*1:「オール・ウィ・アー・セイイング」デヴィッド・シェフ