★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

8トラックレコーダーとモーグシンセサイザーを導入(224)

「beatles abbey road studio 1969 photoshoot」の画像検索結果

1 既に完成していた作品も数多くあった

ビートルズは、1969年1月の「Let It Be」セッションで、すでにアビイ・ロードの収録曲の12曲のアーリーテイクをレコーディングしていたんです。この時点でまだ演奏されていなかったのは、「Come Together」「Here Comes The Sun」「Because」「You Never Give Me Your Money」「The End」「Her Majesty」でした。

他の作品は、1969年より前に既に制作されていました。ビートルズは、インドのマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの下での超越瞑想の修行から帰国し、1968年5月にジョージ・ハリスンの別荘で「Mean Mr Mustard」「Polythene Pam」のデモをレコーディングしました。

「Polythene Pam」は、僅か1分少しの小品ですが、パンチの効いたジョンのヴォーカルとアコギの力強いストロークが印象的です。

それだけに、メドレーではなく、Bメロとサビを加えて一つの独立した作品にしても良かったのではと、少しもったいない気がしてしまいます。ただ、メドレーの流れも絶妙なのでこれはこれで捨てがたいですが。


Polythene Pam (Remastered 2009)

ジョンは、こう語っています。「私が貢献したメドレーは、「Polythene Pam」「Sun King」「Mean Mr Mustard」だ。我々は、それらがある程度の形ができあがるまで演奏した。」B面はメドレーに近い形になっています。多くの人々から「このB面だけでも珠玉の名作だ。」と絶賛されています。

「「Mean Mr Mustard」の歌詞に「his sister Pam」って出てくるけど、元は「his sister Shirley」だったんだ。次の「Polythene Pam」と意味が繋がるように「Pam」に変えた。私がインドで書きためた下らない断片を曲にまとめただけさ。」

いずれにせよ、一曲だけだと作品とも呼べない未完成な断片でした。しかし、それらをつなぎ合わせることでメドレーにして一つの作品に仕上げ、最高傑作と呼ばれるアルバムを制作してしまったところは、流石(さすが)ビートルズと感嘆せざるを得ません。

 

2 レコーディングは順調に行われた

トゥイッケナム、アップルでのリハーサルとは異なり、「アビイ・ロード」にスタジオで公式にレコーディングされた最初の収録曲は、ジョンの「I Want You (She’s So Heavy)」でした。この作品は、ロンドンのトライデントスタジオで1969年2月22日に始まりましたが、この時点ではアルバムに収録するのか、シングルとしてリリースされるかどうかはハッキリしていませんでした。


I Want You (She's So Heavy)

セッションが進むにつれて、彼らは、シングルとしてリリースするために「Let It Be」セッションでレコーディングした「The Ballad Of John And Yoko」「Old Brown Shoe」「Get Back/Don't Let Me Down」のテープの編集とミキシング作業に加わりました。そして、1969年6月に休暇を取る前に「Something」「Oh! Darling」「Octopus's Garden」「You Never Give Me Your Money」をレコーディングしました。

休暇が明けて7月にビートルズが再集合した時、彼らは、レコーディングを完成させようと迅速に活動しました。EMIスタジオ2は、7月1日から8月29日までの間、14時30分~22時まで予約され、グループは、アルバムを制作しようと心血を注いだのです。

 

3 スタジオにベッドを持ち込んだ!

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ジョンは、7月1日にスコットランドで自分が運転して車で事故を起こし、けがをして入院したため、ビートルズは、7月9日まで彼抜きでレコーディングしました。もっとも、彼自身も最初からこの日にセッションを始めることは考えていませんでした。

同乗していたヨーコは、事故で重傷を負いましたが、その時ショーンを妊娠していたんです。そんな彼女の体調を心配したジョンは、デパートのハロッズに注文してダブルベッドをスタジオに持ち込み、セッション中でも彼女の考えを彼に伝えるために、マイクを天井から吊り下げました。

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ジョンとポールがヴォーカルをレコーディングしてますが、ここに写ってるのは、多分、ヨーコの足ですね。イヤイヤ、流石にこれは常軌を逸してますよ💦

スタジオは、病院じゃないんですから、医師や看護師はいませんし、必要な設備もありません。病院に入院していれば適切な治療を受けられますが、スタジオではどうしようもありません。ジョンもヨーコも何を考えていたんだろうと呆れますね。

他の3人も苦々しく思っていました。元々ビートルズは、スタジオに部外者を入れることはご法度だったのですが、それがまさかベッドまで持ち込んでマイクまでセットするなんて💦

 

4 初めての8トラック

アビイ・ロード」は、8トラック技術を駆使してレコーディングされたビートルズの最初のアルバムでした。この技術は柔軟性が高いため、アレンジや楽器の編成などを自由に変えることができました。正確に言うと「Hey Jude」の時にすでにトライデントスタジオで8トラックを導入していたのですが、それはリメイクに近いものだったので、本格的に活用したのは今回が初めてでした。

ポールは、こう語っています。「我々は、過去に8トラックを使ったことがなかった。ビートルズの作品は、全て2トラック、4トラックだった。「サージェント・ペパー~」は4トラックだった。「アビイ・ロード」では8トラックになっていたが、我々はそれが多すぎると思った。なんて贅沢なんだと思ったよ。」4車線の道路が一気に8車線に倍増したということですね。これで作業が一気に楽になりました。

8トラックレコーダーは、ミキシングマシンとセットで使用されました。ミキシングマシンとは複数の音声信号を電気的に加算、加工し出力する音響機器です。つまり、音を混ぜたり切り替えたりできるマシンということです。EMI TG12345という機種ですが、これが威力を発揮しました。 

5 モーグシンセサイザーの導入

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アビイ・ロードのもう一つの革新的なできごとは、モーグシンセサイザーの導入でしたビートルズは、アルバム中の4曲にこれを使用しました。「Maxwell's Silver Hammer」「I Want You (She's So Heavy)」「Here Comes The Sun」「Because」の各作品です。

ジョージは、新製品のモーグシンセサイザーを購入し、8月上旬にアビイ・ロードスタジオに持ち込みました。ちなみに昔は「ムーグ」と呼ばれていましたが、実際の発音は「モーグ」の方が近いので、今はそう表記されるようになっています。

月は英語で「moon」ですが、こちらは「ムーン」で正解ですね。固有名詞だからスペルと発音が違うのは仕方ないです。そういえば、ビートルズアメリカでコンサートを行った「シェアスタジアム」も、今では「シェイスタジアム」と表記されていますね。

彼はこう語っています。「アメリカで開発されたモーグシンセサイザーの話を初めて聞いた。開発者のモーグは、ただそれを開発しただけで、どう使いこなすかはユーザーにお任せだったから、私は、それをカスタマイズしなければならなかった。プラグの差込口が一杯あって、2つのキーボードがついていたんだけど、とにかくバカでかかったよ。」

「こいつを導入したのはいいけど、何とか使いこなさないといけなかった。取扱説明書なんてなかったし、あったとしても、おそらく数千ページの長さになっただろうね。モーグ本人もサウンドをどうやって出すのか、やり方を知っていたとは思えなかった。」

「技術的に詳細な使い方が分からなかったんだ。改めて「Here Comes The Sun」なんかを聴いてみると、それなりに使えてはいるけど、まだまだ使いこなせてはいなかったね。」

子どもがおもちゃを与えられた時のように、ジョージがシンセサイザーを興味津々でイジり回している姿が目に浮かびます。彼が語っているように使いこなすというレベルにまでは達していなかったようですが、大事なアルバムのレコーディングに使用できるにまでなったのですから大したものです。機械音痴のジョンではダメだったでしょうね(笑)

写真を見てもお化けみたいにバカでかい機械からたくさんのコードが繋がれているのが分かります。しかも、取扱説明書すらないんですよ? 私だったらチラッと見ただけで「こんなものを使えるかい!」と投げ出しちゃいます。パソコンもない時代によく使えたなと感心しますね(^_^;) 

 

(参照文献)THE BEATLES BIBLE

(続く) 

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