★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(203)ホワイト・アルバムに対するこれまでの見方を改めるべきかもしれない(まとめ)

1 これまで散々語られてきたが

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「モウソロソロ(ポール・マッカートニーが日本公演の最後に好んで使う日本語)」ホワイト・アルバムのシリーズも切り上げ時ですね(笑)

ジャイルズ・マーティンのインタヴューの続きです。

イアン・マクドナルドが1994年に出版した「ビートルズ・レコーディング・セッション」をはじめとして、多くの著作物が、レコーディング時におけるメンバー間の不協和音について記録しています。それらについてジャイルズは、こう語っています。

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「他人が書いたものについて、その理由や根拠を探るのは困難だ。しかし、注意しないといけないのは、書かれたことの半分あるいは4分の3は真実かもしれないし、それを分析した結果、半分が真実だと判明するかもしれない。」

「ポールがビートルズについて私に語ったり、全てのスタッフが書いたりしているが、ビートルズのことを知っているのは4人だけだし、彼らも覚えていない。私にできることは、ただ、残されたテープを聴いたり、読んだりすることだけだった。」

ジャイルズは、プロデューサーであり伝記作家ではありませんから、あくまでも音楽面からアプローチするだけです。音楽は、語られた言葉とは違い、ストレートに事実を伝えられるわけではありません。

しかしながら、逆に余計な固定観念を取り除いて素直にサウンドだけに耳を傾ければ、従来伝えられてきたこととは違った側面が浮かび上がってくるのではないでしょうか?

実際、ジャイルズが驚いたのは、イーシャー・デモなどのサウンドに耳を傾けていると、これまで伝えられてきた彼らのホワイト・アルバムのレコーディングの時のイメージとは全く異なるものが浮かび上がってきたことです。

 

2 マーティンとの力関係が逆転

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「私の父(ジョージ)はホワイト・アルバムが好きではなかった。彼は、そのレコーディングのプロセスをあまり楽しんでいなかった。彼は、レコードとしては整理ができていないと思っていた。」

「彼は、仕事を効率的にこなすのが好きだった。ビートルズは、徹夜までしてレコーディングしていた。父は、そういう仕事のやり方を好まなかった。効率よく仕事をこなして、さっさと切り上げるというのは彼のやり方だった。ただ、ビートルズは、とてもその過程を楽しんでいた。」

「父の主張によれば、彼がレコーディングに関わることは少なかったので、ビートルズによるセッションは急増した。バンドが数多くのセッションを終えると、ポールかジョンが「曲が仕上がったら言うよ。」と彼に言った。それは、それまでとは全く異なる関係だった。」

マーティンは、延々と続くセッションにイライラする一方、ビートルズは、対照的にそれを楽しんでいました。ビートルズは、一人一人がセッションし、その結果をマーティンに伝えて感想を求めるというスタイルに変貌していました。この事実は、ビートルズとマーティンとの力関係が逆転していたことを示しています。

「私は、メンバーの関係が「Let It Be」の時に確実に変わったと思う。それがもっと荒々しいものになったからだ。「Abbey Road」は全く別のレコーディングだった。しかし、ホワイト・アルバムは、バンドが解散したサウンドではない。」

私もこのブログの過去の記事の中で「ホワイト・アルバムがビートルズの終わりの始まり」と書きました。それは従来の通説的見解に従ったものです。しかし、ジャイルズによると、必ずしもそうではないということですね。メンバー同士で衝突はしていたものの、レコーディングそのものには熱心に取り組んでいましたから。

本当にバンドの崩壊が始まったのは、「Let It Be」ということですね。 

3 ビートルズは「Sgt Pepper」でも満足していなかった?

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「彼らが「Sgt Pepper」で演奏したバンドとして欲求不満を持っていたと思う。「Sgt Pepper」では彼らは架空のバンドであり、彼ら自身ではなかった。」

これは意外ですね。あれほど大成功を収めたアルバムであり、彼らにとっても自信作と考えていたはずですが、あれは、本当の自分たちを表現したアルバムではなかったということでしょうか?

「「彼らは、本物のミュージシャンではない」と呼ばれていたことがあったと思う。それは、60年代の初めから半ばにビートルズに付けられたアイドルとしてのレッテルだった。」

ジョージ・ハリスンのドキュメンタリーを制作したとき、エリック・クラプトンがインタヴューでこう語った。「私は、彼らとギグしたとき、彼らが実際に自分の楽器を演奏できることを知ってちょっと驚いた」ホワイト・アルバムはバンドとしてのレコードであり、原点に回帰していた。」

何とクラプトンすらビートルズの演奏テクニックに疑いを抱いていたんですね。あまりに偶像化されていましたし、ライヴでは絶叫で聴き取れませんでしたから。

「私の父は、ビートルズがSgt Pepperからもっと複雑なものへと進歩していくと思っていたと私は考えている。私は、彼がアビイ・ロードの後半をとても気に入っていたことを知っている。あれこそが本当に彼が望んでいたものだった。」

 

4 リミックスに当たって

(1)リミックスやミキシングは仕事の一部

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「リミックスを手掛けたからといって特別なことを考えたわけではない。曲のリミックスやミキシングはあくまで私の仕事の一部だ。私は、どれでも好きな曲をリミックスすることができた。」

「その際、その曲からどんな感じを受けるか、それをどんな風に覚えているかについても考えた。曲は、自分の頭の中でそれがどのように聴こえているか、それに沿ってミックスするという側面を本質的に持っている。そこで改めてオリジナルを聴いてみると、今までと同じようには聴こえない。ある時は悪く聴こえ、ある時は良く聞こえる。殆どの場合、ミックスというものはそういったプロセスを経るものだ。」

「私は、やりたいと思うことは何でもできたが、最終的には満足のいく成果を挙げなければならなかった。みんながこう言うんだ。「あなたの仕事はリスクがある。あなたはビートルズのために働いた結果、自分でハードルを上げることになりますよ。」とね。

(2)ビートルズも望んだだろう

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「ギターをADTに通すとしよう。例えば、「Dear Prudence」なら頭の中に曲のイメージがあり、そのギターのサウンド、ジョンのギターアルペジオについて考える、そしてそれは美しく聴こえる。彼の声がダイレクトにトップにきて、それからベースとドラムが入ってくる。オリジナルの曲のギターは、左側のスピーカーから聴こえると思うが、そのサウンドはかなり小さい。そのことに気づいた人などいないだろう。」

「それで、我々は、ギターをテープマシンにADTを通しステレオ化したので、今までに馴染みのある曲のように聴こえる。ミックスは「Dear Prudence」そのものだ。それが合理的であれば、一種のプロセスとして成立する。」

「私は、ギターのサウンドを台無しにしたり、現代的なサウンドにしたりしているとは考えていない。なぜなら、彼らが当時こういうテクニックを使えたら、きっとこうしただろうと考えたからだ。」

「もし私がジョンに尋ねたとしよう。「このテープマシンを使って、「Dear Prudence」のギターをADTに通してみようと思うんだけど。」そしたら、彼は、多分こう応えただろう。「ああ、やってみてくれ。」当時の彼らは、そんなテクニックを持っていなかったから。」

ミックスやリミックスで楽曲の印象は大きく変わります。ジャイルズは、オリジナルの音源を使用しつつ、現代のテクニックを使ってよりダイナミックなサウンドを創造したのです。その醍醐味は、ジャイルズとそのスタッフにしか理解できなかったでしょう。

もちろん、賛否があることは彼も承知の上です。しかし、それが気に入らなければ聴かなければ良いだけの話です。

現代音楽は、アレンジが大きな比重を占めていて、その出来次第で傑作が駄作に終わってしまうのはごく一般的なお話です。そういう意味で、近年のJ-POPは物凄く凝った曲作りをしてますね。

 

(3)どう分類するか難しいアルバム

Vijftig jaar geleden kwamen The Beatles met het controversiële album The White Album. Giles Martin, zoon van Beatles-producer George Martin, mocht ter gelegenheid van dit jubileum het album opnieuw mixen. Volgens de Brit heeft het album veel verborgen schatten.

「父は、これを1枚のアルバムに収めたかった。私は、そのことについてどうこう言うつもりはない。決定が下され、ホワイトアルバムは2枚組となった。あまりにも多くの曲があったから、1枚のアルバムには収録しきれなかっただろう。」

ホワイト・アルバムの面白いところは、それをどんなアルバムとして分類するのかが非常に難しいことだ。実験的なアルバムではなく、ポップアルバムでもない。その中にたくさんの異なるスタイルを持った巨大なレコードだ。」

「だから、それが他のことに影響を与えたり、音楽のやり方に大きな変化をもたらしたりした。それ以来、新たなホワイト・アルバムは存在していない。それは、このアルバムが異次元の存在だということを意味している。」

「私は、最も影響力のあるアルバムだと思う。他のアーティストによって、最も多くカヴァーされたことがそれを物語っている。このアルバムは、他のアーティストがジャンルにこだわらないで音楽スタイルを採用するきっかけになったといえる。」

普通のアーティストなら、もっとまとまりのあるアルバムに仕上げたでしょう。しかし、ビートルズは、あえてそれをしませんでした。もちろん自分の曲を一曲でも多く入れたいという、利己的な考えが全くなかったとは言えません。

しかし、個性と個性が激しくぶつかり合いながらも均衡を保っていた、ある意味一本のロープの上を全速力で駆け抜けていったかのようなアクロバティックでエキサイティングな作品に仕上がりました。一歩間違えれば奈落の底に転落してしまうところですが、そうならなかったところがビートルズの天才たる所以(ゆえん)です。

「最初に私が最大の啓示を受けたのは、彼らが互いに協力していたという事実だった。私は、ジョージが「Savoy Truffle」を制作し出した時、ポールは、「Blackbird」を自分の部屋で作っていたという記録を読んでいた。」

(4)ビートルズはこのアルバムを愛していた

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ポールがここに来て、私たちと一緒にホワイト・アルバムを聴いたとき、彼は「Julia」を聴きたいと言った。私は「え?本当に?」と思った。彼は、ホワイト・アルバムについての今までの報道を読んでいないとは言わなかった。しかし、彼は、ジョンとのそのレコーディング・プロセスの大部分を共同で作業したのだ。」

バンドが解散したサウンドではなかったという点が一番重要だ。リンゴと話をしたら、彼は、いかにこのアルバムを愛しているかを語っていた。彼は、バンドが共同してこれを制作したという事実、そして、「Yer Blues」がマシンルームでレコーディングされたという事実を愛しているのだ。」

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トラックに関しては、誰もその存在を知らなかった「Julia」がテープの最後にある。アビイ・ロードのエンジニアだったマシュー・コッカーがレコーディングした楽曲のすべてのカタログを作成し、最後に「Julia」が登場するのだが、彼がそれをアルバムから外すべきか入れるべきか父のジョージと会話している。彼は、「これは本当に歌うのが難しい曲ですよ。ジョージさん。」続けて彼はこう言った。「これは難しい曲だよ、ジョン。」

これらすべてのアウトテイクで、会話と演奏が交互にレコーディングされていることが分かる。それによって、誰もが良いサウンドであることを素直に実感できる。」

5 まとめ

さて、ここまで1968年にリリースされたオリジナルのホワイト・アルバムと、2018年にリミックスされてリリースされたヴァージョンについてお話ししてきました。ひょっとすると我々は、ジャイルズたちに導かれて黄金郷に辿り着いたのかもしれません。

大自然であることは確かですが、青空が広がっている場所もあれば、お花畑に囲まれている場所もあります。その一方で、ジャングルがあり激流があり、猛獣が飛び出してきたりもします。しかし、トレジャーハンターのようなワクワクした気持ちにさせてくれることには違いありません。

ビートルズは、メンバー同士衝突こそしていましたが、決してこの段階ではその絆が断ち切られていたわけではありません。他のメンバーが作った楽曲を批判しながらも、それを最高の作品にするために協力していたのです。

かつては太いロープだった絆もピアノ線のように細くなりはしていましたが、まだしぶとく4人を繋いでいました。

このブログを書きながら、私にもこのアルバムの違う側面が見えてきました。どうも、私はいろんな人が書いてきた資料を読みすぎて、素直にサウンドに耳を傾けることなく、固定観念に縛られていたのかもしれません。

長くなりましたが、ホワイト・アルバムについては、一応ここで打ち止めとしておきます。次は、またアーリー・ビートルズに戻るかもしれません(笑)何しろ教科書ではないので、話があちらこちらに飛び散らかっちゃってすいません💦

 

(参照文献)DROWNED IN SOUND

(続く)

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