★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

「Get Back」ついにクライマックスへ(380)

ついに屋上に到着した警官

1 「Dig A Pony」を演奏

玄関でスタッフと警官と必死の攻防が繰り広げられていることも知らず、ビートルズは、気持ち良さそうにルーフトップで「Dig A Pony」の演奏を始めました。ジョンがとても乗っています。ジョンの前にはスタッフが歌詞カードを持ってひざまずいています。彼は、自分が作ったばかりの歌詞なのに覚えていないんですよね。

この音源もまたアルバム「Let It Be」に収録されました。彼らは、寒風が吹きすさぶ劣悪な環境で、次々とアルバムに収録できるクオリティーの楽曲を演奏したのです。

ダッグは、もう一度警察署に電話しました。「ひどい騒音だ。当直警官を回せ。」おそらく現場にいる彼ら2人だけでは、演奏を中止させるのは難しいと判断したのでしょう。電話を切った後、ダッグは無言でしたが、応援の警官に早く来てくれと祈るような気持ちだったのでしょう。

 

 

2 演奏は続いた

(1)ゲリラ・ライヴを理解できない人も

路上では撮影スタッフが若い女性にインタビューしています。「なぜ屋上でやってるの?」「規格外なことをやるため」「お金あるのに?」彼女は、ゲリラ・ライヴの意味を理解できなかったみたいですね。それはそうでしょう、ビートルズほどのスーパースターがストリート・ミュージシャンみたいなことをしてるんですから。でも、だからこそ面白いんですよ。

(2)クラークの引き延ばし工作

「寒くてコードが押さえられない」とこぼすジョン

社員のジミー・クラークがダッグに「屋上は施錠してます。皆が屋上に来るので。侵入して自慢する者が。」と話しました。彼も必死でダッグが屋上に昇るのを引き延ばそうとしています。「PAの大半は切りました。地下へのコードを切ります。」

この説明にダッグが軽く頷いたように見えます。これが本当なのか、その場凌ぎでデタラメを言ったのかは分かりません。ダッグは警官で音響には詳しくないようで、この説明にちょっとホッとしたのかもしれません。

しかし、たとえ説明が本当だったとしても、街中に騒音が流れ続けていますから意味はありません。ただ、絶妙なタイミングで演奏が終わりました。ダッグは、これで治まったと一瞬思ったかもしれませんが、すぐにそれが勘違いであることが分かります。

屋上ではホッグがジョンに近づくと「どうもブラザー。寒くてコードが押さえられない。」とこぼしました。真冬のロンドンのビルの屋上ですからね。こんな劣悪なコンディションで演奏している彼らがスゴいんです。

(3)大群衆に囲まれた

ダッグは、アップルコア社の窓に降ろされたシャッターを少し開けて外を覗きました。「スゴい人だ。」と思わず呻きました。ビルの周辺は、騒音を聞きつけて集まってきた野次馬でひしめき合っていました。

ダッグ「さまざまな業種の人たちが迷惑を被っている。」クラーク「こんなに集まるとは。何とかしないと。」もちろん彼は、口先だけでそう言っているだけで、どうするつもりもありません。ビートルズが演奏を止めればすぐに終わることですからね。屋上だから良かったものの、路上でやっていたら、群衆が押し合いへし合いになってケガ人が出たかもしれません。

3 インタヴューに応える人々

インタヴュアーが2人連れの女性ファンに「今聴いているものが次の最新LPになる予定です」と告げると、「スゴい」「素晴らしい」と感激していました。発売前の新曲を生で聴けるんですから、そりゃ嬉しいですよね。

ここで帽子をかぶった高齢男性が登場します。「彼らはすごい。誰もかなわないよ。独立独歩で独自のスタイルがある。私が思うに彼らは愛すべき連中だよ。曲もいいし歌も上手いしね。後は何かな。まあ素敵な連中だ。髪型も服装も認めてる。」年齢の割には随分と好意的ですね。そして、「娘の恋人には?」という質問に対しては「金持ちだから構わん。」と即答しました。なかなかシャレの分かるおじさんですね。

この映画を通して見る限り過去にささやかれていた「ヤラセ疑惑」は、全くデタラメだったということが分かります。もちろん今回の作品も編集という過程を経ているので、制作側の意図が反映されている点は否定できませんが。

 

 

4 ついに警官が屋上に現れた

(1)屋上へ昇ると決断

警官に対応するマル

ダッグの祈りもむなしく、また「I’ve Got A Feeling」の演奏が始まりました。マルもさすがにこれ以上警官をここに引き止めておくのは無理だと判断したのでしょう。ダッグに「屋上へ行きますか?」と尋ね、ダッグは、ついに屋上に昇ることを決断しました。

屋上ではジョンがセットリストを間違えて「Get Back」を演奏しようとしましたが、「Don’t Let Me Down」だったと気づき照れ笑いしました。すると、他のビルの屋上に昇った野次馬が「ロックンロール」と叫びました。ジョンは、すかさず「お前もな」と返しました。こういうやり取りができるところがライヴの楽しさですね。

(2)屋上へ到着

警官を屋上に連れて来たマル

そして、ジョンが「Don’t Let Me Down」の演奏を始めようと、何気なく右斜め後ろの屋上のドアの辺りを見ると、ちょうど開いたドアからダッグらが入ってくるのが見えました。

ポールは、背中を向けていましたし、リンゴも真横だったので気づかなかったかもしれません。しかし、ジョンはおそらく視野に入っていたので気付いたでしょう。それからジョージも立ち位置からして気づいたでしょう。

しかし、ジョンは、それを全く気にかけることもなく演奏を始めました。この時彼が何を考えていたかは分かりませんが、もし逮捕されるならそれはそれで面白いと内心では思っていたかもしれません。

www.youtube.com

(3)待ち望んでいたハプニング

撮影クルーが警官に気づき、慌ててカメラマンの腰に手をかけて警官にカメラを向けさせました。これこそホッグが「カメラを回せば何かが起こる」と待ち望んでいたハプニングだったのです。ここでようやくポールも警官がきたことに気づきニヤリと笑いました。彼も逮捕されたら話題作りになって面白いと喜んでいたんですね。

ダッグらは、屋上に到着したものの、しばらくドアのところに佇んでマルと何事か話していました。何を話しているかは分かりませんが、早く演奏を止めさせろとせかしているのでしょう。もし、彼が決起盛んな警官だったら、すぐに突進して演奏を中断させ彼らを逮捕していたでしょう。

ポールは、時おり彼らの方を振り返りニヤニヤ笑いながら演奏しています。「ほら、オレたちを逮捕しに来たんだろ?早くしろよ。」とでも挑発しているかのようです。マルが警官に言われて演奏を止めるように話したんでしょうか、ジョンとポールの背後から呼びかけました。しかし、彼らは、マルを振り返ったものの全くお構いなしに演奏を続けました。

 

 

5 「Get Back」を演奏

(1)マルがアンプのスイッチを切った

マルが切ったアンプのスイッチを入れ直すジョージ

警官が到着したにもかかわらず、ビートルズは「Get Back」を演奏し始めました。マルがかがみこんでこっそりアンプのスイッチを切ったようです。彼もビートルズと警官の板ばさみになって気の毒でしたね。

ギターの音が出なくなりジョンが「切れた」とポールに言って、ジョージとともに演奏を止めました。しかし、ポールとリンゴ、プレストンは、構わず演奏を続けました。すかさずジョージがスイッチを入れて演奏を続けました。

マルも「ダメだ、こりゃ」とお手上げ状態でスゴスゴとドアの方へ戻りました。応援の警官も駆けつけているのですが、彼らも手を出しかねてじっと見ているだけでした。

(2)向かいのビルからも苦情が

アップルの向かいのビルの関係者らしい男性がアップルの受付にやって来て「一体何なんだ?うちのビルの屋上に撮影隊がいる。」と受付のデビーに苦情を申し立てました。ホッグは、向かいのビルの管理者に屋上を使う許可を取っていなかったんですね。ということは、ビルに無断で侵入したことになります。日本でなら建造物侵入罪にあたります。

私は、イギリスの法律は知りませんが、多分同じ犯罪はあったはずで、この容疑でなら現行犯逮捕できたでしょう。そこまで現場の警官は、誰も気づかなかったんでしょうね。

(3)ポールのアドリブ

警官が来ているのを知ったボールは、彼らをあざ笑うかのようにアドリブで台詞の部分の歌詞を変えました。「また君は屋上でプレイしたな。ダメだ。ママは嫌がってる。怒ってるぞ。逮捕させるって。」明らかに警官に対する当てつけですね。

しかも奇跡的なことに、これが「Get Back」という曲にピッタリ当てはまるんですよ。母親の言うことを聞かない子どもを叱っているような台詞でありながら、警官が演奏を止めて帰れと言っているようにも取れます。あるいは、警官に対して帰れと言っているとも取れます。こういうアドリブができるところはさすがですね。

 

 

6 パーティーは終わった

www.youtube.com

そして、ついにビートルズもここで演奏を止めました。ポールは「Thanks Mo(ありがとう。モー(リンゴの妻のニックネーム)」と一言を残し、ジョンは「皆を代表してお礼を。オーディションに通るかな?」という有名なセリフを残してギターを置きました。

スタジオに戻った彼らは、ループトップ・コンサートの成功に上機嫌でした。その後、予告なしに行うゲリラ・ライヴという演出は、多くのアーティストによって使われるようになりました。結果的にこれがビートルズとしての最後のライヴとなりましたが、彼らは、後に50年以上も語り継がれる伝説を作ったのです。

(続く)

この記事を気に入っていただけたら、下のボタンのクリックをお願いします。

にほんブログ村 音楽ブログ ビートルズへ
にほんブログ村

下の「読者になる」ボタンをクリックしていただくと、新着記事をお届けできます。