★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その150)ジョン・レノンのヴォーカルの魅力について(その12)

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【4】幻想的な楽曲部門(続)

3 ストロベリーフィールズ・フォー・エヴァー(続)

(1)ジョン自身が誇りに思っていた名曲

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ジョンは、過去を振り返ることが嫌いなタイプの人だったので、解散後もビートルズ時代のことを懐かしむということはあまりやらず、常に何か新しいことにチャレンジしていました。

ただ、そんな彼でも、ビートルズ時代を振り返って自信作はいくつかあったと明言しています。その中の一つがこの作品です。彼が数多く手がけてきた中でも、このヴォーカルは、とても歌詞の意味を良く表現していると語っています。

(2)レコーディング

この作品のレコーディングは少し変わっていて、ジョンが出演した「How I won the war」という映画をスペインのアルメリアで撮影している1966年9月26日から11月6日までの間を縫って、最初のレコーディングが行われました。

その後、ジョンは、帰国して自宅でデモ・レコーディングを行いました。この音源は、1996年にアンソロジー2としてリリースされました。

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その後、11月24日、EMI第2スタジオでレコーディングを開始しました。ビートルズは、実に5か月ぶりに集結しましたが、この頃になると彼らの風貌もファッションも、アイドル時代のそれまでとはすっかり変わっていました。

久しぶりのレコーディングだったため、メンバーの呼吸がなかなか合わず、話し合いに時間を要しました。ジョンの頭の中には、この作品に対するイメージができていたのですが、それを他のメンバーやスタッフに上手く伝えられず、イライラしたようです。

(3)やりたいことが伝わらない!

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ジョンが一生懸命説明しても、何が言いたいのか他のメンバーにはサッパリ分からず、彼のイライラはつのる一方で周囲は困惑するばかりでした。たまりかねてポールは「要するに何がポイントなんだい?」と尋ねる始末です。

しびれを切らしたプロデューサーのジョージ・マーティンは、打ち合わせを終わらせました。「分かった。とにかく仕事にかかろう。君は何かアイデアがあるかい?」とポールに尋ねました。

ポールが何かを言いかけると、それを遮ってジョンが「そうだ、分かったぞ!」と叫びました。自分で答えを見つけて演奏し始めたのです。ポールは、少し笑みを浮かべ、肩をすくめてバックの演奏を始めました。(やれやれ、毎度のことながらホントに手を焼かせてくれるぜ、この相棒は)ってなところでしょうか?

 

この作品に限らず、特に凝った内容の作品にはジョン独特のアイデアが込められているのですが、それを言葉で上手くメンバーやスタッフに伝えられないんですね。エンジニアのジェフ・エメリックは、いつもジョンは、抽象的な表現であれこれ要求してくるので、それに応えるのに苦労したと語っています。

そりゃ、「ダライ・ラマが山の頂上から説教しているみたいなヴォーカル」「床に敷き詰めたおがくずの匂いがするようなサウンド」なんて言われたって、訳わかんないですよ(^_^;)

我々は、完成した作品を聴いている、つまり、答えを知っているから違和感を感じませんが、「その答えはこれだ!」と見事に難問をクリアしたエメリックもスゴいです。

(4)神がかりだったジョンのヴォーカル

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ジョンは、アコースティックギターを弾きながら歌い始めましたが、声が小さかったのでマイクで十分拾えず、エメリックは、フェーダーを上げざるを得ませんでした。

このファーストテイクで、もう既に彼のヴォーカルは、完璧な仕上がりでした。彼は、「ストロベリーフィールズ」がいかに神秘的な場所であったかを、穏やかに敬意を払って表現したのです。
エメリックは、歌詞の意味は抽象的で分からなかったが、なんとも言えない説得力があり、ジョンのヴォーカルだけを切り取って聴くと、奇妙で魔法のようなものがあったとのことです。

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ジョンのヴォーカルが終わると、スタジオにいたスタッフは、声を上げることもできずシ~ンと静まり返ったままでしたが、ポールがその静寂を破り、敬意を込めた口調でただ一言「とても素晴らしかったよ。」とジョンに告げました。

編集していないレアな状態の歌声ですら、ポールを含め現場にいた全員をこれ程まで感動させたのです。

エメリックによると、ジョンがアコースティックギターで初めて自分の作品を歌った時は、いつも素晴らしい出来だったのですが、この作品は、その中でも飛び抜けて素晴らしい出来だったとのことです。

 

バンドが創造したエネルギーがスタジオ中に満ち溢れ、ボトルから溢れるかのようだったとも語っています。

ああ、できることならタイムスリップしてその場に居合わせ、ジョンのレアなヴォーカルを聴いてみたい!多分、全身に鳥肌が立って涙が溢れ出るでしょうね。

ジョンは、自分でレコーディングしたデモテープも聴いてみてくれとスタッフに言ったのですが、全員がその必要はない、さっきのヴォーカルをそのまま使えばそれで十分だと彼に告げました。

4 アイ・アム・ザ・ウォルラス

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これもまさにジョンならではという作品ですね。英語の歌詞はもちろんですが、日本語に翻訳されたものを読んでも、シュール過ぎて意味がさっぱり分かりません(^_^;)「死んだ犬の目から滴る黄色いカスタードの膿」って、そんな歌詞が最初から最後まで並んでるんですよ。しかし、それで完璧に楽曲として成立しているから、やはり天才としかいいようがありません。

この曲でもジョンは、息を呑むようなヴォーカルを聴かせました。エメリックは、次のように語っています。「ジョンは、自分の声が月から来ているような感じにしたいと要求してきた。月がどんなサウンドを出しているのか、ジョンが本当に聴いていたサウンドが何であるかは分からなかったが(そんなの誰にも分かりませんよ💦)、いつものように彼との議論はそれほど多くなかった。」

「私は、ちょっと考えた後、コンソールのマイクプリアンプに過負荷をかけて、スムーズで丸みのある歪んだサウンドを出した。これは、EMIの厳しいルールに明確に違反する行為だった。彼のヴォーカルをさらに鋭くするために、安価で低忠実度のトークバックマイクを使用した。」 

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また出ましたね、ジョンの掟破りの抽象的要求が(笑)並みのエンジニアだったら頭を抱え込んでしまうところですが、エメリックは、この無茶ぶりにも見事に応えてみせました。いずれまた彼の功績について語るときがあると思いますが、優秀なスタッフに恵まれることもアーティストにとっては非常に重要な要素です。

5 ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ

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これまたジョン特有の幻想的なメロディと歌詞で、リスナーは、まるでキラキラと色々な色に光り輝く空間に、ふわふわと漂っているかのような感覚に浸れます。

ジョンは、最初「Cellophane flowers of yellow and green」という箇所をあえてゆっくり、はっきりと聴き取れるよう区切って発声しました。色の違いを明確に示して、リスナーにサイケデリックなイメージを持たせたかったのでしょう。

しかし、ポールは、もっと早く滑らかに歌った方が良いとアドヴァイスし、ジョンは「OK」と応えその通りにしました。実際、この日の彼のヴォーカルのパフォーマンスが向上し、スタジオでこの曲の輪郭が形成されたと感じられる程の出来栄えになりました。

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ジョージ・マーティンは、映画「The Pepper of the Sgt. Pepper」で、「ジョンは、一小節で一つの音符しか歌っていなかったが、非常にシンプルで美しいキーボードのメロディーを重ねた。」「彼はそんなやり方を開発したんだ。つまり、我々がレコーディングしているときでさえ、自分がどのように歌いたいのかを見つけ出す方法が分かっていた。」と語っています。

つまり、レコーディング中でもどうやればもっと効果的な歌い方ができるかが分かっていて、それを実践していたんです。もちろん、その前に入念な準備はしていたはずですが、何しろ「フィーリング第一」の人ですから、レコーディング中にアイデアがドンドンわいてくるんでしょうね。いずれにしても、独創性とそれを可能にする歌唱力があっての話です。

ジョンのヴォーカルは、テイクを重ねていくうちに攻撃的なものから夢心地のようなものに変わっていきました。ただ、レコーディングで5か月近くもスタジオに缶詰め状態になって、さすがのビートルズたちもいささかウンザリしたようです。

エメリックによれば、ジョンは、1967年の春頃になると作品を制作するにあたり、他のメンバーの意見を取り入れることが増えてきて、自分は一歩下がった位置で満足するようになったとのことです。そして、それとは対照的にポールが主導権を握るようになって来ました。

テイク4は、50周年記念アルバムに収録されていますが、スタートを失敗しました。テイク5の前にポールがジョンに「集中して。もっと早く歌って」とアドヴァイスしています。

この頃は、まだ良かったんですがね〜💦段々ポールが主導権を握るようになって、4人の仲がギクシャクし始めます。

さて、ジョンの話題がかなり続いたので、一旦お休みして他の話題へ移りますね。

 

(参照文献)THE BEATLES MUSIC HISTORY

( 続く)

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