- 1 まだあったビートルズがレコーディングで犯したミス
- 2 Please Please Me
- 3 I’ll Get You
- 4 If I Fell
- 5 What Goes On
- 6 Hello, Goodbye
- 7 All You Need Is Love
- 8 A Day in the Life
- 9 Happiness Is A Warm Gun
- 10 Come Together
1 まだあったビートルズがレコーディングで犯したミス
前々回にビートルズがレコーディングでミスをしたものをご紹介しました。実は、あれが全てではなく、他にも彼らがミスしたテイクをそのままリリースしたものがあります。別にあら探しをするわけではありませんが、それを見つけるのを楽しみにしている人もいるんですね。ミスまで完コピしてるバンドもあり、その熱心さには感心します。
映画のシーンで映っちゃいけないものが写ってしまっているのを見つけるのが趣味の人がいますが、ビートルズの曲の中にもやはりミスはあって、前にご紹介したのは、そのうちのほんの一部です。この話題は割と関心を持っている方が多いようなので、今までに取り上げていなかったものについてもご紹介します。ただ、それでも全部を紹介しきれるわけではありません。また別の機会でご紹介することがあるかもしれません。
2 Please Please Me
実は、この作品については、このブログの既に過去の記事でミスがあったことを指摘しています(すいません、いつの記事だったか忘れました)。最後のヴァースでジョンが歌詞を間違えて、ポールの歌詞とバッティングしているので、これは気をつけて聴けばすぐにわかります。
ただ付け加えると、アルバムにする時、プロデューサーのジョージ・マーティンは、ミスがあることを知りながら、このテイクをレコードとしてリリースしました。なぜかというと、彼がこのテイクをベストだと判断したからです。歌詞の間違いがあることはわかるのですが、そこにあえて目をつぶって一番良い音源だと判断したのでしょう。また、ハードスケジュールでミスを修正する時間もありませんでした。
3 I’ll Get You
ビートルズは、常にアルバムと並行してシングルをリリースし、短期間に信じられないほどの量の作品をレコーディングしました。この曲は、1963年末の大ヒット曲「She Loves You」のB面に採用されました。そして、タイトなスケジュールに追われていたために、ブリッジの歌詞を間違えていますがテイクをレコーディングし直さずそのままにされました。
これまたジョンのミスですが、それが曲の勢いを妨げるわけでもなく、彼とポールによってコーラスデュオのエヴァリー・ブラザーズに匹敵するハーモニーが恒久的に残されたことは素晴らしいことです。
4 If I Fell
バンドが3枚目のアルバム、1964年の「A Hard Day’s Night」をリリースする頃には、彼らは、絶賛されるような驚くほど成熟した複雑なバラードを制作していました。中でも「If I Fell」は特に美しく、ジョンが二人の求婚者の選択の間で揺れ動いています。メロディーは切なくて憧れに満ちたものですが、ミドルエイトの終わりでピークに達するとき、高いハーモニーを出そうとするポールの声が割れてしまっています。ハイトーンが得意な彼ですが、出し切れなかったんでしょうね。
5 What Goes On
この曲は、リンゴの作曲クレジットが入った最初の曲ですが、多くの人々は、レノン=マッカートニーのナンバーであると考えています。「What Goes On」は、「Rubber Soul」の瞑想的な曲の中にあって、ちょっと風変わりなカントリー・ミュージックです。
ジョンが奇妙なリズム・ギターを弾きまくるので、バンドはこの曲が捨て曲だと感じたかもしれません。ミックスの中に埋もれてしまってはますが、そこに注目すれば、いかに彼らの演奏が良くなかったかがわかるでしょう。
6 Hello, Goodbye
これは、今までご紹介してきたレコーディングのミスではありません。ミスがあったのは、この曲のプロモーションビデオです。
これはビートルズが一切のツアーを中止したため、ファンに自分たちの姿を見せられるよう制作された比較的新しい試みでした。このクリップでは、ポールが明らかに歌詞を口パクしているのがわかります。「バイバイバイ」の辺りで彼の口がヴォーカルと同期していません。当時は、生演奏がなくなるとバックバンドの仕事がなくなってしまうことを懸念した音楽家組合が、口パクを禁止するよう放送局と約束していました。
そのため、このクリップはイギリスでは放送されませんでした。まだミュージック・ビデオが使われ始めた頃だったので、こんな初歩的なミスも見過ごされたんですね。
7 All You Need Is Love
(1)最初から不安があった
この作品は、1967年6月25日に世界初の通信衛星を使って24か国で同時放送された特別番組「OUR WORLD」の中でレコーディングされました。ツアーを止めてから人前で演奏するのは久しぶりでしたから、当然ビートルズも緊張していましたが、中でもギターソロを任されたジョージは特に不安を募らせていました。マーティンもビートルズも、生放送で彼がミスするのではないかと懸念していたのです。
心配していた通り、ジョージのギターソロの出だしは上手くいったのですが、3小節目でミスしました。本来ギターソロは見せどころですから、カメラがフォーカスするはずですが、何故かそこは他の画面になっていました。
レコーディング・エンジニアのジェフ・エメリックの話によれば、ジョージが本番前にかなりディレクターと話し込んでいたそうです。あくまで彼の推測ですが、ソロに自信がなかったジョージが映さないように頼んでいたのではないかということです。実際、ソロは中途半端な形で終わってしまいました。
(2)オーヴァーダブで修正した
「最初のプレイバックを聴いたビートルズはガッカリした」とエメリックは回想しました。「ギター・ソロを聴いてハリスンは少し自信を無くしていたが、(エメリックのアシスタントが)彼を安心させた。『少し手を加えれば、素晴らしいものになる』ってね」
放送を聞くと、ジョージのギターソロは力強く始まり、短いソロの主要部分を問題なく演奏しています。しかし、最後の1秒でつまずいてしまいました。カメラとサウンドトラックは、この時点でオーケストラをフィーチャーしていました。そして、その後、アシスタントが言った通り、「少し手を加えることで」その年の夏にリリースされたビートルズのレコードでは問題なく聴こえました。
8 A Day in the Life
作品自体が非常に実験的なものなので、あちらこちらに偶然なのか計算なのかわからない奇妙な音が入ったり、ズレたりしています。
ポールのヴァースで朝起きたという歌詞のところで、タイミングよく目覚まし時計のアラームが鳴りますが、これは最初から狙ったものではなく、ビートルズが偶然を上手く利用したという説が一般的です。
ジョンの「Ah〜」というスキャットに続く三つの下降する音符の中央にあるDは、バッキングとともに少し早く静かに演奏され、後の演奏と少しズレているように聴こえます。
「オーヴァーダブの一つで、リンゴは、最後の方で靴に当たるため、ドラムキットのポジションを僅かに変えた。これはもちろん、ピンが落ちる音が聞こえたときに起こった!横目で見たポールの表情から、リンゴが憮然としているのがわかった。音が消えていく瞬間に耳を澄ますと、特にCDバージョンでは、表面的なノイズがないため、はっきりと聴き取ることができる」。*1椅子がきしんだ音だという説もあります。リンゴは、しまったと思ったでしょうが、結局そのままにされました。ほとんどわからないほどの小さな音だったからでしょう。
9 Happiness Is A Warm Gun
1:47辺りで全体のテンポが6/8拍子に変わりますが、なぜかリンゴは4/4拍子で続けます。どうしてこんなことが起こったのかはわかりません。
可能性としては二つ考えられます。一つは、あえて二つの異なるリズムを重ねることで気の利いたアレンジにすることを狙った。もう一つは、ドラムをレコーディングした時点では4/4拍子にするつもりだったが、後で方針を変更した。
なにしろ気まぐれなジョンのことですから、曲の途中でリズムを変えるなんて彼にとっては大したことではありませんでした。あるいは、気づいていなかった可能性もあります。
10 Come Together
これはミスというより、レコーディングの微妙なタイミングで何かが隠されているケースです。このブルージーな作品では、各セクションの冒頭でジョンの「シュッ」という発声が聴こえます。その声がポールのベースとリンゴのマラカスのコンビネーションと絡み合っています。
おそらく多くの人は、ジョンが「シュッ」と歌っていると思っています。英語のネイティヴ・スピーカーでもそう聴こえるようです。実際には「シュート・ミー(オレを撃て)」と歌っていたのですが、レコーディングした時に他のサウンドに紛れて「ミー」の部分がかき消されてしまったのです。ヴォーカルだけを取り出してみると、ジョンが発声しているのがわかります。でも、このイントロは素晴らしいので、聴こえなくても大丈夫ですね。
(参照文献)カルチャーソナー、チートシート
(続く)
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