★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(189)ポール・マッカートニーが語るビートルズ時代の楽曲の裏話(その2)

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ポールのお話を続けます。

1 I Saw Her Standing There

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(1)初めての共作

「これは、ジョンとの共作でうまくいった作品だ。僕が曲作りで行き詰まっていて、ジョンと一緒にあれこれやってみて完成させた。最初に僕が作った歌詞は『She was just seventeen. She’s never beauty queen』だった。僕は、これをジョンに見せて、どうもこの行が気に入らないんだと話した。」

「そして、一緒に作業して『She was just seventeen. You know what I mean.』とイカした歌詞になった。それが二人の共作の始まりだった。」

 

これは、ファンが知っている有名な話ですね。You know what I mean…断然こっちの方が優れています。「あの娘はちょうど17歳だ。オレが何を言いたいか分かるだろ?」あえてストレートに言わない思わせぶりな歌詞ですが、このたった一行でリスナーは、これからこの年頃の男女がどうなっていくのか、ゾクゾクするようなスリリングな感覚を味わえます。

(2)どの曲も大体3時間で完成

「僕たちが曲を作るときは、だいたい殴り書きみたいなものから始めて、それを持ち寄って座ってじっくりと曲作りに取り組んだ。どんな曲を作りたいかを話して、完成に近づけていく。すぐにセッションして、一曲について大抵3時間くらいかけて、コードとメロディーと歌詞を最後まで仕上げて終わりさ。」

私は、コンポーザーじゃないのでわからないのですが、楽曲ってそんなに簡単に作られるものじゃないですよね?どんなに優れたコンポーザーであっても、新曲を作る時は悩み苦しみ、頭をかきむしりながら必死でひねり出していると思います。

ところが、レノン=マッカートニーは、それぞれが思いついたアイデアを持ち寄り、作り込んでたった3時間で完成まで持っていったんですね。しかも、それだけ早く作り上げた曲にもかかわらず、50年以上経っても全世界で愛され続けている完成度の高いものになっているのです。天才ならではの神業としか言いようがありません。 

2 A Day In The Life

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(1)ジョンが持ち込んだアイデア

John's handwritten lyrics for "A Day In the Life" from "Recording the Beatles"

「『A Day In The Life』は、ジョンが作って持って来たんだ。彼が1番を歌ってみせた。これもあの当時、僕たちが良くやったことなんだけど、曲のアイデアを持ち寄ってみんなに披露する。そして、一緒に座って作り込むというよりは、それをメンバーに渡して完成を目指す。ピンポンをやるみたいに誰かが良いアイデアを思いついたら、それを他のメンバーに渡しては返す。そんなやり取りをしながら、作品を作り上げていった。」

最初にこの曲想をメンバーに披露したのはもちろんジョンですが、その時は、まだ1番しかできていませんでした。そこからみんなで色々と意見を交換しながら、完成に近づけていったんですね。この頃は、まだ、そういったやり取りがあったんです。1968年になると、メンバー間の不協和音が高まり、そんなやり取りすら少なくなってしまいました。

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「みんなも知ってる通り、1番の歌詞は『I read a news today, oh boy』だった。僕たちはロンドンの部屋に座り込んで2番を完成させた。それから、ミドルをどうしようかということになった。」

「2番のエンディングの『I’d love to turn you on』という歌詞がとても先進的だった。それを上手くミドルに繋げられれば、何らかの効果をもたらすんじゃないかと考えた。それで、僕が作った別の曲の歌詞『Woke up, fell out of bed』を繋げて完成させた。」

確かに、2番のエンディングは、リスナーを不安に陥れるような歌詞とメロディーです。それをどう生かすかが課題だったわけですが、そこにポールが作った全く別の曲の断片を繋ぎ合わせて歴史に残る名曲を完成させてしまったところが、ビートルズの天才たる所以(ゆえん)ですね。

(2)オーケストラへの無茶振り

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「さらに壮大なフル・オーケストラを入れて、あのレコーディングになった。オーケストラのサウンドを次第に大きくするように指示した。僕は、色んな人にこれはアバンギャルドな曲だと語っていた。それで、オーケストラの全楽団員にクレイジーな注文を付けた。」

 

アバンギャルドという言葉は、元々は、フランスの軍事用語で「前衛」を意味します。つまり、陸軍の一番先頭の部隊のことですね。

そこから転じて、革新的、前衛的な芸術やその立場をとる芸術家たちを指すようになりました。今日では、既成の芸術観念や形式を否定する先端的な芸術の一般的呼称となっています。最近では、ファッション業界で良く使われています。

Paul McCartney conducts the orchestra for A Day in the Life

「楽団員たちは、普段は、自分たちが所属している交響楽団で、ベートーヴェンなどを演奏している一流の人たちばかりだった。彼らに、自分のペースで一番低いサウンドから初めて一番高いサウンドまで次第に音階を上げて演奏してくれと指示した。彼らは、みんな『この男は一体何を言っているんだ?』と困惑した顔で僕を見つめていたよ。」

「彼らにとっては困った注文だった。普通、オーケストラは、そんな演奏の仕方はしないからね。ちゃんと譜面があって、その通り正確に演奏するのが彼らの仕事だから。」

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クラシック音楽演奏家は、幼い頃から譜面通りに正確に演奏するようレッスンを受けてきています。特にオーケストラとなれば、指揮者の指示に従わなければならず、勝手にアドリブを入れることなど許されないのです。ですから、譜面もなしに好きなように演奏してくれと言われても戸惑うのも当然でしょう。

 

「プロデューサーのジョージ・マーティンがそのことに気づいて、譜面を書いてランダムに楽団員に渡したんだ。君はこの譜面、君はこの譜面というようにね。彼は、サウンドがどんな風になろうが構わず放っておいた。それでサウンドがカオス状態になって、アバンギャルド風な仕上がりになった。」

しかし、不思議なのはジョンが作った作品なのに、オーケストラの指揮をポールがやったことです。この曲が収録された「Sgt. Pepper~」というアルバム自体が彼の主導のもとに作られたのですが、こういったところにもその一端が現れているのかもしれません。

3 Hey Jude

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(1)曲を制作したきっかけ

「ジョンと妻のシンシアは離婚したんだけど、僕は、彼らの幼い息子(ジュリアン)をとても不憫(ふびん)に思った。それで、ある日、車を運転して彼とシンシアのところへ行った。僕は、運転しながらジュリアンのことを考えていた。そしたら『Hey Jules don ‘t make it bad. So it could be okay』というフレーズが思い浮かんだ。それは、彼を元気づけるための歌だった。」

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Julesというのは、ジュリアンのニックネームです。流石に実名を使うのはまずいので、Judeに変えました。

「それで、自宅に帰ってから曲を作り始めた。僕は、Judeという名前が気に入っていたんだけど、それがユダヤ人を意味する言葉だとは知らなかった。そのために僕は、トラブルに巻き込まれることになった。僕は、そのタイトルをPRのために、店のショーウインドウに貼りつけておいたんだ。」

(2)とんでもない騒動に発展

ちょうどその頃、ビートルズは、自分たちのレコードを販売をメインとする「アップル・コア」社を設立し、その自社ビルがオープンしたばかりでした。そして、ポールは、この新曲のPRのために、ビルの窓に曲のタイトルを貼り付けておいたのです。彼が何気なくやった行為が、後にとんでもない騒動を巻き起こすことになったのですが、長くなるので続きは次回で。

あ、「アップル・コア」じゃなくて「アップル・コープス」じゃないかと言われそうですが、英語ではコアと発音するのが正しいのです。スペルではcorpsとなっているので勘違いされがちですが(^_^;)

ビートルズがコンサートを開催したアメリカの「Shea Stadium」も「シェイ・スタジアム」と発音するのが正しいのですが、スペルに惑わされて日本では長らく「シェア・スタジアム」と誤記されてきたのと似ていますね。 

 

(参照文献)GQ

(続く)

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