- 1 映画が大ヒット!
- 2 なぜ大ヒットしたのか?
- 3 妄想を現実化した
- 4 あらすじ
- 5 オリジナルが17曲も登場
- 6 エド・シーランも参加
- 7 ジャックは屈辱を覚えた
- 8 この映画はとても完成度が高い
1 映画が大ヒット!
このブログの(219)でご紹介しましたが、ビートルズがいない世界を描いた映画「YESTERDAY」が、イギリスとアメリカの劇場で大ヒット公開中です。2016年6月末現在で興行収入が1700万ドルに達しました。しかも、映画を観た人の90%がレビューで高評価をしているということですから、クオリティーも相当充実していると思われます。
確かに、海外のビートルズファンの皆さんも、「とても良い映画だった」と高く評価する声が多いです。そこで、今回は予定を変更して、この映画についてお話しします。
2 なぜ大ヒットしたのか?
実は、私自身、まだこの映画を観ていないんです(^_^;)日本ではまだ公開されてないので。ただ、この映画の予告編を観た時に「これは面白そうだぞ。」という予感はしました。私の予想した通り大ヒットしたわけです。
「講釈師見て来たような嘘を言う」という諺があります。そうか、講釈師と言っても皆さん、知らない人が多いですよね(^_^;)講談という一人で物語を語る話芸があるのですが、最近、神田松之丞とい天才的な講釈師が登場し、講談に大変な注目が集まっています。私も実際に観たいと思ってチケットを取ろうとしたのですが、残念ながら取れませんでした( ノД`)
何が言いたいのかというと、私が講釈師になってこの映画を解説しようというわけです。私も今すぐ観たいのは山々なんですが、流石にそのためにだけ海外へ行くわけにもいきませんから(^_^;)まだ観てもいないのでちょっと気が引けるのですが、どうしてもこの映画の魅力を皆さんにお伝えしたいと思ったので。
3 妄想を現実化した
ビートルズファンであれば誰もが一度は、「自分がもしビートルズのメンバーだったら」とか「自分が彼らの曲を自分の曲として発表できたら」などといった妄想をしたことがあると思います。もちろん、それはあくまでも妄想の世界なのですが、この映画は、その妄想を現実化してリアルに体験されてくれるのです。
おそらく、この映画が大ヒットした背景の一つには、そういったビートルズファンが誰しも持つ妄想を現実化してくれたということがあると思います。主人公の姿に自分を投影した人も大勢いたでしょうね。
他方、今までビートルズを知らなかった人々は、「ビートルズって、こんな素晴らしい曲を作っていたんだ」と改めて認識できたとともに、もし、これらの名曲がなかったら、この世界がどれほどつまらなくなっていたのかを容易に想像できます。
つまり、ビートルズファンだけでなく、そうでない人にも幅広く受け入れられたんです。そういう意味では、これも過去に記事を書きましたが、日本で初めて舞台「BACKBEAT」が公開された時、観客として来ていたのは私のようなコアなビートルズファンだけではなく、若い女性を中心とした俳優さんたちのファンの皆さんにも好評だったことと共通するものがあるような気がします。
私は、映画やドラマがヒットする一番のポイントは脚本にあると考えています。脚本のプロットが、観客のツボにハマることがヒットの条件の一つです。その点、この映画のプロットは、まさに観客のツボにハマったということになるでしょう。
4 あらすじ
おさらいになりますが、もう一度映画のあらすじをご紹介します。
さっぱり売れない若い男性シンガーソングライター、ジャック・マリックは、夜に自転車をこいでいると車にはねられて気を失ってしまいます。目覚めると外観は全く同じなのですが、彼が住んでいる世界には一つの大きな変化がありました。つまり、そこにはビートルズが存在しなかったのです!
ジャックが友人たちの前でビートルズの名曲「YESTERDAY」を披露しました。そうすると彼らは、そのあまりの美しさに驚いただけではなく、初めて聴いたという信じられない反応を示したのです。
逆に彼の方が驚いて「これ、ビートルズのポール・マッカートニーの曲だよ」と応えると「誰?」と、友人たちからは信じられない反応が返ってきたのです。彼は慌てて自宅のパソコンに向かい、ネットで「BEATLES」を検索してみましたが、カブトムシが上がってくるだけです。メンバーの名前で検索しても何もヒットしません。それで、彼は、どういうわけか「自分がビートルズが存在しない世界に生きている」ことに気づきます。
彼は、ビートルズの曲を自分の曲だとして発表し、スーパースターに上り詰めます。いやあ、こんな気分を味わってみたいもんですね。自分が作った曲が次から次と大ヒットして、大勢のファンから圧倒的な支持を受けるんですから。しかも産みの苦しみは全くないんですよ。だって、オリジナルをそのままパクってるだけですから(笑)
5 オリジナルが17曲も登場
注目すべきなのは、ビートルズのオリジナル曲が17曲も登場することです。もちろん、誰にでも受け入れられるメジャーどころの曲ばかりで、コアなファンが喜ぶようなマニアックな曲は含まれていません。いわゆる「赤盤」「青盤」と呼ばれたベストアルバムに登場するような曲ですね。
オリジナル曲のほとんどは、アコースティックにアレンジされるという演出が施されていますが、それは、ジャックが一人のシンガーソングライターであるという設定にマッチしています。ただ、映画が現代社会を描いているということで、様々なアレンジがされているのですが、例えば、「Help!」のポップパンクアレンジは、ビートルズファンにはちょっと違和感があるようです。
この映画は、リチャード・レスターの傑作映画「A Hard Day’s Night」を想起させたり、「A Day in the Life」からインスパイアされた自動車事故のシーンが登場します。あるいは、「Strawberry Fields Forever」で象徴的なメロトロンオルガンを使用するなど、視覚的な効果も計算しています。
この辺りは、ビートルズファンにとっては懐かしさを感じさせる部分でもあり、彼らをよく知らない人にとっては新鮮さを感じさせる部分でもあるでしょう。一方ではビートルズファンの心をつかみながら、他方ではこれまでファンではなかった人のハートを虜にすることに成功しています。
6 エド・シーランも参加
ジャックは、デモ・アルバムをレコーディングしますが、ここで本物のエド・シーランが登場します。彼もガチのビートルズファンとして知られているので、多分、製作者側から出演をオファーされ、彼も快諾したのでしょうね。
彼のような若い才能あふれるアーティストが、ビートルズを愛してくれているというのは本当に嬉しいですね。そういえば俳優のジョニー・デップも大ファンで、彼の大ヒット映画シリーズの「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」にポールが彼の叔父役でゲスト出演していました。こういう大物同士の共演はとても嬉しいですし、羨ましくもありますね。
話を元に戻して、ジャックはエドに注目され、彼からの支援を受けて、ロッキーというちょっと間抜けだけど愛されキャラのアシスタントを雇います。エドは、「Hey Jude」という名曲のタイトルを「Hey Dude」に変えさせます。
Dudeというのはスラングで「男性」などを意味するようです。ナチスがユダヤ人の蔑称として使った過去があるため、リリース当初は人種差別だと勘違いされたこともありますから、ひょっとするとその辺りも関係しているのかもしれません。
ただ、ビートルズファンの中には、彼の「Shape of You」が映画の中で使用されていることに違和感を覚えた人もあるようです。「何でビートルズと何の関係もない曲を演奏する必要があるんだ?」というわけですね。そういう点で彼の出演をミスキャストだとして批判する人もいますが、その辺りは、皆さんがご自分の目で観て確認してください。
7 ジャックは屈辱を覚えた
ジャックは、念願のポップスターにはなれたものの、それと歩調を合わせるかのように惨めさも経験します。彼は、レコード会社のマーケティング会議に出席したのですが、トップレベルの幹部が彼を嘲笑し、彼が提案したアルバムのタイトルがナンセンスだというマーケティングの結果を明らかにしました。しかし、そのタイトルは、全てビートルズのアルバムのタイトルそのものだったのです。
彼はポップスターとして持ち上げられることに快感を覚えていましたが、次第にフェイクであることに嫌気がさしてきます。彼は、「オイルにまみれたロックマシンの中の重要な部品」に過ぎず、絶え間なくスポットライトを浴び続けることや、楽曲を変更しろという要求を出され続け、自分は本当にこんなことをしてていいんだろうかと疑問を持ち始めます。
スターダムにのし上がった彼に好意を寄せる女性が登場したことで、恋人のエリーとの距離も次第に離れていき、そのことが彼を一層苦しめます。
8 この映画はとても完成度が高い
いくつか突っ込みどころはあるにせよ、この映画の完成度が高いことに違いはありません。その一つには、ジャックの恋人のエリー・アップルトン役として登場するリリー・ジェイムズの魅力があります。私の勝手な憶測ですが、ある意味、ジョンの最初の妻であったシンシアに似通ったところがあるのかもしれません。
何より重要なことは、数多くのビートルズの曲を聴けることです。ジャックを演じたヒメーシュ・パテルは良い声をしています。そして、彼とジェイムズは、何か月もの間、ビートルズの曲を練習していたのでしょう。
この映画を観ることで、「この世界にビートルズが存在してくれてありがとう」というこの上もない感謝の気持ちが湧いてきます。これまで何度も聴いてきたすべての曲が新鮮な驚きを呼び起こし、今でもなお光り輝くビートルズが存在していることを認識させてくれます。
映画を観終わった後、何とも言えない心地良い余韻に浸ることができます。そこに存在したのはあり得ない妄想の世界でしたが、それでもいいんです。ファンは、再び現実の世界に戻り、ビートルズのCDやレコードを聴きます。ビートルズを知らなかった人たちは、新たにCDを買うかダウンロードするでしょう。
以上、まだ映画を観ていない講釈師の講釈でした(笑)日本で公開されるのは10月です。実際に観たら、今度は本当のレビューを書きますので、それで勘弁してください💦
(参照文献)FILM SCHOOL REJECTS
(続く)
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