★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

映画「Get Back」がいよいよ公開される(号外)

THE BEATLES のドキュメンタリー映画『THE BEATLES: GET BACK』の予告映像が公開! | indienative

1 全世界が待ち望んでいた

(1)ディズニー+での配信

youtu.be

2021年11月25日から27日にかけて、全世界が待ち望んでいた映画「Get Back」がいよいよ公開されます。劇場ではなくディズニー+での配信という形になりました。

この映画は、1970年公開の映画「Let It Be」で撮影されたフイルムをピーター・ジャクソン監督が再編集して制作したものです。ビートルズの舞台裏に密着した三部作で構成された新しいプロジェクトであり、ファンが50年間待ち望んでいたドキュメンタリーです。今回は、予定を変更してこの映画についてお話しします。

タイトルは「The Beatles:Get Back」ですが、この映画の制作にかかった時間や苦労を考え合わせると正に「The Long and Winding Road」と呼べるものでした。制作に実に4年を費やし、56時間の未公開映像と150時間の音声を収録したこの作品は、これまでにない壮大な音楽ドキュメンタリーとなっています。

(2)ゲットバック・セッションの全記録

1969年1月にトゥイッケナム・スタジオでレコーディングされた、いわゆる「ゲット・バック・セッション」は、非常に野心的な構想から生まれました。ビートルズは、わずか2週間で、久々のライヴのために14曲もの新曲を制作することを計画していました。

そのうちの何曲かは、同年にリリースされたアルバム「Abbey Road」に収録されましたが、大部分は「Let It Be」に収録されました。カメラの後ろにはマイケル・リンゼイ=ホッグ監督がいて、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴがリフを演奏したり、リハーサルをする様子を臨場感たっぷりに記録していました。

 

2 52年前の映像を再編した

(1)膨大な記録映像が残されていた

f:id:abbeyroad0310:20211124005918p:plain

ピーター・ジャクソン監督

「私が作ったこの映画で最も注目すべきことは、私が何をしたかということではない。」とジャクソンは、控えめに語りました。「マイケル・リンゼイ=ホッグが52年前にこの映像を撮影したという事実だ。そして、その大部分は、52年間金庫に保管されていた。」

つまり、彼が新しく映画を撮影したわけではなく、あくまでも「リンゼイ=ホッグが52年前に撮影した膨大な記録フィルムを編集し、新たな視点から新しい作品として現代に蘇らせた。」ということです。決して「Let It Be」で公開されたものがすべてではなかったんです。しかし、多くの人はあれがすべてだと思っていますよね。それが映像の持つ力です。

(2)埋もれたお宝を発見した

ロード・オブ・ザ・リング」でアカデミー賞を受賞したジャクソンは、相棒である編集者のジャベス・オルセンとともに、ビートルズファンなら誰でも見たいと思うような素材を選別する特権を得ました。

「埋もれたお宝を発見する考古学者のような気分だった。」とオルセンは語っています。できれば、その編集の場面に居合わせたかったですね(笑)すべての記録フィルムを見られたのは彼らだけですから。

 

3 日常の一コマのように名曲を制作した

(1)ビートルズにとっては日常だった

www.youtube.com

音楽監修を担当したジャイルズ・マーティンは、「その日常的なところが、この映画の最も魅力的な点だ。」と語っています。「彼らは、お茶を飲んだり、ワインを飲んだり、マーマイト・サンドイッチ(ビールを作った後の酒粕のようなものをトーストに塗ったサンドイッチ)を食べながら、代表的な名曲を演奏するのだ。」

ここですよね、ビートルズの偉大なところは。彼らは、あたかも普通の人がお茶を飲むかのように、名曲をサラッと制作して演奏してしまうのですから。

トレイに乗せられたサンドイッチとお茶を囲みながら、ポールが目の前で「Get Back」を制作したり、ジョージが「Something」の作曲中に「Attracts me like no other lover」というフレーズを探すのに苦労したりする様子は、彼らの天才的な音楽活動を見事に表現しています。「あの名曲は、こんな風にして出来上がっていったんだ。」と思うと興奮せずにはいられません。

(2)普通の人々にとってはマジック

「普通の人が普通じゃないことをしているんだよ。」とジャイルズは付け加えます。「誰でもできるというXファクター(特殊な才能)の概念が消えてしまったんだ。誰にでもできるわけではないということを証明していると思う。」ビートルズは、普通の人が呼吸するように名曲を制作しました。彼らにとっては日常のことが、普通の人々にはマジックでしかなかったのです。

 

4 ゲットバック・セッションを再評価

(1)低く評価されがちだったが

The Beatles: Get Back: Beatles, The, Jackson, Peter, Harris, John,  Kureishi, Hanif, Russell, Ethan, McCartney, Linda: 9780935112962: Books -  Amazon.ca

7時間を超える本作では、バンドがコンサートに向けて日々を過ごし、プレッシャーが高まっていく様子が描かれています。「単なるバンドのリハーサルではない。」とオルセンは語っています。

「ただバンドがリハーサルしているだけではなく、多くの人々が交流し、会話している。」「ビートルズは、どこで演奏するのか?それはコンサートなのか?海外ツアーなのか?といったことが議論される。あるメンバーにはやりたいという意思が見えているが、他のメンバーは行きたくないと思っていることが分かる。このような展開を見るのは、とても興味深い。」

この作品は、この時期におけるビートルズのキャリアを再評価するものでもあります。ゲット・バック・セッションや、1970年の映画「Let It Be」は、これまでずっとその4月に起こったバンドの解散と結び付けられ、必ずしも正当に評価されない宿命にありました。

(2)「Let It Be」は悪い映画ではない

「『Let It Be』は悪い映画ではない。」とジャクソンは語っています。「マイケルの映画は、ゲット・バック・セッションの悲惨さという神話のようなものにがんじがらめにされていると思う。」解散にまつわる暗いドロドロとしたものが、どうしても作品と結びついてしまった結果、セッション自体も低く評価されがちでした。

「ジャクソンの映画が示すように、それは根拠のない評判であり、バンドは、おおむね良好だったが、誰もがそう感じていたわけではない。父は『Let It Be』について、とても複雑な感情を抱いていた。」と名プロデューサー、ジョージ・マーティンの息子のジャイルズは語っています。

ジョン・レノンが『このアルバムにはあんたのような手の込んだクソみたいなやり方は要らない。』と言ったために、実質的に父がビートルズから解雇されたプロジェクトだったからだ。私は、この作品を観て、彼らがライヴ・アルバムを制作しようとしていたのだと理解した。」ジョンの言い方には相変わらずトゲがありますが(^_^;)、要するにできるだけ生の音源を使いたいということですね。

(3)喜んだポールとリンゴ

「彼らが完成品を見たとき、私は、彼らがどんな反応を示すのか期待していた。私を驚かせるようなことも、怒らせるようなこともなかった。何も言われなかったことに驚いたよ。」彼の作品は、残されたビートルからもお墨付きを得ています。

100分のカット版がロンドンで華やかに上映された翌日、映画や最近のアルバム「Let It Be」の再リリースに合わせて音声のリマスターに尽力したジャイルズは、ポールの喜び振りをこう語りました。「彼がビートルズのプロジェクトにこれほど熱中しているのを見たのは初めてだよ。」ポールもよほど嬉しかったんでしょうね。何しろ、「ビートルズは、ポールの脱退宣言で解散した。」と言われ続けて来たのですから。

もちろん、リンゴもわが意を得たりと大いに喜びを表しました。「いい時も悪い時もあったけれど、そんな中でもピーター・ジャクソンの編集版を観れば分かると思うが、我々は、『Let It Be』では見せなかった楽しさ、喜び、ふざけ合い、シャウトをしていたんだ。それが4人の男たちがやったことだったんだよ。私は、いつも言っているが、4人の男が部屋にいればそこにはたくさんの喜びがあったんだ。」

 

5 クライマックスはルーフトップ

(1)クライマックスへ向けて

Wonderful Color Photographs of The Beatles' Rooftop Concert in 1969 ~  Vintage Everyday

名マネージャー、ブライアン・エプスタイン亡き後のビートルズについてジャクソンは、こう語っています。「彼らは、普通なら用意されるはずのサポートチームなしで活動していた。今日に至るまで、映像を見ても、誰が彼らをサポートすることになっていたのか分からない。彼らは、少し混乱していたように思える。」

しかし、このような状況にありながらも1969年1月30日、アップルのビルの屋上でビートルズが最後のライヴを行った日に、自分たちの曲を公衆の面前で披露し、それがこの映画のクライマックスとなっています。オルセンは、こう語っています。「これは、現在入手可能なビートルズのコンサート映像の中で、最高のものだと思う。彼らは、皆、興奮していて、その様子にとても感激している。彼らは、世界の頂点に立っているのだ。」

このライヴの様子は、屋上や路上に設置された複数のカメラで撮影されており、観客の驚いた様子を捉えています。また、アップル屋内のホワイエの壁には隠しカメラが設置されており、スタッフが警察に対応している様子が撮影されていました。「この警官たちの何人かには、1969年を振り返って最優秀新人コメディ賞を受賞すべきだと思う。だって、本当に面白いんだから。」とオルセンは語ります。

(2)ドラマの面白さとは

ジャクソンにとって、本当のドラマは、ステージ上ではなくその外にあります。「人の性格や個性を知るには、彼らが問題にどう対処するかを見るのが一番なのだ。」と彼は語っています。なるほど、そこに人間性が現れるわけですね。

最後にジャクソンは、こう締めくくりました。「どちらかというと、私は、彼らをより尊敬するようになった...ビートルズに対する見方が変わった。私にとって、もはや彼らは特別な人ではない。私は、彼らを人間として考えている。このプロジェクトが、彼らを人間として考える機会を私に与えてくれたことに感謝している。」

ジャクソンは、映画の制作を通して「人間としてのビートルズ」の息遣いを見届けたのでしょう。どうしても、解散の暗いイメージが付きまとうため、アルバムも映画も低く評価されがちな「Let It Be/Get Back」セッションですが、今回の映画で再評価すべきなのかもしれません。

(参照文献)アイ・ニュース

( 続く)

この記事を気に入っていただけたら、下のボタンのクリックをお願いします。

にほんブログ村 音楽ブログ ビートルズへ
にほんブログ村

下の「読者になる」ボタンをクリックしていただくと、新着記事をお届けできます。