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映画「YESYRDAY」制作の裏話~エド・シーランは二番手の候補だった(431)

 

映画「YESTERDAY」のワンシーン

1 もしもビートルズを自分だけが知っていたら

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映画「YESYRDAY」(監督:ダニー・ボイル、脚本:リチャード・カーティス)は、2019年に公開された、英米の合作でビートルズを題材にしたファンタジックなラヴ・コメディーです。ある日突然、全世界からビートルズと彼らに関する一切のデータが失われ、人々の記憶からも消えてしまいます。しかし、売れないシンガーソングライターのジャック・マリック(ヒメーシュ・パテル)の記憶には奇跡的に残されていました。

当初こそ突然の出来事に戸惑いを覚えたジャックでしたが、やがて全世界で自分だけがビートルズを知っていることがいかにとんでもない幸運であるかに気づきます。彼は、世間が知らないことを良いことに、ビートルズの楽曲を自分のオリジナルとして発表します。始めのうちは誰も注目しませんでしたが、やがてエド・シーラン(本人)の目に止まり、そこから一気にスターダムに駆け上がります。

この映画の世界での興行収入は1億ドルを超えるという大ヒットになりました。ビートルズの楽曲を独り占めするなんて、ファンなら一度は妄想してみる夢の世界ですね。今回は、この映画制作の裏話についてご紹介します。

 

 

2 撮影初日は隠しカメラで撮影した

(1)わざとくだらない曲を作った

売れないシンガーソングライターだったジャック

映画の冒頭では、ジャックはまだ売れないシンガーソングライターであり、ストリート・ミュージシャンとして演奏しながら僅かなお金を稼いでいました。そのシーンにリアリティーを持たせるため、撮影スタッフは、パテルにイギリスの東海岸の街であるクラクトン・オン・シーで何も知らない一般客に聴かせるために、くだらない曲を作らせました。

ーティスは、BTTVの取材にこう答えています。「初日は、僕らが作った『サマー・ソング』っていう最低の曲を彼が歌ったんだ。おもしろかったよ」確かに、ここで素晴らしい曲を歌ってしまったら、売れないシンガーソングライターという前提が崩れてしまいます。しかし、そのためにくだらない曲を作らなければならなかったというのは、いくら映画制作のためとは言え辛い作業ですね。誰が聴いても良いと思う曲を作るのが本来の作曲ですから。

(2)上手いと褒められた

パテルは、撮影の初日でもあったこのちょっと恥ずかしい瞬間を思い出しながら、ギターを弾くだけでなく自分でも歌っていたため、何人かの観客は、彼を本物のストリート・ミュージシャンだと思ったと語りました。「後で聞いたんだけど、誰かが通りかかって『あれは誰だ?』って聞かれたので、クルーのひとりが『あれはジャック・マリックだ』って答えたら『彼、うまいよね?』って言われたんだ」

面白いですよね。いかに売れない シンガーソングライターとはいえ、後にビートルズの曲をコピーしてスーパースターになるわけですから、ヴォーカルも演奏も上手くないとできません。一般の人が聴いてうまいと思うほどのクオリティーがなければ、そもそもこの映画自体が成立しませんから。

 

 

3 映画の構想はボリウッドからヒントを得た

(1)偶然の産物だった

ダニー・ボイル監督

ダニー・ボイルリチャード・カーティスの監督・脚本チームは、まるで運命的に「YESYRDAY」で結ばれたかのようでした。カーティスは、BTTVの取材に対し、ダニーが脚本を書き終えた後、文字通り偶然に手紙をくれたのだと説明しています。「彼は、私が完成させた(彼に監督してほしい)作品はないかと尋ねてきた。それで彼にそれを送ったんだ。」

ボイルは、カーティスが彼に脚本を送った後、オーディションみたいな「採用」の瞬間はなかったと付け加えました。彼は、こう振り返っています。「突然、自分がやっていて、他の誰もやっていないことに気づくんだ。それは、他よりもいいやり方だと思うよ。」

この映画の制作は、最初から企画されたものではなく、偶然の産物だったということです。たまたまカーティスが脚本を書き上げていましたが、特にそれを具体化しようというつもりもなく、そのままにしておきました。そこへボイルから連絡があり、何か映画化できる脚本はないかと尋ねられたので、それならこんなのはどうだと送ってみたら「これはおもしろい」とボイルが飛びついたわけです。

(2)ボリウッド・スタイル

脚本を担当したリチャード・カーティス

オスカーを受賞した経験のあるボイルは、ボリウッドからインスピレーションを得て、リチャード・カーティスに「YESYRDAY」の構想を売り込みました。皆さん、「ボリウッド」ってご存知ですか?インド映画産業のことですが、インドのボンベイとハリウッドを合成した造語です。

彼は、こう説明しています。「私は、インドのムンバイで働いていたのだが、そこでは映画スターが監督のオーディションをするんだ。自分の映画に映画スターを出演させたいなら、(監督として)彼らの家に行き、彼らとその家族の前で映画を演じるんだ。」

ボイルは、インドでの経験からそのようなスタイルを理解していました。映画会社の重役がボイルに監督を依頼すると、彼は、プロデューサーや脚本家と話します。「この場合、私は、脚本家のリチャード(・カーティス)と話をして、『私はこうする』と説明したんだ。というのも、彼らがそれに同意しない限りやる意味がないからだ。雇われたようなものなのに、自分で売り込みに行くわけだ。『あなたが私を雇うなら、こんな映画ができあがるよ』ってね。」ボイルの売り込みは成功し、カーティスは映画制作に同意しました。

 

 

4 パテルは救急病院へ入院した

ルーフトップで「Help!」を歌うジャック

カーティスは、マリック役のオーディションを行った時に、彼とボイルが「20人から25人」の面接を行ったと語り、パテルを見つけられたのはとても幸運だったと振り返っています。彼は、こう語っています。「ヒメシュは、とてもエキサイティングだった。突然、この完璧で、優しくて、控えめな声で、ユーモアのセンスもある男が入ってきたんだ」彼がイメージしていたジャックにピッタリだったんですね。

ボイルもカーティスもパテルの演技に感心していましたが、実は、彼は、オーディション当日に体調を崩していました。役をオファーされた後、救急病院に入院していたのです。オーディションが終わった後、彼は、体調不良のためベッドに横たわり、監督からの電話を待っていました。自分でも「何が起こっているのかよくわからなかった」と認めています。

パテルは、こう説明しています。「ダニーから電話がかかってきて、楽しく話をして出演をオファーされたんだ。」飛び上がるほど素晴らしいニュースのはずでしたが、「僕は、猫と合格を祝っていたんだけど、具合が悪くて、友達が来て、シャンパンの代わりに清涼飲料水を飲んで吐いたんだ。」

「それから、ガールフレンドが帰ってきて、僕は元気になっていたんだけど、また具合が悪くなって、『もう寝なきゃ』って思ったんだけど、眠れなくなって震えてた。それで、ガールフレンドが救急に電話して、『救急病院に行った方がいいと思う』って言ったから行ったんだ。でも、どこも悪いところはなかった。僕は、とても健康状態は良好で看護師も彼は元気だと言っていた。僕らは、たぶん映画の主役になれたことで具合が悪くなったんだろうとは、看護師には言えなかったよ」相当なプレッシャーがかかっていて、オーディションが終わった途端に一気に噴き出たんでしょうね。

 

 

5 エド・シーランは二番手の候補だった

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この映画では、エド・シーラン本人がジャックの音楽業界への指導者兼ガイド役を演じており、ジャックは、シーランのツアーでのオープニング・アクトをオファーされています。ボイルは、シーランの役をコールドプレイのクリス・マーティンにオファーしたのですが、スケジュールの都合で出演できないと断られました。そこで、エドにオファーが来たわけです。

エドは大喜びしたでしょうが、クリスはさぞ残念だったでしょう。もちろん、ボイルがエドにオファーをかけたときは、実は二番手だったなんてことは言うはずがありません。しかし、エドは、ボイルがマーティンを出演させられなかったことをからかいました。ということは、彼は、どこからか情報を得ていたのでしょうか?エンタメ業界は広いようで狭いですからね。

ボイルは、BTTVに次のように語りました。「元々はクリス・マーティンに出演してもらう予定だったんだが、エドがそのことで我々をからかったんだ。我々は、エドが二番手であることを彼に隠して『あなたは私たちの第一候補のエドだ!』と言ったんだ」

すると彼は、「違うよ。あなたたちは、最初にクリス・マーティンにオファーして、次にハリー・スタイルズに聞いて、僕は三番目だろ」と言い、僕らは「それは絶対に違う、二番目にハリー・スタイルズに聞いたわけじゃない。君が二番目だ!」

ボイルたちは、最初にエドが第一候補だと言っておきながら、エドにからかわれて彼が二番手だったことを思わず漏らしてしまったのです。その場は、爆笑になったでしょうね。しかし、エドの演技はプロの俳優並みに素晴らしかったです。結果的にこの役は彼で良かったと思います。

長くなるので続きは次回で。

(参照文献)BT

(続く)

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