★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

映画「YESTERDAY」のレヴュー(後編)(ネタバレあり)(号外)

1 終止符を打つ時が来た

(1)他にもビートルズを知っている人が

ある日、彼の楽屋に彼の曲が盗作だと主張する二人の男女が訪ねてきました。そうです、ずっと彼を不審な目で見つめていた男女です。

実は、彼らもビートルズの存在を知っていたのです。ジャックは、自分と同じくビートルズを知っている人が存在したことを喜ぶと同時に、彼らから激しく非難されると覚悟しました。

しかし、彼らは、非難するどころか、むしろ、ビートルズの曲を残してくれて感謝していると告げたのです。彼らには演奏する能力がなかったため、ジャックが演奏してくれることで、ビートルズの楽曲が後世に残されることを喜んでいたのです。

(2)真実を告白

昨日の映画2019:リリー・ジェームズとヒメシュ・パテル

悩んでいたジャックは、ついに決断しました。ライヴの最後に観客に向かって自分が発表した曲は全て盗作だったと告白し、インターネットに無料で曲をアップロードしました。同時にこっそり会場に呼んでいたエリーにサプライズでプロポーズしたのです。

エリーと婚約していたギャビンも潔く身を引いてくれ、晴れてジャックとエリーは結婚しました。その後は「オブラディ・オブラダ」の世界です。


Ob-La-Di, Ob-La-Da (Remastered 2009)

(3)ジョンは生きていた


Yesterday: John Lennon scene HD

その後、ジャックは、ジョン・レノンロバート・カーライル)に会いました。ここでは、彼は、78歳の一般の老人になっていました。本物のジョンそっくりというか、彼が生きていたらこんな感じだったのかなと思わせます。

ジョンを演じたカーライルは、ジョンのことをとても尊敬しています。サフォーク沿岸にある小屋での撮影の時、ボイル監督は、意図的にジョンとジャックを事前に会わせませんでした。ジャックがジョンに初めて出会うというシーンをリアルに描きたかったからです。

「パテルは、ドアが開いて初めてジョンを見た。」その後、向き合って語り合う二人の間を夕日が静かに沈んでいく時、ジョンは、シルエットとして浮かび上がりますが、それは監督が詩的に描写したイメージでした。「あのシーンは、我々に与えられた小さな贈り物だった。」とボイルは語っています。

ここでジョンを登場させたことについては、賛否があるかもしれませんが、おそらく、監督と脚本家による「ジョンに生きていて欲しかった。」という観客へのメッセージなのではないでしょうか?彼に生きていて欲しかったという気持ちは、誰もが持っています( ノД`)

 

2 映画の中で使用された楽曲

映画の中では「Yesterday、Let It Be、I Want to Hold Your Hand、She Loves You、I Saw Here Standing There、In My Life、Back in the USSR、The Long & Winding Road、Here Comes The Sun、Something、A Hard's Day Night、Carry That Weight、Hey Jude、Help!、All You Need is Love、Ob-La-Di, Ob-La-Da」の16曲が使用されました。

しかし、楽曲としては使用されなかったものの、エピソードの中に織り込まれた楽曲がたくさんあります。皆さんは、どれだけ気がつきましたか?

「A Day in Life」のオーケストラは、ジャックがバスに衝突する直前に流れます。彼は、エリーが学校で授業中に教室の窓を叩いて彼女を呼びますが、それは「Maxwell's Silver Hammer」を思い起こさせます。

ジャックは、スーパーでアルバイトをしている時に「Nowhere Man」の歌詞を思い出します。LAでレコーディングするとき、ギターを泣かせたいと言いますが、これは「While My Guitar Gently Weeps」のことですね。

彼がリヴァプールを訪問すると、「Eleanor Rigby」「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」が登場し、エリーから別れを告げられるシーンは「Hello, Goodbye」を想起させます。「Yellow Submarine」と「Octopus's Garden」も登場します。

3 ビートルズ以外に消えたもの

(1)あれもこれも消えた

ここで映画をご覧になった皆さんに質問します。この映画の中でビートルズ以外に消えたものは何だったでしょう?

そう、コカコーラとタバコですね。ジャックがエドのプライベートジェット機の中で、フライト・アテンダントに対し「コーク」をくれと頼んだところ、怪訝(けげん)な顔をされました。なぜかコカコーラは存在せず、ペプシコーラだけが存在していたんです。また、ジャックは、ロッキーにタバコをくれと頼みますが、「タバコって何だ?」と変な目で見られます。

これは私の想像ですが、コカコーラとタバコがなくなった理由は何となくわかります。コカコーラは、ビートルズが初めて主演した映画「ハード・デイズ・ナイト」の1シーンで登場します。ジョンがコーラの瓶を鼻の穴に押し当てているところですね。

もう一つあります。そう、「Come Together」の歌詞の中に登場しますね。


The Beatles - Come Together (2019 Mix / Audio)

それから、タバコは、ビートルズが好きで盛んに吸っていました。どうやら、彼らと関係が深かったものがなくなったという設定のようです。特にジョージはタバコが好きで、吸い過ぎで普段でもよく咳き込んでいました。

彼は、肺がんと脳腫瘍で亡くなりましたが、その原因はタバコの吸い過ぎにあったのかもしれません。「タバコさえなければ、ジョージが肺がんで亡くなることもなかった」と脚本家が考えたというのは、あまりにうがちすぎでしょうか?

(2)ハリー・ポッター

そうそう、もう一つ無くなったものがあります。ハリー・ポッターです。ジャックは、エリーに愛を告白し、二人はようやく結ばれます。翌朝、「ヴォルデモートを倒したハリー・ポッターみたいな気分だ。」とジャックが語ると、エリーは「誰?」と聞き返します。

これもあくまでも想像ですが、ハリー・ポッターの作者であるJ・K・ローリングが、メガネをかけたジョンをイメージして、主役のハリー・ポッターの姿を描いたのかもしれません。ジョンのトレードマークともいえるあの丸メガネですね。

「john lennon」の画像検索結果

主人公がスーパーヒーローの魔法使いですから、普通ならメガネはかけさせませんよね。しかし、あえてメガネを、それもジョンが愛用した丸メガネをかけさせた。それに、ジョンもハリーも叔母に育てられたなど、共通点が沢山あるんです。

特に、大人になったハリーは何となくジョンに似ていますね。ひょっとすると、ローリングは、ビートルズ、とりわけジョンのファンなのかもしれません。

どちらにしても、ジョンハリー・ポッターとは類似点が色々とあるので、ビートルズが存在しなくなればハリー・ポッターも存在しなくなる、ということなのではないでしょうか?あくまで想像ですよ(笑)

(3)オアシスも

そうそう、オアシスも存在しないことになっていました。ジャックが検索しても、砂漠のオアシスしかヒットしませんでしたから。しかし、友人が「Fix You」を褒めていたことから、コールドプレイは存在したことになっています。

オアシスは、楽曲の中にビートルズの歌詞やタイトルをそのまま取り込んでいることで有名ですね。例えば、「Supersonic」という曲の歌詞の中に「Yellow Submarine」がそのまま登場します。そんな例は、他にもたくさんありますから、ビートルズが消えたことで彼らも消えたのは分からなくもありません。


Oasis Supersonic lyrics

これらがなくなった理由は、映画の中では一切明かされません。おそらく脚本家は、謎のままにしておいたほうが面白いと思ったのでしょう。

 

4 カットされたシーン


Yesterday Deleted Scene - "Something" on James Corden Show

(1)トーク番組のシーン

ジャックは、イギリスの人気司会者ジェイムズ・コーディンのトーク番組にゲストとして招かれました。彼が実際にMCを務めているトーク番組で、ポールと一緒に彼の故郷を訪れたシーンは楽しかったですね。日本のCMにも登場していました。

ジャックの隣には、美しい女優ロクサーヌ(アナ・デ・アルマス)もゲストとして座っていました。ジェイムズから「君は、ここで今すぐ何か曲を作ってくれると思うんだ。ロクサーヌをイメージして。」と無茶振りされます。

そこで、ジャックは「Something」を披露します。素晴らしい「即興曲」を聴いたスタジオの観客達は、スタンディングオベーションで割れんばかりの拍手を送りました。ロクサーヌもジャックに完全に惚れ込んだ様子です。そのシーンをテレビで観ていたリリーは、もうジャックとの仲は終わったと感じました。

(2)なぜ、カットされた?

しかし、予告編では公開されていたこのシーンが、公開された映画ではバッサリとカットされていたのです。なかなかいいシーンだったのにもったいないですね。なぜだか分かりますか?

理由はごく単純なことで、コーディンが「Something, right now!(何か、曲を作ってくれよ、いますぐ)」とセリフを言ったんですが、これでジャックが歌う曲が「Something」だと映画を観ているファンにバレちゃうってことに編集の段階で気づいたんですね(^_^;)

もちろん、コーディンは、台本通りにセリフを言ったんだろうと思います。ということは、そもそも台本がまずかったということですね。これは別に珍しいことではなく、出来上がってみてはじめて分かるということも多いんです。

(3)ほとんど無名に近かったパテルを抜擢

ヒメーシュ・パテルは、この映画の主演に決まるまでは、実績はあるもののそれほど有名な俳優ではありませんでした。主人公のジャックを演じるためには、単にヴォーカルとギター、ピアノができるだけではなく、相当なクオリティーを要求されます。

オーディションの時にボイル監督が「この男だ!」と直感したのですが、あまり知られていない俳優を主役に抜擢するのは相当勇気が必要だったと思います。しかし、逆に、有名な俳優だったらそのイメージが付いてしまっていますから、観客が映画に感情を移入するのは難しかったかもしれません。何より彼のヴォーカルは、ビートルズの楽曲にとてもよくマッチしていました。

出演が決まってから約2か月半、パテルは、徹底的に演奏の練習に取り組みました。クオリティーが低ければ、映画全体の評価が下がってしまいます。監督の期待に応え、彼は、見事に演技と演奏の両方を成立させました。

5 ビートルズが存在しない世界は想像できない


The Beatles - Let It Be - Let It Be (STEREO REMASTERED)

この映画を観てビートルズがこの世に存在してくれてよかった」と思った人がほとんどでしょう。ビートルズのファンはもちろん、そうでない人にとっても、ビートルズがかけがえのない存在であることを思い起こさせてくれました。それに、オアシスのようにビートルズに触発されてミュージシャンになったアーティストは世界中にいますから、ビートルズがいなければ彼らも存在しなかったことになってしまいます。

ところで、もし、あなたがジャックと同じ立場に置かれたとしたらどうしますか?彼と同じように、ビートルズの楽曲を自分の作品だとして発表しますか?それとも自分の中にそっとしまっておきますか?

私は…ナイショにしときます(笑)

 

(参照文献)BBC NEWS, SCREEN RANT

(続く)

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