- 1 ビートルズもミスを犯した?
- 2 I Want to Hold Your Hand
- 3 I Saw Her Standing There
- 4 Hold Me Tight
- 5 Ticket to Ride
- 6 I’m Looking Through You
- 7 Hey Jude
- 8 Dig a Pony
- 9 The Long and Winding Road
1 ビートルズもミスを犯した?
(1)ビートルズも人間だった
ビートルズは、世代を越えた世界的なスーパースターです。コンサートならともかく少なくともレコーディングに関して、彼らが演奏をミスしたことはほとんどないと思われるかもしれません。もちろん、レコーディングの時は一発で採用されたテイクもありますが、何度もやり直したテイクがたくさん記録されています。レコードは、そういった過程を経てさらにメンバーだけでなくプロデューサーやエンジニアなど多くのスタッフのチェックを通してリリースされます。
とすれば、少なくともレコードとしてリリースされた音源については、テイクとして不満が残るものがあったとしても、ミスは絶対にないはずですよね。ところが、どうもミスが見過ごされて、そのままマーケットに出回ってしまったものがあるようなのです。ただ、誰が聴いても明らかにミスだと分かるようなものはさすがにありません。「言われてみればそうかも」という程度です。
それはそうですよね。誰が聴いてもミスだと分かるような代物を世の中に出すはずがありません。あるいは、リリースする時点でミスがあることに気がついていたかもしれませんが、スケジュールが決まっている以上、遅らせるわけにもいかないのでそのまま出したとも考えられます。
それに彼ら自身も一部の例外を除いて公表してません。そりゃ、「ミスってました」なんて言えませんよね。
(2)指摘されてきたミス
ここでご紹介するのは、ビートルズがレコーディングでミスったのではないかと指摘されている曲あるいはその箇所です。必ずしもアンチの人々が指摘してきたわけではなく、むしろ、ファンの人ほど熱心に聴いているので、ミスに気付いたのではないかと思います。私も確信があるわけではないので、ミスであるかどうかの判断は皆さんにお任せします。
仮にミスが本当だったとしても、ある意味ではしかたなかったといえます。特に前期のビートルズにはレコードを完璧にするための時間がありませんでした。EMIスタジオで丸一日を過ごすことができなかった時代、ビートルズは、コンサート、プロモーション出演、映画撮影、インタヴューに終われ、殆ど眠る時間もない殺人的なスケジュールの中で素早くレコーディングする必要がありました。突貫工事だったためミスが見過ごされてしまったところはあるかもしれません。
ただ、ライヴを一切やめてスタジオでのレコーディングに多くの時間を費やすようになってもミスがあったのは、1960年代というそういったことに対する鷹揚な時代であったことと、チェックできる技術が十分に発達していなかったことがあるからかもしれません。今ならコンピュータで簡単にできる作業でも、当時は全て手作業でしたから。指摘されてきたのは、歌詞の間違い、演奏のミスなどです。今回はミスと指摘されてきたものをいくつかご紹介します。耳の良い人ならわかるかもしれません。
2 I Want to Hold Your Hand
アメリカでビートルズをブレイクさせたこの曲は、歴史上最も研究され、注目されている楽曲です。一般人でもかなりの回数を聴いていると言っても過言ではありませんし、アレンジを細かくチェックしていない限り、この曲は、1964年当時のサウンドと同じように完璧なままです。
しかし、最初のヴァースとコーラスの後でミスっている箇所があります。ジョンとポールは、2番目のヴァースの2行目(約33秒)の冒頭で、ジョンが「you」と歌っているのに、ボールが「I」と歌っているように聴こえます。2番目のコーラス(約44秒)でもボールが「I」と歌っているように聴こえます。言われてみればそうかな程度ですが、耳の良い方なら聴きとれるかもしれません。
歌詞が英語だし、コーラスの部分なのでよけいに聴き取りづらいです。ただ、ライヴ・ヴァージョンでは正確に聴き取れるのでやはりミスなんでしょうね。ヴォーカルだけを独立させたトラックを聴いてみると、確かにそうかなという気はします。
3 I Saw Her Standing There
ジョンとポールは、どちらが正しいヴォーカルを歌っているか競い合っているように聴こえます。「I wouldn't dance」と「I'll never dance」のバトルは1分24秒から、「Since I saw」と「When I saw」のバトルはその数秒後から聴くことができます。ビートルズは、この曲のレコーディングに手こずり、何回もテイクを重ねました。ポールの「1,2,3,ファ〜」というエキサイティングなカウントダウンは、テイク9でレコーディングされたものです。何度もミスしてテイクを重ねたため、イライラしたポールがうっぷんを晴らすかのようにカウントしたのがかえって迫力を生んだのは面白いですね。
4 Hold Me Tight
ジョージは、ハーモニーが上手いのですが、この曲では珍しく1分27秒の「hold」でハーモニーに失敗しており、最終的なカットではかなりひどいヴォーカルのミスを残しています。さらにジョンは2分あたりから集中力を欠き、「tonight」ではタイミングが遅れてしまっています。
5 Ticket to Ride
これが本当の間違いなのか、それともリンゴによる芸術的な選択なのかはわかりません。意図的というにはあまりに微妙なように思えますが、この曲を聴いているドラマーや熱心なリズム奏者なら、節と節の間でドラムのパターンが変わっていることに気づくでしょう。
曲の前半でリンゴのドラム・ビートは巧みなシンコペーションで、1分25秒あたりまでそれを維持しています。後半になるとパターンは、オンビートにわずかにシフトしています。リンゴは、曲の後半で意図的にビートを切り替えたのかどうなのか、それともミスだったのかはわかりません。
6 I’m Looking Through You
さまざまなポイントで、チューニングのずれたギター、クリック音、フィードバック、さらには曲の最終ミックスに残っている雑音が聴こえます。彼らの作品の中でもっともミスが多いと指摘されている作品です。
最初の20秒以内に、バンドのアコースティックギターのフィードバックが聴こえます。最終ミックスのほとんどのミスについて、ジョージ・マーティンは、ミスを隠そうとして最善を尽くしました。しかし、その努力も虚しく、多くのミスがレコードに残ってしまいました。
1:03あたりで、多重録音された手拍子が時間切れになり、一時的に完全に消えます。1:18 の時点で、フィードバックの甲高いキーキーという音がミックスから大きくはっきりと聴こえます。その後すぐに、タンバリンがこの曲のヴァース中に唯一登場します。この曲は、ビートに乗ってはいますが、他のヴァースにこの曲が入っていないということは、リンゴがレコーディング中にタンバリンを落とした可能性があります。
トラック全体を通して、ジョージは、ほとんどチューニングが合っていないギターラインを演奏しています。1:53あたりで、彼のギターの調子がひどく狂い、ピッチを戻そうと彼が楽器と格闘しているのが聴こえます。1:57あたりで、リンゴは、スネアドラムを打ち損ね、散発的に別の場所でスネアドラムを叩きます。曲がフェードアウトすると、ジョージは、チューニングを合わせるために再びギターと格闘し、中央のコーラスのリフを放棄するやいなや急速なフェードを引き起こします。
「I'm Looking Through You」は「Rubber Soul」.のためにレコーディングされた最後の曲の一つでした。ほかの曲と同じようにほとんどのオーバーダブは、最終日にレコーディングされました。おそらく、締切までにアルバムを完成させようと必死に努力していたビートルズが、最も焦り疲れ切っていた時期だったかもしれません。マーティンは、アルバムを1日でミックスし、その結果「I'm Looking Through You」は、バンドがこれまでにリリースした曲の中で最も粗雑なレコーディングの曲として残されました。
7 Hey Jude
3分ごろ、誰かがマイクに向かって「Fucking hell!(クソ!)」と叫んだのが聴こえます。ほとんどの資料では、ジョンがこれを口にしたとされてきました。しかし、ポールが2021年に出版した「The Lyrics: 1956 to the Present」の中で、ピアノのコードを外した後に悪態をついたのは自分だったと回想しています。本人が言ってるから間違いないとは思いますが、なぜこんなに後になってから打ち明けたのかはわかりません。あまり褒められた言葉じゃなかったからですかね。
8 Dig a Pony
この曲のカウントインが始まっても、リンゴは、両方のドラムスティックを用意していなかったので、曲が始まる寸前で止めてしまいます。もし、プロデューサーのフィル・スペクターがかかわっていなければ、この誤ったスタートはおそらくカットされていたでしょう。
2分10秒あたりで、ポールは、「because」のハーモニーの高音に失敗してしまいます。彼は、「フー」と大きな声を出し、ジョンは、少しため息をついてからジョージのギター・ソロに入ります。大きなミスではありませんが、それでもミスには違いありません。
9 The Long and Winding Road
ビートルズ伝説の古典的な議論の一つですが、ジョンが「The Long and Winding Road」のベースパートを意図的に妨害したという説があります。ここは、見解が別れるところです。これについて議論し始めるととても紙幅が足りないので別稿でご紹介します。
(参照文献)ファーアウト
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