★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズのレコードが焼き捨てられた(287)

God Forever, The Beatles Never" - When Lennon Compared the Beatles to Jesus  in 1966 - Flashbak

1 アメリカ南部で火薬庫が爆発した

ジョンのキリスト発言をまずアメリカの雑誌が取り上げ、さらにそれをラジオ局が取り上げました。しかし、この問題は、ユナイテッド・プレス・インターナショナルのバーミンガム事務所のマネージャーであるアル・ベンがいなければ、ここまでで終わっていたかもしれません。彼は、今日の毒舌を売りにするDJの先駆者ともいえる存在でした。彼は、たまたま通勤途中にラジオでチャールズが自分の正義の戦いを放送で発表しているのを聞いたのです。

ベンは、ビートル・ボイコットについての記事を公表しましたが、それは、すぐに60年代の口コミに相当するものとなりました。イギリス人は、ジョンの名言を笑い飛ばすことができましたが、アメリカ南部の想像力に乏しく、活字をうのみにしてしまう忠実な原理主義者のクリスチャンたちは、主であり救世主であるイエスがポップグループと同一視されていると聞いて愕然としました。ディキシーの中心部では、最大のビートルマニアでさえもキリストの味方をしなければなりませんでした。

 

2 バイブル・ベルトが激昂した

Regions of America include Bible Belt and Rust Belt - Business Insider

「この反響は、特にバイブル・ベルト(聖書地帯)では、大きなものだった。南部で彼らは、大騒ぎしていた。」と、アンソロジーシリーズでジョージは回想しています。バイブル・ベルトとは、アメリカの中西部から南東部にかけて複数の州にまたがって広がる地域で、宗派の違いはあってもキリスト教の信仰に非常に熱心な地帯です。上の図の紫色の地帯です。

ニューヨーク州オグデンズバーグからユタ州ソルトレイクシティまで、数十のラジオ局がWAQYに追随してビートルズの音楽の放送を禁止しました。何人かのDJは、生放送でレコードを叩き割るという過激なパフォーマンスをやったほどで、リノのKCBNは、毎時間アンチ・ビートルの演説を放送していました。

それらに負けまいと、この運動の非公式なスポークスマンであるチャールズとレイトンは、リスナーにビートルズのレコードとその付属品を局に送って、工業用の木挽き機で破壊するように促しました。「バーミンガム市議会から借りた『ビートルズ粉砕機』を使って、レコードを粉砕した後に残るのは細かい埃だけだ。」と、デイリー・グレナー紙は書き立てました。「8月19日のコンサートのためにテネシー州メンフィスに到着したイギリスのポップスターには、この埃でいっぱいの箱が贈呈される。」

 

3 ナチス・ドイツのような焚書(ふんしょ)に発展した


John Lennon, The Beatles, and Jesus?

レコードやポスターなどの破壊は、すぐにヒトラー支配下ナチス・ドイツを彷彿とさせる、恐ろしいほどの焚書(ふんしょ。書物を焼き捨てること)にエスカレートしていきました。サウスカロライナ州KKKクー・クラックス・クラン、白人至上主義の団体)のグランド・ドラゴンは、チェスターで行われた「ビートルズ・ボンファイア」でビートルズのアルバム数枚を十字架に釘付けにして燃やし、一方、アラバマ支部のロバート・シェルトンは、ビートルズ共産党に洗脳されていると宣言し、公民権を支持していると批判しました。

オハイオ州クリーブランドのサーモンド・バブス牧師は、ビートルズのコンサートに参加する信徒を破門すると脅し、テキサス州ウェザーフォードのラジオ局KZEEは「彼らの曲を永遠に呪う」と宣言しました。抗議の声は、ローマカトリックにまで及び、ローマ教皇は、バチカンの新聞での声明でジョンの発言を「たとえビートルズの世界であっても、冒涜的に扱われてはならないテーマというものがある。」と非難しました。さらに南アフリカ共和国アパルトヘイトがまだ施行されていた国)やスペイン(フランコ将軍の独裁政権に支配されていた国)も公式に非難声明を出しました。

バチカンはまだしも、南アフリカやスペインの当時の政治体制からすれば、とてもビートルズを非難できる立場ではありませんでしたが、勢いというのは恐ろしいものでそんなものはどうでもよくなっていました。

4 ブライアンは必死にビートルズを守ろうとした

Brian Epstein – Wikipedia tiếng Việt

幸か不幸か、マネージャーのブライアン・エプスタインは、その時にたまたま重度のインフルエンザで体調を崩しており、大騒動のニュースに彼が直接触れることはありませんでした。ビートルズの最新アルバム「リヴォルヴァー」は、その数日後の8月5日にニューシングル「エリナ・リグビー」と同じ日に発売される予定でした。

その売り上げの減少以上に恐ろしいことが待ち構えていました。最悪のタイミングでアメリカツアーが開催される予定であり、ビートルズは、最も過激な反応で燃え盛っている最中の南部に行かなければならず、非常に危険な状況に身を晒さなければならないことになったのです。彼は、NME誌でこの論争を「コップの中の嵐」と片付けようとしましたが、個人的にはフィリピンの時のようにケガをさせられるか、あるいはもっと酷い目に遭わされるのではないかと非常に恐れていました。何しろアメリカは、大統領を暗殺した国ですからね💦

全身に噴き出たじんましんに悩まされながら、インフルエンザでまだ体調が回復していない状態でブライアンはニューヨークに飛び、自分の目でどれだけ危険な状況であるかを確認しました。「彼は、ビートルズが虐待を受ける可能性、つまり、彼らが身の危険に晒される可能性を最も気にしていた。」と、ブライアンの親友でアメリカのビジネス仲間であるナット・ワイスは作家のフィリップ・ノーマンに語っています。

「彼が最初に私に尋ねた質問は、『ツアーを中止するにはいくらかかるか。』というものだった。私は『100万ドルだ。』と応えた。彼は『それなら、自分のポケットマネーで支払うよ。もし、彼らの身に何かあったら、自分を許せなくなるからね。』と言ったんだ。

ブライアンは、自分の体調が万全でないにもかかわらず、なお、ビートルズの身の安全を最優先に考えていたのです。場合によっては、莫大な賠償金を自分のポケットマネーで支払ってでも、ツアーを中止することまで検討していました。彼のビートルズに対する愛と忠誠心は、生涯を通じて変わりませんでした。ビートルズは、本当に良いマネージャーに恵まれましたね。

 

5 モーリーンに責任を転嫁しなかった

De Vijfde Beatle was Maureen Cleave | De Volkskrant

驚くべきことに、ビートルズ側は、ジョンの発言が誤って引用されたとか、オフレコで発言したものだとか主張したりして、引用元の記事を書いたジャーナリストのモーリーン・クリーヴに責任を転嫁しようとはしませんでした。この態度は立派だったと思います。

彼女は、この状況を円満に収めるために最善を尽くし、自発的に自らの見解を公表しました。「ジョンは、キリストとビートルズを比較したわけではない。キリスト教があまりにも弱体化し、ビートルズの方が多くの人に知られているという客観的な事実を指摘しただけだ。」

データブック誌に記事を掲載したアーサー・アンガーでさえ、「レノンには自由に発言する完全な権利があるー他の人が彼に反対する完全な権利があるのと同じようにー」とのコメントを公表しました。「...現代のティーンエイジャーは、多くの大人が評価しているよりもずっと成熟していて、ジョンの発言を読んで、主張しようとしているポイントを見極め、自分たちの立場を自分たちで決めることができる。」と主張しました。

彼らは、冷静にジョンの発言の一部だけを切り取ることなく、もっと客観的に全体を見るべきだと主張してビートルズを擁護しようとしましたが、もはや山全体が火事になっており、消防車のポンプで放水しても火の勢いはとどまるところを知りませんでした。ここまできてしまうと、ビートルズ自身が声明を出さない限り収まらない事態になっていたのです。

6 ビートルズは事態を楽観していた

A Revolution Recalled: When The Beatles came to town | America Magazine

世界中を巻き込んだ大総騒動に発展し、ブライアンがその火消しに躍起になっている一方で、ビートルズは事態を楽観していました。コメントを拒否し、謝罪することも拒否したのは、発言したジョン自身でした。「僕は(そのことを)すっかり忘れていた。」と彼は後に語りました。「それほど大したことではなかったんだ。」

ビートルズは、全員、最初のうちはこの騒動を面白がって傍観していました。ポールは、伝記作家のバリー・マイルズにこう語っています。「僕たちはただ、『大したことじゃないと思っただけだった。ヒステリックで低俗なアメリカ人の考え方だってことがいずれ分かるさ。』と思ったんだ。」と語っています。彼らは、アルバムを燃やすためにはそれを先に購入しなければならないことを素早く指摘しました。「気にしなくていいよ、相棒。燃やせばいい。レコードを聴くことは強制ではない。それでバランスを取った考え方をしたんだ。」

フィリピンで自らの頑なな態度から酷い目に遭わされたブライアンは、今回は事態を重大視してビートルズに謝罪させ、早く事態を収拾すべきだと考えていました。それにもかかわらず、彼らは、なかなかブライアンの説得に応じようとはしませんでした💦 

(参照文献)RollingStone

(続く)

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