- 1 あの名作が再び上演される
- 2 「BACK BEAT」とは?
- 3 「オレたちを育てたのはハンブルクだ」
- 4 ビートルズの生演奏が聴ける
- 5 演技も素晴らしかった
- 6 ビートルズに大きな影響を与えたアストリッド・キルヒャー
1 あの名作が再び上演される
(1)待ちに待った舞台
朗報です。アーリー・ビートルズを描いた舞台「BACK BEAT」が「BACK BEAT 2023」として再び上演されることが公表されました。2019年に上演された舞台を観た時はとても感激して、このブログにレヴューを書きました。それを読んでくださった方も大勢おられました。
何より嬉しかったのは、翻訳・演出を担当された石丸さち子先生が私のブログを読んでくださり、Twitterに感謝のツイートをしていただいたことです。それによると出演者の皆さんも読んでとても喜んでいただいたとのことでした。
今回の主な出演者は次の通りです。
JUON(FUZZY CONTROL) ポール・マッカートニー
上口耕平 ピート・ベスト
愛加あゆ アストリッド・キルヒャー
(2)素晴らしかった前作
レヴューを書いたブログは、ありえないほど多くの皆さんに読んで頂きました。おそらく、出演者のファンの皆さんが読んでくださったのだと思います。ブログを紹介した私のTwitterも、ひっきりなしにいいねの通知が届いて驚きました。
その作品が再び上演されると聞いてとてもうれしいです。もう一度上演されないかなと心待ちにしていました。2020年から新型コロナのパンデミックが起きてしまい、多くの公演が中止になってしまいました。その影響もあってか、この舞台も上演される機会がないまま今日まで至りました。
(3)心待ちにしていた
それだけに、今回の報道を目にした時はとても嬉しかったです。もちろん、前作が素晴らしかったことは言うまでもありません。詳しくは、私の記事をご覧ください。もちろんレヴューなので、ネタバレを含んでいますから注意してご覧ください。
ただ、ビートルズについてあまり詳しくない方は、むしろ先に読んで予習しておいた方が良いかもしれません。それに、ドキュメンタリーなのでネタバレもへったくれもないですし。
https://abbeyroad0310.hatenadiary.jp/entry/2019/06/13/122549
2 「BACK BEAT」とは?
この作品は、イアン・ソフトリー監督により制作され、1994年に公開されたイギリス映画が原作です。それを日本で舞台化したのが前作で、今回の翻訳・演出も前回と同じ石丸さち子さんです。
物語は、1960年にドイツのハンブルクを巡業していた下積み時代のいわゆる「アーリー・ビートルズ」を描いたドキュメンタリーです。彼らは、プロのロックンロール・バンドとしてデビューはしていたものの、まだリヴァプールのローカルバンドの一つに過ぎませんでした。
メジャーデビューしてから解散するまでのビートルズは、洗練されたスーパースターですが、下積み時代の彼らは、荒削りながらも野性味に溢れていてとても魅力があり、それが未だに多くのファンを引き付けるのです。
3 「オレたちを育てたのはハンブルクだ」
(1)世界中の荒くれ者たちが集まった街
何しろロックンローラーといえばヤンチャな若者たちで、酒や女、ケンカなどは日常茶飯事でした。今でいうヤンキーですね。ところが、そんな彼らでもビビってしまうのがハンブルクという街でした。
港町で世界中の船乗りたちが、船から降りて束の間の快楽を求めてクラブに乗り込みました。気性の荒い彼らは、ケンカなど当たり前で、クラブで殴り合いなんてしょっちゅうありました。ビートルズは、宙を飛び交うビール瓶やイスを避けながら演奏していたのです。
(2)メキメキと腕を上げた
下積み時代の彼らは、ほぼ毎日朝から晩まで演奏し、ホテルもなく寝る場所は、凍えるほど寒くて臭い映画館のバックステージという劣悪な環境でした。そんな中で彼らを支えていたのは「絶対に売れてやる!」という上昇志向でした。
クラブにやってくる客たちは、酒と女が目当てで彼らの音楽なんか聴いていません。そんな連中に自分たちのサウンドを聴かせるためには、思いっきり大音量でギターをかき鳴らし、大声で歌い、飛んだり跳ねたりして、彼らの耳目を引き付けなければなりませんでした。
(3)下積み時代の苦労が身を結んだ
クラブには様々な年代の、また様々な国からの船乗りたちが大勢来ていましたから、彼らを喜ばせるためには、レパートリーを増やさなければなりませんでした。ビートルズは、数多くのレコードを聴いて貪欲にレパートリーを増やし、それに合わせてテクニックを上げ、何より客を喜ばせるというパフォーマンスのやり方を体で覚え込んでいったのです。
ビートルズは、ここで培った実力を下地にして世界的なスーパースターとなったのです。ジョンが後に「オレたちを育てたのはリヴァプールじゃない。ハンブルクだ」と語ったのは、このことをとてもよく象徴しています。
4 ビートルズの生演奏が聴ける
(1)舞台で生演奏が聴ける!
この作品の最大の魅力は、何といっても俳優の演技だけではなく、生演奏を楽しめることです!舞台で演者が楽器を演奏することは、演出として必要な時以外はあまりありません。ミュージカルもヴォーカルがほとんどです。
音楽は、音響で流されるか生演奏があったりしますが、それを演者自身が演奏することは少ないのです。しかし、この舞台はビートルズが主役なので、演者自らがビートルズとして、当時、彼らが演奏していた曲を演奏します。これがこの舞台の見どころの一つです。
(2)演奏のクオリティーも問題なし
初めてこの舞台を観ようと思った時、不安がありました。演技はともかく、演奏はどうなんだろうかと。しかも、当時公開された情報によると、ギターを演奏できるのは戸塚さんだけで、他の演者は、楽器の演奏は未経験とのことでした。
これでほんとにビートルズとしてのクオリティーが保てるのかとても不安でした。私も俳優の端くれではありますが、演技ならできるものの、パフォーマンスとしての楽器の演奏は自信がありません。おそらく、ビートルズファンでこの舞台の上演を知った方は同じ思いだったでしょう。
しかし、実際に舞台を観て、私の不安は吹き飛びました。当時のビートルズを彷仏とさせる素晴らしい演奏だったのです。これなら耳の肥えたファンも納得したでしょう。
5 演技も素晴らしかった
(1)生き生きしたビートルたち
もちろん、演奏だけではなく、演技も素晴らしかったです。若き日のエネルギッシュで荒々しくて、絶対に売れてやるという野心に燃えていた彼らの姿が生き生きと描かれていました。私は、1960年のビートルズをリアルタイムで知っているわけではありませんが、当時の彼らはおそらくこうだったんだろうと思わせる演技でした。
彼らは、お互いに励ましあったり傷つけあったりしながら、短い青春を精一杯燃やしていたのです。いつになったら売れるのか全く分からない状況でしたが、どんなに辛い環境でも音楽への情熱はずっと持ち続けていました。
(2)脚本も演出も良かった
ストーリーは、ジョンとスチュアートとの友情、スチュアートとアストリッド・キルヒャーとの恋を軸に展開されますが、無理がなく演出もディテールまで再現されていて、ビートルズをあまり知らない方からコアなファンまで、誰もが満足できる素晴らしい舞台でした。
おそらくですが、石丸さんは、私のブログを参考にビートルズについてかなり研究されていたのではないかと思います。本当にコアなファンしか知らないようなエピソードがいたるところにちりばめられています。
もちろん、ドキュメンタリーとはいえ舞台ですから、事実とは異なる脚色もあります。しかし、決して史実から大きく離れることなく、ストーリーに無理がないよううまく描かれています。その手腕はさすがだと思います。
6 ビートルズに大きな影響を与えたアストリッド・キルヒャー
(1)ビートルズに大きな影響を与えた
そして男ばかりの集団に花を添えたのが、スチュアートの恋人となるドイツ人カメラマンのアストリッド・キルヒャーの存在でした。知的で聡明な彼女は、ビートルズの隠れた才能に気づいてその魅力に取り憑かれ、彼らの母親的存在となって、ハンブルク時代の彼らを支えてくれたのです。
若きビートルたちは、彼女の美しい容姿だけではなく、その知性と芸術性の高さに惹かれました。後に彼らは、その芸術性を高く評価されることになりますが、彼女がそれに大きく貢献したことは間違いないでしょう。
(2)歴史に残るポートレート
そして、彼女は、プロカメラマンとして、ビートルズのポートレートを数多く撮影しました。カメラの前で無表情でポーズを取る彼ら。しかし、その姿こそが、まさに素顔の彼らであり、まるで今にも語りかけてきそうな、飾らない生き生きとした彼らの魅力がそこから浮かび上がってくるのです。彼女の作品は、歴史的価値だけではなく、芸術的価値の点からも高く評価されています。
今回の舞台も出演者は、ほぼ前回と同じです。演出は、多少変わっているかもしれませんが、クオリティーが高い作品であることは間違いないでしょう。私も楽しみにしています。観劇したら、またこのブログでレヴューを皆さんに報告したいと思います。お近くの方は是非劇場へどうぞ。兵庫公演2023年4月28日(金)からスタートです。
公式サイトはこちらです。
https://www.backbeat-stage.com/
(続く)
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